見ての通りの展開である。日経平均は11月上旬に高値を打ってから最初の調整では25日移動平均できれいに下げ止まり、その後堅調な戻り歩調を辿るかに見えた。ところが今週に入ってから弱含み、一昨日6日は445円安と今年最大の急落を演じた。下げ幅の大きさもさることながら、25日線を下抜け長い陰線を引いたことで、サポートラインがブレイクされたと悲観的な見方が強まった。

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(画像=マネックス証券)

しかし、なんということはない。昨日は大きく反発し、今朝も200円超の上昇を見せている(午前10時現在)。6日の急落をわずか2日ですべて取り戻した格好だ。

これは典型的な、「弱気筋を振るい落とす」動きである。「振るい落とし」とは仕手筋が使う手だが、市場全体でも似たような動きになることがある。市場全体を動かすことは仕手筋には到底無理でヘッジファンドでさえそのようなことはできないから、まさに「意図せざる市場の動きの妙」と言えるだろう。

「弱気筋」とは最近になって強気に転換した投資家も含む。こうした投資家は遅れて相場に乗ったのでじゅうぶんなバッファーがないから、少し下がると耐えられない。行動ファイナンスが教える「損失回避バイアス」も働いて、「損しないうちに」と思ってすぐ投げてしまう。そうした腰の据わっていない投資家は、どうせすぐ売ってしまうので、早いうちに振り落したほうが、相場は軽くなってかえって上昇する。下手に空売りでもしてくれれば踏み上げ相場でさらに上がる。

6日の急落のようなことが起きると、市場関係者はその理由をあれこれ探す。中東情勢、中国経済、SQ絡みの(および米国のトリプル・ウィッチング絡みの)需給要因、海外勢の12月決算を控えた利益確定、etc. よくわからない時に使われる「ヘッジファンドの仕掛け売り」という常套句もよく耳にした。しかし、常々述べている通り、何か明確な理由があって株価が動くことなど稀である。逆の言い方をすれば、特段、たいした理由もなく株価は大きく動く。目先の動きに一喜一憂せずに中長期的なトレンドを見定めることが肝要である。

相場は値幅ではなく日柄で調整すると述べてきた。実際、市場の中身は半導体関連のハイテク株が売りに押され調整が続いてきた。これは日米同様の展開であったが、米国のフィラデルフィア半導体株価指数(SOX指数)は一目均衡表の雲の上限できれいに切り返している。ハイテク株の調整も一巡した感がある。

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日本株のこのラリーの起点は9/8であった(日経新聞に林真理子の『愉悦にて』が連載開始された日でもある)。日経平均の高値は終値ベースで11/7、ザラ場で11/9である。仮に今週6日で2番底を入れたとすれば、丸2カ月上げて丸1カ月調整したということになって、相場のリズム的にもちょうど良い。

年内、残り3週間。まずは終値で2万3000円台に乗せ、それからザラ場高値を抜き、年末に2万4000円手前まで迫るような動きになるだろう。

広木隆(ひろき・たかし)
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト

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