ナスダックとロンドンの行動科学分析スタートアップSybenetix が、買収の合意に至ったと発表した 。買収金額は明かされていないものの、現金による買収となる。

ナスダックは同社のAI(人工知能)を利用したリスク分析技術を自社のリスク・モニタリング部門に取り入れ、セキュリティーのさらなる強化を狙う。

トレーディングの「異常行動」をコンプライアンス・チームに警告

Sybenetixは行動科学者や数学者、技術者、金融の専門家などが、2017年に立ち上げたばかりのRegTech企業だ。RegTechとは規制(Regulation)と技術(Technology)を組み合わせた造語。行動科学に基づいて、トレーディング上の疑わしい行動を検知するサイバーセキュリティー・ソフト「Sybenetix Compass」 を提供している。顧客層は資産管理企業からヘッジファンド、銀行、規制当局まで幅広い。

Sybenetix Compassは従来と異なるパターンを検知すると、コンプライアンス・チームに警告する仕組みだ。

CNBCの報道によるとナスダックのアデーナ・フライドマンCEOは記者会見で、「顧客が直面している問題の解決に役立つ技術や才能への投資は惜しまない」とし、今回の買収がナスダックにもたらす恩恵に自信を見せた。

ますます複雑化する国際規制環境に対応しつつ総合的な調査監視を成功させる上で、「行動科学、コグニティブ・コンピューティング(コンピューターが経験的知識の基づき、自ら学習するシステム)、AI技術の活用が必須となる」と述べている。

RegTech市場が2020年には13兆円に?

金融規制強化に伴い、金融機関にかかるコスト面・労力面での圧力が年々増している。年間コストは推定1000億ドル(約11.2兆円)にものぼるといわれる(Tech Crunch より)。
そこで近年、需要が一気に増したのがRegTechだ。テクノロジーを賢く利用した、規制の管理や対応へのソリューションを提供している。

2015年に500億ドル(約5.6兆円)だったRegTech市場は、20年には1180億ドル(約13.2兆円)に成長すると期待されており、金融革命に欠かせない新たな産業として注目を集めている。

Sybenetixのタラ・チャバンCEOと主任行動科学者のウェンディ・ジェフソン氏は共同声明の中で、「ナスダックのような大手企業の傘下となることで、自社の監視技術を著しく向上させ、バイサイド向けの新たな商品を開発するチャンスを得れる」と、今回の買収に歓迎の意を示した。

革命的な発想を持つスタートアップと金融機関の提携は、FinTechの普及により最早常識となった。

ナスダックはRegTechだけに留まらず、ドイツ取引所傘下のインターナショナル・セキュリティーズ取引所(ISE)や、役員および管理職向けのペーパーレス・コミュニケーション・システムを提供する米国のブロード・ヴァンテージ などを精力的に買収している。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

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