夏休みの思い出として、友人同士や家族連れでテーマパークに出かける計画を立てているという人も多いだろう。長らく東京ディズニーランドとディズニーシーが、東の横綱として不動の人気を誇ってきたテーマパーク業界だが、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が著しい台頭をみせ、その勢力図が大きく変化してきた。ディズニーの牙城を崩しにかかり、西の横綱として名乗りを上げたUSJの勢いを示すポイントはどこにあるのか。定量、定性的に見ていこう。

1. 国内・アジアの人気ランキングはディズニーを抑えトップ

USJ,ディズニー
(写真=jannoon028/Shutterstock.com)

世界最大の旅行サイト・トリップアドバイザーが公表した人気のテーマパークランキング(2017)の結果に大きな衝撃が走った。USJが東京ディズニーランドとディズニーシーを抑えて初めて首位の座をディズニーから奪ったのだ。USJは13年、14年は同ランキングで3位、15年は4位にランキングを落とし、16年は2位まで順位を上げていたが、常にディズニーの厚い壁に阻まれていたが、開業15周年を記念した様々なイベントが話題を呼び、ついにトップに到達した。

さらに、トリップアドバイザーのランキングは、アジアにおけるテーマパークのランキングも発表し、USJは4位にランク入りして、東京ディズニーランド(5位)、東京ディズニーシー(7位)を上回り、日本国内だけでなく、アジアでもその存在感を見せつけた。USJの本拠地となる大阪は、アジア各国から格安航空会社(LCC)を利用した観光客が関西国際空港に降り立ち、観光ルートの一環としてUSJを訪れるなど、人気を押し上げた。

2. 新アトラクションの話題性

一時期、入場者数が落ち込むなど不調に陥っていたUSJに起死回生の勢いをもたらしたのは、2014年度にオープンした「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」といっても過言ではないだろう。

当時のUSJの売上高の半分に相当する約450億円が投じられたが、その効果は投資額を大きく上回るものとなった。17年4月には大ヒット映画「怪盗グルー」に登場するキャラクターを中心としたミニオン・パークが新たに誕生し、人気を集めた。

さらに、2020年の東京オリンピック前のオープンを目指し、ハリー・ポッターを大きく上回る600億円超をかけて新エリア「SUPER NINTENDO WORLD」に着工した。最新鋭の技術を活用した世界初となるライドアトラクションのマリオカートが登場する予定で、すでに話題沸騰だ。

一方の東京ディズニーランドは、18年春に「イッツ・ア・スモールワールド」をリニューアルし、大ヒット映画の「アナと雪の女王」のエルサなど新たなキャラクター約40体が加わる計画。アトラクションの大幅なリニューアルは、オープン以来初めてだが、次々と新しいエリアを拡張して話題づくりに事欠かないUSJと比較すると、インパクトが弱い印象を受けるかもしれない。

3. 幅広いファン層の開拓

根強いディズニーファンに支えられ、リピーターも多い東京ディズニーランドとディズニーシーだが、そのファンは小さい子連れの家族や若い女性など一定層に偏りがちだ。一方のUSJのテーマパーク内を散策すると、老若男女問わず、実に様々な来場者を目にする。さらに、USJは新しいアトラクションやイベントを通して、特定の来場者ターゲットを補強することができる。

例えば、17年の夏は、週刊少年ジャンプとコラボしたイベントで、「ジョジョの奇妙な冒険」など男性に人気のコンテンツを導入することで、ファン層の幅をさらに広げている。

4. 入場料の相場決定への影響力

新たなアトラクションへの投資を続けるUSJにとって避けられないのが入場券の値上げだ。17年4月からは1日券は大人7600円(税込み)とし、8年連続で値上げしている。

入場券の値上げは、来場者数の減少につながる恐れもあるが、強気の姿勢を貫く。一方のディズニーの1日券は大人7400円(同)とUSJと同水準だが、近年の値上げの措置はUSJの後を追う形となっている。人気上昇を受けた勢いをそのまま、躊躇なく値上げにも踏み切るUSJが、ディズニーに代わってテーマパークの入場券の相場を形成する影響力を持ち始めたともいえるだろう。

5. 入場者数の伸び率

入場券の値上げにとって、最も影響を受ける入場者数についてだが、2016年度USJの入場者数は前年度比5.0%増加の1460万人と3年連続で過去最高の更新となった。一方、ディズニーランドとディズニーシーを合わせた同年度の入場者数は、前年度比0.6%の落ち込み、2年連続の減少となった。しかし、入場者数に目を向けると3000万人とUSJの倍以上の実績を残している。また収入高に関しても、帝国データバンクの集計によると、16年度の東京ディズニーリゾートが3962億6200万円と、USJの1500億円(推計)を大きく引き離している。

テーマパーク業界において、長らく強い影響力を誇ってきたディズニーに代わり、USJが虎視眈々とその座の奪取に向けて着実に歩みを進めている。業界の勢力図を大きく変えつつあるUSJに対し、ディズニーが意地を見せることができるか。(ZUU online 編集部)