東京株式市場の動きが冴えません。6月以降8月半ば頃まで、日経平均株価は2万円を挟んだボックス相場となっていましたが、8/18(金)以降は19,500円を下回り、やや下放れた形になっています。北朝鮮をめぐる地政学的リスクの高まりや、トランプ政権に対する不透明感などがマイナス要因になっているようです。

こうした中、8/28(月)には8月末に配当や株主優待の権利が確定する銘柄の「権利付最終日」を迎えます。8/29(火)以降、配当や株主優待に関する市場の関心は、9月に権利が確定する銘柄を中心に集まると考えられます。配当や株主優待の権利を確保して中・長期スタンスでの投資を心がける投資家にとり、株価の低迷は投資チャンスになるかもしれません。

そこで今回の「日本株投資戦略」では、9月に株主優待の権利が確定する銘柄についてレポートすることにしました。投資家はどのような銘柄の、どのような株主優待に強い関心を持っているのでしょうか。

株主優待銘柄を自分で調べるには?

株式投資で収益をあげる手段は値上がり益を得ることだけではありません。配当金を受け取ることも収益確保の重要な手段のひとつです。東証一部上場銘柄の予想配当利回りは単純平均で1.67%(8/23現在)と計算されていますが、なかには3~4%の利回りを期待できる銘柄も少なからず存在します。

さらに最近は株主優待も注目されています。株主優待で得られる商品やサービスも、投資家にとっては収益の一部であると考えられます。また、株主優待で受け取ることができる商品やサービスは、その企業が事業として販売・提供している商品やサービスであることも多く、その会社のことを知るよい機会になったりもします。その内容も多種多様であり、株主優待の制度を活用することで、株主ライフをより豊かなものにすることも可能だと思われます。

9月に権利が確定する銘柄にはどのようなものがあり、どのような株主優待が提供されるのでしょうか。それを調べるには、SBI証券の株主優待検索機能が便利だと思います。当社サイトにログイン後、「国内株式」のページに移り、銘柄検索窓の下にある「株主優待」という部分をクリックしてみてください。そうすれば「株主優待検索」というページが現れてくるはずです。そのページの左サイドには、「優待内容」、「優待権利確定月」などの項目がありますので、そこで条件を指定して頂けば、株主優待銘柄の様々な情報を入手することができます。

今回は9月に権利が確定する銘柄について調べたいので「優待権利確定月」の「9月」の所を指定してください。赤く色が付けば指定されたことになります。カッコ内に「407」という数字がありますが、これは9月に権利が確定する銘柄が407銘柄存在することを示しています。その状態で例えば「優待内容」の「金券」という所を指定してください。銘柄数は「162」に変わります。条件を指定する右側には、9月に権利が確定し、「金券」を株主優待として提供する企業が表示されてくるはずです。

なお、銘柄表示部分の上部に「並べ替え」とあり、その右に「銘柄コード順」、「権利確定月順」、「獲得最低金額順」、「閲覧回数順」というボタンがあります。そのうち、「閲覧回数順」を押し、表示が「閲覧回数順▼」に変われば、対象銘柄について投資家の閲覧回数が多かった順番に並べ替えらたことになります。閲覧回数の多い銘柄は、投資家の多くが何らかの理由で閲覧している銘柄であると考えられます。もっとも、9月株主優待の権利が確定する9/26(火)(ただし他の日の銘柄もあるかもしれないので注意)まではまだ日にちもあるので、順位が変化する可能性もありますので、暫定的な順位と考えるのが良さそうです。

投資家に人気の「9月株主優待銘柄」はコレ!?

9月に権利が確定する銘柄にはどのようなものがあり、どのような株主優待が提供されるのでしょうか。前項では、それをご自身で調べる時に活用していただきたい便利なSBI証券の株主優待検索機能についてご紹介しました。

ちなみに、SBI証券では2017/8/2(水)~2017/8/14(月)に、株主優待についてアンケートを実施させていただきました。ご回答をお寄せいただいた方は誠にありがとうございました。アンケート(回答者9,664人)の中には「どのような優待品に興味がありますか?」という質問があり、その結果第5位(重複回答あり)までは以下の通りになっています。

(1)金券(クオカード、買いもの券等) 6,719
(2)食料・飲食類(米、缶ビール等) 6,423
(3)交通・旅行(施設割引・電車・バス乗車券等) 2,715
(4)日用品・家電 2,299
(5)趣味・娯楽(無料入場券、ゲーム利用券等) 1,916

そこで、上記の5項目に一致する「優待内容」をもつ「9月株主優待銘柄」について、それぞれの「優待内容」ごとに閲覧回数順の上位銘柄は何かを調べてみました。それらは9月株主優待銘柄の中で、投資家の人気が高い銘柄に近い存在であると考えられます。以下、表1~表5(当社株主優待検索機能、会社公表データ等を用いてSBI証券が作成)でご紹介します。

なお、これらの表に記載されている「予想配当利回り」は、年間に予定されているすべての配当を受け取った場合の配当利回りで、会社の配当政策や株価によって変動する可能性があります。また、「最低投資単位での株主優待内容(9月)」は、最低投資単位で株主優待の権利を獲得した場合に受け取ることができる株主優待の概要を示すもので、優待のすべての内容を表示しきれていないこともあります。詳細は当該企業のWEBページをご確認ください。

「優待内容」について「金券」に分類されている銘柄(閲覧数上位5社)

表1:「優待内容」について「金券」に分類されている銘柄(閲覧数上位5社)

コード / 銘柄名 / 株価(8/25) / 予想配当利回り / 最低投資単位での株主優待内容(9月)
<1726> / ビーアールホールディングス / 398 / 1.26% / オリジナルクオカード500円相当
<2196> / エスクリ / 775 / 1.55% / 自社経営レストラン割引券(30%割引)30万円相当のウェディングアイテムチケット
<3245> / ディア・ライフ / 455 / 3.30% / 1,000円相当のクオカード
<9831> / ヤマダ電機 / 584 / 3.08% / 優待割引券(500円)×4枚
<6848> / 東亜ディーケーケー / 668 / 1.95% / クオカード500円相当

アンケートでもっとも回答数の多かったのが「金券」です。当社の株主優待検索に登録されている1,383銘柄の優待実施企業のうち、582社の「優待内容」が「金券」となっています。クオカードなどの「金券」は全国の多くの小売・外食店でも使えるため、投資家にとっては利便性が非常に高いとみられます。

「金券」を重視する投資家であれば、その銘柄の予想配当利回りにも注意を払うべきでしょう。配当と株主優待を合わせ、株式投資の総合的な収益を上げることが可能になります。なお、表1~表5の「予想配当利回り」は会社予想一株配当を基準にしています。

「優待内容」について「食料・飲食」に分類されている銘柄(閲覧数上位5社)

表2:「優待内容」について「食料・飲食」に分類されている銘柄(閲覧数上位5社)

取引 / チャート / コード / 銘柄名 / 株価(8/25) / 予想配当利回り / 最低投資単位での株主優待内容(9月)
<2196> / エスクリ / 775 / 1.55% / 表1をご覧ください
<7550> / ゼンショーホールディングス / 2,077 / 0.87% / 優待券(500円)×2枚
<9980> / マルコ / 392 / 0.26% / 自社商品割引券(20%割引)RIZAPグループ商品2,000円相当
<7421> / カッパ・クリエイト / 1,253 / 0.00% / 株主優待カードのポイント付与(3,000ポイント)
<3167> / TOKAIホールディングス / 842 / 3.33% / ①天然水(500ミリリットル入り)12本または天然水宅配サービス(12リットル入り)1本またはクオカード(500円相当)または自社グループ食事券1,000円分または自社グループ会員サービス1,000ポイント付与、②自社グループ結婚式婚礼10%割引券、③自社グループ食事20%割引券12枚

アンケートで「金券」の次に回答数の多かったのが「食料・飲食類」です。当社の株主優待検索ペーシの「優待内容」では「食料・飲食」が近い存在です。当社の株主優待検索に登録されている1,383銘柄の優待実施企業のうち、444社の「優待内容」が「食料・飲食」となっています。

外食や小売店では、自社商品を割引価格で提供する株主優待が多くなっていますが、株主にとってはその会社のことを知れるチャンスを提供されることにもあり、「金券」にはない魅力であると考えられます。なお、TOKAIホールディングス <3167> の株主優待の中にはサービス加入等が前提条件のものもありますのでご注意ください。

「優待内容」について「交通・旅行」に分類されている銘柄(閲覧数上位3社)

表3:「優待内容」について「交通・旅行」に分類されている銘柄(閲覧数上位3社)

コード / 銘柄名 / 株価(8/25) / 予想配当利回り / 最低投資単位での株主優待内容(9月)
<9202> / ANAホールディングス / 404.2 / 1.48% / 株主優待番号ご案内書1枚
自社グループ優待券1冊
<9201> / 日本航空 / 3,768 / 2.55% / ※9月は200株以上必要
<3232> / 三重グループホールディングス / 447 / 1.79% / 「東急ハンズ」買物割引カード(5%割引)1枚 バス片道乗車券2枚リフォーム工事優待割引券(見積価格3%割引)

※ANA <9202> の最低売買単位は現在1,000株となっていますが、10月以降は株式併合により100株単位になる予定です。

航空会社や鉄道会社の株主優待は非常に古典的な存在と言えるかもしれません。その多くは、自社交通サービスを有利な価格で提供する内容が多くなっています。なお、上記の3社の株主優待についてはいくつか留意点がありますのでご注意ください。

(1)ANA <9202> では、「株主優待割引運賃」の利用方法が優待券を回収させていただく方法から株主優待番号をご登録いただく方法に変更されました。また、自社グループ優待券1冊は6つの優待券から構成されていますので、詳細は会社WEBページでの確認が必要です。
(2)JAL <9201> の株主優待の権利を最低投資単位(100株)で受け取れるのは3月だけです。ご参考までに9月末に200株以上保有している投資家には株主割引券が1枚配布されます。
(3)三重グループホールディングス <3232> の買物割引カードには、使用できる店舗に制限があります。

「優待内容」について「日用品・家電」に分類されている銘柄(閲覧数上位3社)

表4:「優待内容」について「日用品・家電」に分類されている銘柄(閲覧数上位3社)

コード / 銘柄名 / 株価(8/25) / 予想配当利回り / 最低投資単位での株主優待内容(9月
<9831> / ヤマダ電機 / 584 / 3.08% / 表1をご覧ください
<8005> / スクロール / 377 / 2.67% / 株主優待券(500円相当)
<6750> / エレコム / 2,265 / 1.99% / 1,000円相当のクオカード

「優待内容」について「趣味・娯楽」に分類されている銘柄(閲覧数上位35社)

表5:「優待内容」について「趣味・娯楽」に分類されている銘柄(閲覧数上位35社)

取引 / チャート / コード / 銘柄名 / 株価(8/25) / 予想配当利回り / 最低投資単位での株主優待内容(9月)
<2340> / 極楽湯ホールディングス / 797.0 / 0.75% / ※継続保有の前提条件あり
<8591> / オリックス / 1,752 / - / 株主カード
<2681> / ゲオホールディングス / 1,466 / 2.32% / レンタル料金割引優待(50%割引)または2,000円相当のリユース割引券

株主優待は、それを実施する企業にとり、自社商品・サービスのことを投資家に知ってもらい、長期保有してくれる株主をつくることも重要な目的になっています。このため、株主優待の権利獲得に、継続保有期間等で条件を付けているケースもあります。極楽湯ホールディングス <2340> は100株保有で無料入浴券4枚が配布される優待内容となっていますが、継続保有が前提条件になっています。

なお、今回ご紹介した「9月株主優待銘柄」は9/26(火)が権利付最終日になっており、その日に保有していない場合は、株主優待の権利を受け取ることができません。なお、「9月株主優待銘柄」でも、9/26(火)が権利付最終日でない銘柄もある可能性がありますのでご注意ください。

※表5でオリックスの配当利回りは会社側が18/3期・下期の予想一株配当を公表していないために未表示となっています。ただし、同上期は27.0円の予想です。仮に下期も同額の配当予想になった場合、予想配当利回りは3.08%(あくまでも参考値)と計算されます。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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