結果の概要:住宅着工、許可件数ともに前月から大幅に増加、市場予想も上回る
11月17日、米国センサス局は10月の住宅着工、許可件数を発表した。住宅着工件数(季節調整済、年率)は129.0万件(前月改定値:113.5万件)と、112.7万件から上方修正された前月改定値から大幅に増加、市場予想の119.0万件(Bloomberg集計の中央値、以下同様)も上回った(図表1、図表3)。
一方、住宅着工許可件数(季節調整済、年率)も129.7万件(前月改定値:122.5万件)と、121.5万件から上方修正された前月や、市場予想(125.0万件)を上回った(図表2、図表5)。
結果の評価:ハリケーンで落込んだ南部の着工、許可件数が回復
1住宅着工件数の伸びは、前月比+13.7%(前月:▲3.2%)と4ヵ月ぶりにプラスに転じたほか、16年10月以来の2桁の上昇となり、ハリケーンからの回復が鮮明となった(図表3)。戸建てが+5.3%(前月:▲4.4%)と、前月からプラスに転じたほか、集合住宅が+36.8%(前月:+0.3%)と大幅に増加するなど、10月は戸建て、集合住宅ともに増加した。一方、前年同月比では▲2.9%(前月:+6.9%)とこちらは3ヵ月ぶりにマイナスに転じた。
地域別寄与度(前月比)は、西部が▲1.1ポイント(前月:+1.2%ポイント)とマイナスになったものの、その他の地域はすべてプラスとなった(図表4)。中西部が+2.9%ポイント(前月:+0.7%ポイント)と2ヵ月連続でプラスを維持したほか、北東部が+3.8%ポイント(前月:▲0.5%)、南部が+8.0%ポイント(前月:▲4.5%ポイント)と、前月からプラスに転じた。とくに8月下旬以降に大型ハリケーンが襲ったフロリダ州とテキサス州を含む南部では3ヵ月ぶりに増加に転じた。
先行指標である住宅着工許可件数は、前月比が+5.9%(前月:▲3.7%)と前月からプラスに転じたほか、前年同月比も+0.9%(前月:▲3.5%)とプラスに転じた(図表5)。
許可件数の地域別寄与度(前月比)をみると、北東部が+0.4%ポイント(前月:+0.9%)、中西部が+0.6%ポイント(前月:+0.1%)と前月からプラスを維持したほか、西部が+3.4%ポイント(前月:▲2.8%ポイント)、南部も+1.5%ポイント(前月:▲2.0%ポイント)と前月からプラスに転じた(図表6)。とくに、南部は3ヵ月ぶりのプラスとなった。なお、許可件数が全ての地域でプラスとなるのは、16年8月以来である。
これまでみたように、10月の着工・許可件数は堅調となったが、建設業者の新築住宅販売に関するセンチメントも回復が顕著となっている。住宅販売の現況と今後6ヵ月の見通しは、9月にそれぞれ、70、73と17年の年初来で最低水準となっていたが、10月から2ヵ月連続で回復が顕著となっており、11月はいずれも77と現況が3月につけた年初来最高水準と一致したほか、6ヵ月見通しも10月につけた78を伺う水準まで上昇した(図表7)。
このため、ハリケーンからの復興需要もあり、GDPにおける住宅投資は10-12月期が3期ぶりにプラスに転じる可能性が高まったと言えよう。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員
【関連記事 ニッセイ基礎研究所より】
・【10月米雇用統計】雇用者数は前月比26.1万人増、前月から大幅増加も市場予想は下回る
・【11月米FOMC】予想通り、政策金利を据え置き。ハリケーンの影響は、短期的との判断を維持
・税制改革実現は依然不透明-下院共和党案は本会議で可決も、税制改革実現は上院の動向が鍵
・【7-9月期米GDP】前期比年率+3.0%、ハリケーンの影響にも拘らず、堅調な伸びを維持
・中期経済見通し(2017~2027年度)