結果の概要:住宅着工、許可件数は前月対比でまちまち、いずれも市場予想は上回る

9月19日、米国センサス局は8月の住宅着工、許可件数を発表した。住宅着工件数(季節調整済、年率)は118.0万件(前月改定値:119.0万件)と、115.5万件から3.5万件上方修正された前月改定値からは減少、市場予想の117.4万件(Bloomberg集計の中央値、以下同様)は上回った(図表1、図表3)。

一方、住宅着工許可件数(季節調整済、年率)は、130.0万件(前月改定値:123.0万件)と、122.3万件から上方修正された前月や、市場予想(122.0万件)を上回った(図表2、図表5)。

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結果の評価:住宅着工許可件数は大幅に改善も、懸念されるハリケーンの影響

住宅着工件数の伸びは、前月比▲0.8%(前月:▲2.2%)と2ヵ月連続のマイナスとなった(図表3)。戸建てが+1.6%(前月:▲2.2%)とプラスに転じたものの、集合住宅が▲6.5%(前月:▲2.2%)と、2ヵ月連続でマイナスとなり、全体を押下げた。一方、前年同月比は全体が+1.4%(前月:▲2.7%)とこちらはプラスに転じた。こちらも戸建てが+17.1%(前月:+8.6%)と、16年9月以降の増加基調が持続する一方、集合住宅が▲24.7%(前月:▲22.0%)と6ヵ月連続の減少となっており、集合住宅の回復の遅れが顕著となっている。

地域別寄与度(前月比)は、中西部が+3.0%ポイント(前月:▲3.1%ポイント)、西部が+1.0%ポイント(前月:▲2.3%ポイント)と前月からプラスに転じた一方、南部が▲4.0%ポイント(前月:+6.7%ポイント)と前月からマイナスに転じたほか、北東部が▲0.8%ポイント(前月:▲3.5%ポイント)と2ヵ月連続でマイナスとなった(図表4)。

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先行指標である住宅着工許可件数は、前月比が+5.7%(前月:▲3.5%)と前月からプラスに転じたほか、前年同月比も+8.3%(前月:+4.7%)とプラスを維持し、大幅に改善した(図表5)。

住宅着工許可件数(前月比)を戸建て、集合住宅でみると、戸建ては▲1.5%(前月:+0.1%)とマイナスに転じた一方、集合住宅が+19.6%(前月:▲9.9%)とこちらは大幅なプラスに転じており、住宅着工件数とは対照的な動きとなった(図表6)。

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一方、8月から9月にかけて南部を中心に大型ハリケーンが襲っており、その影響が懸念される。住宅建設業者のセンチメントを示す住宅市場指数は、直近9月が64(前月:67)と前月から3ポイント低下した(図表7)。このうち、地域別では北東部や西部が前月から改善する一方、中西部が59(前月:65)、南部が65(前月:69)と低下した。とくに南部では8月が前月から6ポイントの大幅な改善を示していただけに落込みが顕著となった。

同統計をまとめた全米建設業界協会(NAHB)は、ハリケーンが労働力不足や、建設資材の高騰などの懸念を助長したとしており、悪化の要因としてハリケーンを挙げている。今後、ハリケーンで被害を受けた家屋の復興需要が期待できるものの、建設業界では熟練労働力の不足が顕著となっており、供給面で回復に水を指す可能性がある。

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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

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