相続が発生した後、家族で遺産の取り分で揉めたなどと聞く事はありませんか。「平成24年度司法統計」(最高裁判所)によると、実は、ここ10年で家庭裁判所への遺産分割の新受件数(審判+調停)は1.25倍に増えています。過去20年見ても1.54倍と緩やかに上昇傾向を続けています。家族間で相続について折り合いがつかず、裁判所での審判になるのは故人も望んでいないはずです。

そこで、「争族」にならないために、どのように財産を分けるのかを確認しておきましょう。

遺産の分け方は3通り

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(写真=Victoria 1/Shutterstock.com)

相続人が複数人いる場合、被相続人の財産は、一旦相続人全員の共有財産になります。この共有状態の財産を各相続人に配分させることを遺産分割といいます。

相続で特に困るのは不動産等です。預貯金や有価証券は分けることができますが、不動産は土地と家屋などは、なかなか分けることが出来ません。そのため、今からお伝えする遺産分割の方法を知り、スムーズな分割ができないのかを考えてみてください。

被相続人が不動産2億円、預貯金5,000万円、有価証券5,000万円の合計3億円の資産を保有していたとします。相続人は配偶者Aさん、子どもBさん、Cさんとしてイメージしてみましょう。Aさんの法定相続分は1億5,000万円、BさんとCさんはそれぞれ7,500万円になります。

● 現物分割
現物分割は、相続財産現物を分割する方法です。不動産を配偶者のAさん、預貯金を子どもBさん、有価証券を子どもCさんが相続すると決めれば、相続が速く進むメリットがありますが、一方で相続資産額に不平等が生じる場合があります。
今回のように不動産価値が他の資産を遥かに上回っていて、法定相続分以上の取り分になってしまう場合は不動産を共同名義にするなど工夫が必要になってきます。

● 代償分割
代襲相続は、相続価値の高い資産を相続した相続人が残りの相続人に対して金銭の支払いを行い、相続資産を平等にすることを言います。Aさんが不動産を相続し、預貯金と有価証券をBさんとCさんで分ける場合、Aさんの相続分が法定相続分よりも5,000万円多いので、BさんとCさんにそれぞれ2,500万円支払い、相続資産額を公平にすることになります。
この場合、代償金を支払う相続人にそれだけの資力がなければなりません。

● 換価分割
換価分割は、不動産や有価証券等を全て売却し、現金で分ける方法を指します。不動産や有価証券の売却には手数料が発生します。また、売却した結果利益になっていれば当然譲渡益税を支払う必要もあります。どうしても相続資産をお金で分けたい場合などは換価分割を使うのも良いかもしれません。

遺産分割協議は相続人全員で行うのが大原則

遺言がない場合は相続人同士での話し合いにより具体的な配分を決めることになります。このことを「分割協議」といいます。分割協議は相続人全員で行うことが大原則になります。一部の相続人なしで遺産分割協議が行われると無効になることもあります。

ただし、遺言があってもその内容に必ず従わねばならない訳ではありません。遺産分割審判より優先されるものですが、相続人全員の協議により遺言と異なる合意が成立した場合には、分割協議が優先されることになります。

なお民法上の法定相続分は遺産分割の基準の一つではありますが、遺産分割においては「遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況、その他一切の事情を考慮してこれをする」という民法の定めがあり、法定相続分ありきという訳ではありません。ただし、借入金などマイナスの相続財産に関しては法定相続分に応じて分割されます。

協議が上手く整わず、分割に対して相続人全員の合意が得られない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停の申し立てを行います。家庭裁判所において調停委員が当事者に加わって協議を行い、分割合意を目指す方法です。それでも調停が不成立になった場合には自動的に審判手続きが開始され、裁判官による審判があり、結論が出されます。

日頃から家族で話し合いをすること

遺産の分け方や取り分について、各相続人が権利の主張を行うことはよくあることです。協議が成立せず家庭裁判所に調停や審判を求めることになると、余計な時間や労力が必要です。相続を穏便に進めるためには、スムーズな遺産分割協議にほかなりません。日頃から家族間で財産の確認や話し合いをしておくなど、遺産分割トラブルを避ける対策をしておきましょう。(提供: プライベートFPオンライン