相続税対策を名目にアパートが乱立したために空室が増えるようになり、不動産投資に失敗したケースも増えている。失敗した際に税制面の救済策はいくつかあるが、事前に手続きが必要なものもある。救済の取りこぼしはないようにしたい。

同じ年の給与所得などと損益通算

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(写真=Rachata Teyparsit/Shutterstock.com)

副業で不動産投資となれば本業では給与所得などがあるが、不動産貸付による所得(不動産所得)は、損失が生じた場合に他の所得と相殺(いわゆる損益通算)ができる。

例えば年収1,120万円であれば給与所得は900万円となるが、不動産所得で50万円の損失があれば、相殺されて合計所得金額は850万円となる。所得税率20.42%、住民税率10%であれば、この損益通算で所得税10万円強還付され、住民税を約5万円押し下げる効果がある。

なお相殺の対象は総合課税の所得であり、上場株取引・FX取引などから生ずる分離課税の所得とは相殺できない。

また満期保険金をもらった場合の一時所得は、収入から必要経費を差し引くだけでなく、50万円を控除し2分の1できる特例があるが、こういった所得からの差し引き方は独特である。

総合課税の譲渡所得・一時所得・退職所得・山林所得を除いてまず差し引きを行い、それでも損失が残る場合は総合課税の譲渡所得・一時所得から、さらに損失が残る場合は退職・山林所得から相殺する。

例えば生命保険の満期保険金が1000万円、掛けてきた総保険料が900万円で不動産貸付の損失が10万円だった場合、(1000万円-900万円-50万円-10万円)÷2=20万円と通算する。2分の1前で損失10万円を差し引いてから2分の1する。

青色申告で3年間の損失繰り越しも可能