17年8月のASEAN主要6カ国の輸出(ドル建て通関ベース)は前年同月比16.4%増と、前月の同18.4%増から低下した(図表1)。輸出はイスラム教のレバラン(断食明け大祭)前後の長期休暇に伴う営業日数の増減によって上下に振れているものの、今秋発売の新型スマートフォン関連の電子部品や海外経済の回復による一次産品の需要拡大を受けて高水準を維持している。
先行きの輸出はスマートフォン関連製品を中心に高めの伸びを続けるだろうが、年末にかけてはベース効果の剥落や半導体需要のピークアウトを受けて伸び率は徐々に落ち着いたものになると予想する。
ASEAN5カ国の仕向け地別の輸出動向を見ると、7月は東アジア向けが同18.4%増となり高水準を記録したほか、北米向け(同10.8%増)やEU向け(同16.5%増)、東南アジア向け(同11.1%増)も揃って二桁増となり、全体的に好調が続いている(図表2)。
タイ の17年8月の輸出額は前年同月比13.2%増と、前月の同10.5%増から上昇し、4ヵ月連続の二桁増となった。輸出の伸びはバーツ高の影響が軽微にとどまり、電子部品やコンピュータ、家電製品などの工業製品、コメやゴムなどの農産品を中心に好調が続いている。一方、輸入額は前年同月比14.9%増と、前月の同18.5%増から低下した。結果、貿易収支は20.9億ドルの黒字となり、前月から22.8億ドル増加した(図表3)。
輸出を品目別に見ると、全体の約8割を占める主要工業製品は同12.2%増(前月:同8.6%増)と上昇し、好調が続いている(図表4)。工業製品の内訳を見ると、自動車・部品(同13.2%減)が再びマイナスに転じたものの、航空機・船舶・機関車(同152.4%増)が5カ月連続の三桁増を記録したほか、石油化学製品(同18.3%増)や電子機器(同12.8%増)、機械・装置(同9.8%増)が好調を維持した。また農産品・加工品が同17.1%増(前月:同20.2%増)と、加工食品(同17.7%増)が再び上昇したほか、コメ(同47.1%増)やゴム(同24.7%増)、ゴム製品(同44.9%増)が高い伸びを維持した。鉱業・燃料は同19.0%増(前月:同8.4%増)と、石油製品(同25.9%増)を中心に上昇して2ヵ月ぶりの二桁増となった。
マレーシア の17年8月の輸出額は前年同月比14.1%増と、前月の同22.6%増から低下したものの、二桁増を維持した。輸出の伸び率はレバラン前後の長期休暇による営業日数の増減によって上下に振れているが、主力の電気・電子製品や天然ガスを中心に好調を維持している。一方、輸入額も前年同月比15.1%増と、前月の同14.0%増から小幅に上昇した。結果、貿易収支は23.0億ドルの黒字と、前月から4.3億ドル黒字が増加した(図表5)。
輸出を品目別に見ると、全体の約4割を占める機械・輸送用機器は同12.5%増(前月:同20.1%増)と鈍化したものの、主力の電気・電子製品(同12.8%増)を中心に高水準を維持した(図表6)。動植物性油脂は同12.9%減(前月:同7.2%増)となり、パーム油(同17.5%減)を中心に大きく低下した。また鉱物性燃料は同33.1%増(前月:同41.1%増)と高水準を維持した。原油(同6.0%減)が低迷する一方、天然ガス(同97.3%増)と石油製品(同27.3%増)が大幅に増加した。このほか、製造品(同18.9%増)や化学製品(同9.4%増)も好調を維持した。
インドネシア の17年8月の輸出額は前年同月比19.2%増と、前月の同41.1%増から鈍化したものの、2ヵ月連続の二桁増となった。輸出の伸び率はレバラン前後の長期休暇による営業日数の増減によって上下に振れているが、中国向けを中心に電気機械や資源関連などの輸出が好調で高水準を維持している。一方、輸入額も前年同月比8.9%増と、前月の同54.0%増から大きく鈍化した。結果、貿易収支は17.2億ドルの黒字と、前月から20.0億ドル増加した(図表7)。
輸出を品目別に見ると、まず石油ガスが同12.1%増(前月:同16.7%増)と高水準を維持した(図表8)。非石油ガスでは、まず輸出全体の7割を占める製造品が同21.5%増(前月:同42.2%増)となり、電気機械(同14.0%増)やアパレル(同25.9%増)、動植物性油脂(同42.5%増)などが幅広く増加した。また鉱業品は同16.6%増(前月:同50.8%増)と高水準を維持した一方、農産品は同2.4%減(前月:同76.7%増)とマイナスに転じた。