足元の相場環境
日経平均は冴えない推移が続いている。7月17日の週から先週まで週間ベースで実に6週続落である。日経平均が6週続落となったのは2014年1月から2月にかけて以来約3年半ぶりだ。2014年は6週間で日経平均が2,000円近く(約12%)下落したのに対し、今回は700円弱(約3%強)の下げで下落率としては遥かに小さいものの、マーケットの買い意欲は決して強くない状況である。
マーケットが弱い要因としては、(1)北朝鮮リスク(2)トランプ政権の収まらないドタバタ(3)米国の金融政策の不透明感(4)これらが組み合わさっての円高進行、が主因だろう。そして日経平均の下落を主導しているのは外国人投資家の売りだと考えられる。グラフ1は2017年に入ってからの外国人投資家の現物・先物それぞれの買い越し売り越し状況を示している。発表されている8月14日の週まで外国人投資家は5週連続で売り越しである。
現在の日本株をバリュエーション面から捉えるとどのような状況だろうか。代表的な株価指標である予想PERを見ると概ね割安水準であると言える。グラフ2で示した日経平均と予想PERの関係を見ると、アベノミクス相場が本格的に始まった2013年以降、原油価格の暴落やBREXITなど突発的な急落の際には予想PER13倍またはそれを割り込む水準まで下落する局面もあったが、そうした例外を除けば日経平均は予想PER14倍程度でサポートされることが多かった。足元では予想PERが13.8倍まで低下している。
もちろん株価は1株当たり純利益(EPS)×PERで計算されるので、予想EPSが減少してしまった場合には同じPERだとしても株価は下落することになる。では企業業績はどのように推移しているのか。4-6月期の企業業績は好調だった。日経新聞の集計によれば、7割近い企業が前年同期比で最終増益を確保した。そして今後についても労働市場を中心に経済が底堅い米国、好調な経済受けついに量的金融緩和の終了に動き出しつつある欧州、経済指標が底打ちした感のある中国、そして4-6月期のGDP成長率が年換算4.0%だった日本と内外とも経済は概ね好調だ。これ以上の円高が進まなければという条件付きにはなるが企業業績面への不安は少ないと考えられる。
上記のように企業業績面またバリュエーションから判断すると、足元の日経平均の水準は打診買いを行うのに適した水準ではないだろうか。ではどのような銘柄が投資候補となるか。本日の銘柄フォーカスでは「好業績の出遅れ銘柄」というテーマで銘柄をピックアップしてみた。
好業績の出遅れ銘柄は
「出遅れ」と「好業績」について以下の定義でスクリーニングした。
・東証1部・東証2部・東証マザーズ上場銘柄
・金融除く
・2017年8月25日の株価と2014年末・2015年末・2016年末の株価を比べて、いずれの期間のリターンも日経平均の同期間のリターンを下回っている銘柄
・直近3期の通期業績がいずれも増収・営業増益
・今期の通期の業績予想も増収・営業増益見込み
上記で紹介した日経平均の各時点の値、および各年末と比べた際のリターンは以下の通りである。
2017年8月25日: 19,452円
2014年末: 17,450円 +11.5%
2015年末: 19,033円 +2.2%
2016年末: 19,114円 +1.8%
つまり、2014年末と比べた株価上昇率が11.5%未満で、2015年末と比べた株価上昇率が2.2%未満で、2016年末と比べた株価上昇率が1.8%未満の銘柄をスクリーニングした、ということである。
上記の「出遅れ」+「好業績」条件でスクリーニングするとカカクコム <2371> 、ぐるなび <2440> 、エービーシー・マート <2670> 、ユニゾホールディングス <3258> 、ソースネクスト <4344> 、ドンキホーテホールディングス <7532> 、三井不動産 <8801> の7銘柄が残った。
残った銘柄リストを見て意外に思った方も多いのではないだろうか。各銘柄は身近で知名度が高く、成長性にも優れているというイメージの銘柄が多く、実際業績はしっかりと成長しているのである。にも関わらず株価は市場の平均を下回っている。おそらくこれらの銘柄は元々市場の期待が高く、その期待に見合うほどには成長を遂げてこられなかった、ということなのだろう。
ただ表に示したようにドンキホーテホールディングスを除いた6銘柄の予想PERは10倍台まで低下しており、うち4銘柄は予想配当利回りが2%を上回っているなど株価に大きな割高感はない。最後に各銘柄の過去5年間の業績、株価と予想PERの推移を示す。ぜひ参考にしていただきたい。
益嶋 裕
マネックス証券
フィナンシャル・インテリジェンス部マネージャー
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