「働き方改革」を実施している企業は2年間で倍増。導入の目的は「生産性の向上」に加え、「従業員の働きがいの向上」。そこには、いま注目を浴びている「エンプロイー・エクスペリエンス」(Employee Experience)という従業員の立場からの視点が7割以上を占めています。

この調査結果は、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社が、2017年6月から7月にかけて行った「働き方改革の実態調査2017~Future of Workを見据えて」から浮き彫りになりました。成果を挙げている企業の特長を紹介します。

「働き方改革」は長時間労働の是正だけではない

(写真=Rawpixel.com/Shutterstock.com)
(写真=Rawpixel.com/Shutterstock.com)

2013年、15年に続いて、今回で3回目となった、日本企業の取組むべき重要経営課題の一つである「働き方改革」の実態調査。上場企業を中心とする238社から有効な回答を得て、今年9月に結果が発表されました。

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社では、「働き方改革」を長時間労働の是正だけでなく、「生産性」と「従業員の働きがい」の向上を実現することと位置付けています。その上で、企業の取組み状況や内容、組織風土を多角的にリサーチし、課題や解決への方向性を探りました。

同社が重視する「生産性の向上」と「エンプロイー・エクスペリエンス(従業員が企業や組織の中で体験する経験価値)」の改善で、成果を挙げている企業の特長とは、どういったものでしょうか。

背景や目的に「エンプロイー・エクスペリエンス」の視点

今回の調査で、「働き方改革」を「既に実施した(10%)」と「推進中(63%)」を加えると73%でした。2013年は30%、2015年の34%と比べても倍増しています。

「働き方改革」を実施する企業の割合が、2015年から倍増した背景には、「エンプロイー・エクスペリエンス」の視点が伺えます。

企業が挙げた目的は、「生産性の向上」が87%でトップ。次に、「従業員の心身の健康の向上(76%)」、「従業員満足度の向上(74%)」と続いています。

改善するには、企業の生産性を上げるだけではなく、従業員に満足できる体験を与えられるか、という視点が求められていることが分かります。

従業員の働きがいや働きやすさを企業が重視へ

「働き方改革」で49%の企業が効果を感じていると回答。その一方で、従業員満足度も得られたという回答は28%、満足に至らないを併せると44%でした。そこから「従業員満足度」の向上は、十分な成果が上がっているとは言えないことが明らかです。

残業時間の制限など「長時間労働の是正」に関しては86%が実施。次が「業務の見直し」で、62%が取組んでいるとしています。

その一方で、日本的な企業の組織風土に関して「ある程度の長時間労働は仕方がないという雰囲気がある」が59%。実はいまだに成果や業績の達成には、ある程度の長時間労働は仕方がないという雰囲気が根強いことがうかがえます。

また、長時間働いている人は頑張っていると評価されることが多い(45%)、短時間での成果創出や生産性の高い働き方に対しての評価も定着していない(53%)ようです。

削減された残業代についても、再分配という流れができていないことも課題です。これが働きにくさや不満につながっていることもあるようです。

一過性ではない課題の解決に繋がる「組織風土の改革」は47%、健康経営は32%、パフォーマンスやマネジメントの見直しとマネジャーの能力開発が20%、テクノロジーの活用(RPA・AI)は13%。ここから多様な取組みを実施している企業は、半数以下に留まっていることが分かります。

「働き方改革」で成果を挙げている企業の共通点とは

「働き方改革」の方針で、KPI(数値計画と目標管理)を設定し、定期的なモニタリングを実施している企業では85%が効果を実感。KPI未設定企業の2.5倍以上でした。マネジメントのプロセスを徹底していることが明らかと言えます。

上記の調査結果から、「働き方改革」の実行度や効果の実感性が高い企業は、「テクノロジーの活用(RPA・AI)」と「従業員のパフォーマンスを引き出す施策」の実施率も高いことが明確になっています。

現実には、約60%以上の企業がRPA(ロボットによる業務自動化)やAI(人工知能)、不特定多数の人が関与して必要なサービスやコンテンツなどを取得する「クラウドソーシング」に関心を持ちながら、実際に導入している企業は3%から10%程度に留まっています。

総合的なマネジメント手法の「パフォーマンス・マネジメント」を見直したり、見直しを検討中の企業は約半数でした。具体的な検討内容で最も多かったのはカウンセリング・コーチングで、短サイクル・高頻度な目標設定が続いています。

テレワークやモバイルワークも浸透。サテライトオフィスや在宅勤務を認める企業は、2013年の初回調査時から継続的に増えています。

女性従業員や管理職の比率で進捗状況に遅れ

女性従業員や管理職などに多彩な人材を登用し、一体化する「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」の比率については、明確に数値目標を設定している企業はそれぞれ50%超。ただし、その中40%から50%の企業では、目標に対する進捗状況が遅れており、今後の課題となっています。

企業の85%が「健康経営」にも関心があると回答。さらに、全体の52%は検討中か実施済みでした。また、現在、「副業や兼業」を推し進める企業はわずか13%。ただし、将来的に推進したいと39%が回答しているので、今後の成り行きが注目されます。

(提供: あしたの人事online

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