今年の2月、米カジノ運営大手ラスベガス・サンズのアデルソンCEOは、日本のカジノ市場への参入の意向を表明しました。カジノ推進法案が国会を通過すれば、日本はマカオに続いて世界第2位の市場になると見込まれています。実際の収益の試算としては、格付け情報を提供するフィッチ・レーティングスが、2013年のマカオのギャンブル収入が450億ドルだったのに対し、日本市場は少なくとも70億ドル程度の収益が見込めるとしています。カジノビジネスを成功させるためには巨額な先行投資が必要とされますが、ラスベガス・サンズのアデルソンCEOは、日本に対し100億ドル(約1兆円)の巨額投資を行うと発表しています。果たして圧倒的な資金力で日本進出を計画するラスベガス・サンズの実力と見通しはどうなのか、今回は詳しくお届けしてみたいと思います。
カジノ参入の選考基準とは?
カジノビジネスへの参入はライセンス制になっていて、厳しい資格検査が課せられます。過去の実績や、企画力はもちろん最も重要なポイントとなるのが財務力です。カジノとは、日本における単なる賭博場でなく、コンサートなどのエンターティメント性、企業イベントや見本市も開催できる総合的リゾートになることが期待されています。過去に大規模な開発実績があり、莫大な資金調達ができる実力のある企業が参入時には有利になります。カジノリゾートの建設に税金は投入されませんので、数十億ドルに上るとみられる開発費を、参入しようとする企業は用意する必要があります。
ラスベガス・サンズの圧倒的な財務力
それではカジノ各社の財務力を色々な角度から分析してみたいと思います。営業マージンでは、シーザーズ、ラスベガス・サンズ、MGM、メルコ・クラウン、ウインのカジノ各社を比較すると、ラスベガス・サンズの営業マージンは36%と上場企業中最も高い数字となっています。上記であげた各社の純利益の推移をみても、ラスベガス・サンズは郡を抜いて安定しています。また、自己資本に対する負債比率(2013年)ですが、シーザーズ102%、ラスベガス・サンズ59%、MGM76%、メルコ・クラウン39%、ウイン98%となっています。シーザーズとMGMは借金の利息が利益を上回ってしまっています。ウインは借金の利息の3倍の利益をだしています。ラスベガス・サンズは利息の8倍の利益をだしています。
こうして比較してみると、ラスベガス・サンズの圧倒的な財務力がデータからも浮き彫りになってきます。巨額の負債と赤字に苦しむシーザーズやMGMなどは、資金調達力の面からかなりマイナスとなり、候補に残ることはないとみられます。そしてラスベガス・サンズはシンガポールとマカオで旗艦プロジェクトを引き受けてた実績があります。日本からみてラスベガス・サンズは、実績・資金力共に最もリスクの少ない企業といえるでしょう。