世界経済4-6月期は前年同期比+5.8% -予想上回る成長で4期連続の景気回復
【マレーシアGDP】
2017年4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比5.8%増(*1)と前期の同5.6%増から上昇したほか、Bloomberg調査の市場予想(同5.4%増)を上回った。
需要項目別に見ると、堅調な民間消費の拡大が成長率上昇に繋がったことが分かる(図表1)。
GDPの5割強を占める民間消費は前年同期比7.1%増(前期:同6.6%増)となり、食料・飲料や情報通信、ホテル・レストランを中心に2期連続で上昇した。
政府消費は前年同期比3.3%増(前期:同7.5%増)と、公務員給与や物品・サービスの購入費を中心に低めの伸びに止まった。
総固定資本形成は同4.1%増と、前期の同10.0%増から低下した。建設投資が同5.1%増(前期:同3.8%増)と小幅に上昇した一方、前期に急伸した設備投資が同4.4%増(前期:同21.8%増)と鈍化したほか、その他投資が同3.7%減(同1.4%増)とマイナスに転じた。なお、投資を公共部門と民間部門に分けて見ると、全体の8割弱を占める民間部門が同7.4%増(前期:同12.9%増)と高めの伸びを続けたものの、公共部門は同5.0%減(前期:同3.2%増)と2期ぶりのマイナスとなった。
輸出は同9.6%増(前期:同9.8%増)と、財輸出の二桁増とサービス輸出の回復で好調を維持した。また輸入が同10.7%増(前期:同12.9%増)と二桁増となった結果、純輸出の成長への寄与度は+0.1%ポイントとなり、前期の▲1.2%ポイントから増加した。
マレーシア経済は昨年半ばから回復基調が続いている。前期に急上昇した設備投資が鈍化して4-6月期の成長率は低下すると予想していたが、民間消費を中心とする内需の拡大に輸出の好調が加わって成長率は上昇した。
4-6月期の景気回復の主因となった民間消費は、低所得者向けの現金給付策(BR1M)や国内燃料価格の値上げ一巡によるインフレ圧力の後退、製造業とサービス業を中心とする雇用・所得環境の改善、そしてハリラヤ・プアサ(断食明け大祭)が昨年の7月から今年は6月に早まったこと(季節要因)といった複数の要因が消費需要を押し上げたと考えられる。また輸出は長期休暇に伴う営業日数の減少にもかからず、主要輸出品の半導体やパーム油、ゴム製品を中心に好調を維持している(図表3)。このように外需に続いて内需も拡大するなか、ここ数年で低迷していた消費者信頼感や企業景況感は足元で持ち直してきている(図表4)。
マレーシア経済は輸出主導の景気回復の動きが見られるが、先行きは世界的なIT需要が一巡して年末にかけて輸出が鈍化するだろう。またBR1Mの支出は今年8月で最後(3度目)となる。今後の消費の下支えがなくなるなかで内需の拡大ペースは緩やかなものとなりそうだ。
このように先行きは景気回復のペースダウンが見込まれるなか、次期総選挙の実施時期が一層見通し難くなっている。これまで景気の回復傾向が遅れていたことから次期総選挙は来年(任期満了に伴う選挙の場合は18年8月)に実施される可能性が高いと見られたが、今回4-6月期のGDPが市場予想とは反対に上昇したことは年内の前倒し実施の可能性を高めたとも考えられる。年内の総選挙は実施されないと踏む野党連合の意表を突く形で、ナジブ首相が解散総選挙に打って出るか、政治動向から目が離せない。
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斉藤誠(さいとう まこと)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部
研究員
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