特集「財務諸表」の読み方 特集「保険」 広告特集「M&A/事業承継」 特集「本を読む。」 DC特集
投資を始める
Written by 大原 啓一 2記事

“ロボアド”サービスの挑戦(2)

ロボアドサービスに対する「誤解」 個人投資家に本当に必要なサービス内容とは?

最先端の金融技術や情報技術(IT)を活用し、利用者に合わせてカスタマイズした資産運用サービスを低コストで提供する「ロボアドバイザーサービス」。それによって、個人の資産運用は実際にどのように変わるのだろうか。

AIを使っているわけではない

ロボアドサービス
(写真=PIXTA)

ただロボアドバイザーに対しては誤解もある。よくあるのは、「人工知能(AI)が運用しているため、カスタマイズされた投資運用が可能であり、人間に任せるよりも高いリターンが期待できる」というものだ。しかし、残念ながら一般にイメージされているようなAIを投資運用に活用しているロボアドバイザーサービスは存在しない。

技術のイノベーションが使われているのは、投資運用そのものではなく、資産計画策定や投資運用戦略選定などのコンサルティングやアフターフォローといった利用者とのコミュニケーションだ。つまり、個人の利用者に対するアドバイスを「ロボ」化し、カスタマイズや効率化・高度化を可能にするところに、ロボアドバイザーの付加価値がある。

「ロボ」化すべきは投資運用のところではない

例えば、投資運用部分のカスタマイズについては、何百もの投資運用ポートフォリオから利用者一人ひとりに最適なものを提供するという謳い文句のサービスをまれに目にするが、金融理論的な観点から奇妙に感じる。あるリスク水準に最適な投資運用ポートフォリオは基本的には期待リターンが最も高くなるようなものひとつであり、一般的な個人の必要とする流動性や負債状況等の制約条件がある程度類型化されることを前提とすると、個人向けに適切な範囲のリスク水準の投資運用ポートフォリオが何百も存在することは考えにくいからである。つまり、投資運用そのものに「ロボ」を用いてカスタマイズすることで利用者が得られる効用はあまり大きくない。

また、資産運用の世界では、過去20年ほどでクオンツとよばれる金融数理技術を利用した投資運用手法がかなり発達し、投資運用部分の高度化や効率化は行き着くところまで行き着いてしまった感がある。数兆円規模の機関投資家の資産運用であっても、少人数のチームで対応できるようになっており、この部分を「ロボ」化したとしても利用者に追加的にもたらされる効用は限られている。

年金基金や金融法人等のいわゆる機関投資家向けサービスであっても、個人向けサービスであっても、運用の部分についてはすでに同じぐらい高水準のサービスが提供可能な状況にあり、ロボアドバイザーが高度化や効率化のために活躍する余地はあまりない。単に高水準の投資運用のみを利用したいのであれば、ロボアドバイザーサービスよりも低コストのバランス型投信などに投資すれば良い。

個人投資家に必要なのは「カスタマイズ」されたコンサルティング

個人の利用者がロボアドバイザーサービスに期待できるのは、一人ひとりの目標や状況に応じた資産計画をコンサルティングに基づいて策定し、実際に投資運用が始まってから計画が順調にいっているかどうか、調整が必要なのであればどうするべきかというアフターフォローを受けるというコミュニケーションの部分をカスタマイズすることだ。

カスタマイズされたコンサルティングやアフターフォローは、機関投資家向けサービスでは、当然のように行われているものである。しかしながら、個人向けサービスでは、提供費用などコスト的な課題が大きく、ごく一部の富裕層に対してしか提供されない。一般の個人顧客は、出来合いの資産運用商品を提供されている。このため、銀行などの金融機関は顧客の目標や状況を特段考慮することなく、販売しやすい商品を販売する。運用会社は、販売金融機関が販売しやすい商品を開発する。そういう構造的な歪みが生じている。

ロボアドバイザーサービスは、顧客とのコミュニケーションを一人ひとりにあわせてカスタマイズすることにより、顧客が本当に必要とする資産運用サービスを提供することを可能とするものだ。言葉を換えれば、構造的な歪みを克服し得るサービスということができる。

もちろん、わが国のロボアドバイザーサービスはまだ誕生したばかり。残念ながら、単なる投資運用ポートフォリオ提供ツールに毛が生えたようなものも少なくない。投資運用の技術がこれまで飛躍的に進歩してきたように、ロボアドバイザーサービスがファイナンシャルプランナー的なコミュニケーションをこれからどこまで発展させていくか。それが個人の資産運用サービスに、ロボアドバイザーサービスが本当に根付くための大きな挑戦だ。

大原 啓一(おおはらけいいち)
マネックス・セゾン・バンガード投資顧問代表取締役社長。2003年東京大学法学部卒業。2010年ロンドンビジネススクール金融学修士課程修了。野村資本市場研究所等を経て、2004年7月に興銀第一ライフ・アセットマネジメント(現アセットマネジメントOne)に入社。2007年8月から同社ロンドンオフィスで日本及びEMEA(欧州・中東・アフリカ)の個人・機関投資家向け商品開発・営業業務を担当。「資産運用のあたりまえをあたりまえに」を実現するべく、2015年8月に当社を立ち上げ、同社取締役副社長、2016年1月より現職。

【編集部のオススメ記事】
「個人の財務諸表」の考え方!プロから学ぶ改善術とは?(PR)
「メルカリ上場」と日経が報道、時価総額1000億円超のユニコーン企業
スキンケアが武器に!?ビジネスにおいての5つのメリット(PR)
100万円で79万円儲かる?「究極の」資産運用術とは
株初心者はどこで口座開設してる?ネット証券ランキング(PR)

ロボアドサービスに対する「誤解」 個人投資家に本当に必要なサービス内容とは?
ZUU online の最新記事を
毎日お届けします
PREV 投資ビギナーがつい買ってしまいがちな「暴騰株」の怖い話
NEXT FXで毎年数千万円稼ぐサラリーマントレーダーたちが重視して...