保険と言えば、「万が一のことがあった場合でも家族が安心して暮らせるように加入するもの」というイメージを持つ方も多いでしょう。実際に一般家庭における生命保険の普及率は高く、生命保険文化センターの「平成27年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、世帯加入率は89.2%にも上ります。
生命保険は一般家庭だけでなく、法人が役員や従業員の退職金の準備をしたり、経営者に万が一のことがあった場合に事業を安定化させたり、将来の事業承継の対策をしたりとさまざまな企業目的でも活用されています。
法人による保険利用は、そうしたさまざまな目的と同時に、節税対策にもなるという大きなメリットがあります。以下では、法人保険で節税が可能となる仕組みを解説するとともに、実際にどのような種類の保険が活用できるのかを紹介します。
法人保険で節税できるのは損金算入があるため
生命保険の契約では、「契約者」、「被保険者」、「保険金受取人」の三者が登場します。法人保険の例として、契約者を法人とし、被保険者を役員や従業員、保険金受取人を法人とするケースがよく見られます。
この場合、契約者である法人が支払う保険料は、法人税法上、損金として処理されます(損金の計上割合は場合によって変わる)。つまり、損金に計上された分だけ法人の所得が減ることになるため、負担すべき法人税や住民税、事業税などを抑える効果があるのです。例えば、法人で毎年利益が出ている場合、その一部を保険に回すことで節税につながるということです。
もちろん、広告費や交際費など他の経費を使っても法人の損金にはなります。しかし、生命保険の場合は、死亡保険金や満期保険金あるいは解約返戻金という形で、後から法人にお金が戻ってくるところがミソといえます。
当然、保険金や解約返戻金を受け取ったときには法人税上の益金となるため、課税対象になります。しかし、保険金と同額の退職金を役員に支給すれば、保険金などの益金と退職金の損金でプラスマイナス・ゼロとなり、法人には追加の税金が生じません。
しかも、役員が受け取った退職金は退職所得として扱われ、所得税額が軽減されます。したがって、法人だけでなく役員にとっても税務上、大変メリットのあるプランとなるのです。
法人保険のいくつかのタイプについて
法人保険には、経営者や従業員の退職金準備のほか、事業の安定化、事業承継対策などの目的に応じて、それぞれ適したタイプのものが存在します。
例えば、「長期平準定期保険」は、保険期間をかなり長めに設定した定期保険であるため、終身保険と同等の死亡保障を確保しつつ、一定期間が経過した後は100%に近い解約返戻金が得られる可能性がありますそのため、経営者の将来の退職金準備などにも適した法人保険といえます。
また、「逓増定期保険」は、契約後から保険期間満了まで保険金額が当初金額から5倍まで増加するタイプの定期保険であり、解約返戻金も数年で100%に近い水準となります。そのため、ある程度、時期が確定している経営者の退職金支給に適した保険といえます。
「長期平準定期保険」と「逓増定期保険」は、いずれも満期保険金のない定期保険に分類されますが、保障額が大きいため保険料は割高となっており、その分、法人の所得を抑えて節税効果も期待できる保険商品となっています。
これに対して、「養老保険」は、死亡保険金に加えて、満期保険金も受け取ることができる保険です。そのため、一般的に掛け捨てとなる定期保険に相当する保険料に、満期保険金の積み立てに相当する保険料が加算されます。
「養老保険」は、従業員を被保険者として、死亡保険金の受取人は従業員の遺族、契約者と満期保険金の受取人は法人とすることで、従業員の遺族にとっては万が一のときの保障、法人にとっては従業員の退職金への備えになります。そのため、従業員の福利厚生プランとして利用されることの多い商品です。
どの程度、節税に役立つのか
保険料のうち、どれだけを損金に算入できるかは保険のプランによっても変わってきます。全額を損金算入できるものや1/2を損金算入できるものなどがあります。
仮に、毎年614万円の利益を計上している法人が、今後25年間にわたって経営者の退職金を準備するというケースを考えてみましょう。法人実効税率は36%と仮定します。
もし、保険を活用しないで、現金で退職金を積み立てていくと、614万円の利益がそのまま課税されるため、毎年221万円(=614万円×36%)の税金がかかります。実際に残すことのできる資金は毎年約393万円となるので、25年後には9,824万円の資金が準備できます。
これに対して、保険料の1/2を損金算入できる保険を活用した場合、課税される利益が614万円から307万円に圧縮され、支払う税金は毎年110.5万円(=307万円×36%)となります。実際に残すことのできる資金は毎年約503.5万円となるので、25年後には約1億2,587万円の資金が準備できます(退職金として受け取る際は税金がかかります)。
もちろん、条件によって損金算入要件や返戻率などが異なりますので、詳細なシミュレーションは専門家などにも相談しながら行うことが有益と考えられます。
法人保険は会社の状況に応じて柔軟な設計が可能です。利益が多く出ている会社における決算対策として、また、将来の役員退職金や事業承継対策として、検討してみる価値のある商品といえるでしょう。(提供:保険見直しonline)
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