結果の概要:住宅着工、許可件数ともに前月から大幅に減少、市場予想も下回る

10月18日、米国センサス局は9月の住宅着工、許可件数を発表した。住宅着工件数(季節調整済、年率)は112.7万件(前月改定値:118.3万件)と、118.0万件から0.3万件上方修正された前月改定値からは大幅に減少、市場予想の117.5万件(Bloomberg集計の中央値、以下同様)も下回った(図表1、図表3)。

一方、住宅着工許可件数(季節調整済、年率)は121.5万件(前月改定値:127.2万件)と、130.0万件から下方修正された前月や、市場予想(124.5万件)を下回った(図表2、図表5)。

56892_ext_15_0

結果の評価:住宅着工、許可件数ともにハリケーンが襲った南部で落ち込みが深刻

住宅着工件数の伸びは、前月比▲4.7%(前月:▲0.2%)と2ヵ月連続のマイナスとなったほか、前月からマイナス幅が拡大した(図表3)。前年同月比では+6.1%(前月:+1.6%)とこちらは2ヵ月連続でプラスを維持した。戸建てが+5.9%(前月:+19.5%)、集合住宅が+6.8%(前月:▲28.2%)と、戸建てがプラスを維持したほか、集合住宅が大幅なマイナスからプラスに転じた。

一方、地域別寄与度(前月比)は、西部が+4.0%ポイント(前月:+0.6%ポイント)と前月に続きプラスを維持したものの、その他の地域では全てマイナスとなった(図表4)。中西部が▲3.3%ポイント(前月:+2.7%ポイント)とマイナスに転じたほか、北東部が▲0.8%ポイント(前月:▲0.9%ポイント)、南部が▲4.6%ポイント(前月:▲2.5%)と前月に続きマイナスとなった。とくに、大型ハリケーンが襲ったフロリダ州とテキサス州を含む南部の落ち込みが大きいため、ハリケーンが影響したとみられる。

56892_ext_15_1

先行指標である住宅着工許可件数は、前月比が▲4.5%(前月:+3.4%)と前月からマイナスに転じたほか、前年同月比も▲4.3%(前月:+6.0%)と4ヵ月ぶりにマイナスに転じた(図表5)。

許可件数の地域別寄与度(前月比)をみると、北東部が+0.8%ポイント(前月:▲1.1%)、中西部が+0.1%ポイント(前月:+1.1%)とプラスとなったものの、西部が▲2.6%ポイント(前月:+3.7%ポイント)とマイナスに転じたほか、南部が▲2.8%ポイント(前月:▲0.2%ポイント)と2ヵ月連続のマイナスとなった(図表6)。とくに、南部はマイナス幅が拡大しており、住宅市場の回復には今暫く時間を要するとみられる。

56892_ext_15_2

56892_ext_15_3

9月の結果を受けて、7-9月期の住宅着工件数(3ヵ月移動平均、3ヵ月前比)は▲0.6%(4-6月期:▲21.0%)と、前期からマイナス幅は縮小したものの、2期連続でマイナスとなった(図表7)。

このため、10月27日に発表される7-9月期のGDPでは、住宅投資(前期比年率)が4-6月期の▲7.3%から、マイナス幅は縮小が見込まれるものの、2期連続でマイナス成長となる可能性が高くなった。

もっとも、ハリケーンで打撃を受けた南部では復興需要も見込まれることから、10-12月期以降の住宅投資は再びプラスに転じることが予想される。

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

【関連記事 ニッセイ基礎研究所より】
米住宅市場の動向-雇用不安の後退や低金利継続が住宅需要を下支え。今後は住宅供給の増加が鍵。
労働市場の回復長期化に伴い、労働力不足の懸念が浮上
中期経済見通し(2017~2027年度)
【9月米雇用統計】雇用者数は前月比3.3万人減。ハリケーンの影響により、市場予想を大幅に下回る
【8月米個人所得・消費支出】実質個人消費(前月比)は▲0.1%と市場予想に一致も、17年1月以来のマイナス。ハリケーンの影響を示唆