歴史的瞬間が訪れた。財政部のデータによると、2017年11月末、中国国有企業の負債総額が、初めて100兆元を突破して100兆800万元となったのだ。国有企業の負債増加のスピードは、M2とGDPの増加よりはるかに速い。中国はどうなってしまうのだろうか。ニュースサイト「今日頭条」が分析記事を載せている。
負債は10年前の4倍
中国財政部は8月末、6月末段階での負債総額を94兆元と発表している。5カ月で6兆元の増加であり、順調に大台に到達したといってよい。もう少し長く10年間の対比を見てみよう。(2007年/2017年11月/伸長率)
総資産 34兆7000万元/151兆8000万元/337%
総負債 30兆2000万元/100兆800万元/395%
総収入 18兆元/46兆7000万元/159%
総利潤 1兆6200万元/2兆6000万元/60%
ここ10年で、負債の増加率が最も高く、利潤の8倍も増加している。さらに主要資産も負債から来る部分が多く、収入や利潤に依存していない。
20年前と同じ状況?
20年前の朱鎔基総理の時代にも、似たような警告が発せられていた。要約すると次のような内容である。
「92年の鄧小平(南巡講話)以降、全国で投資が加熱した。資産への投資が増加し、92~96年の生産効率は大幅に低下した。融資とその成果の間に、大きなギャップが広がった。経営資源の誤った配置は許されない。信用はまず赤字部門を補うために使うべきである。97年の金融危機以来、輸出産業は不振である。過度の生産力拡張はやめるべきである。少なくない産業の設備稼働率が40%に達していない。銀行の不良債権は30%にも達する」
この20年前と同じ状況に帰っている。すなわち、大量無効投資、大量の借入れ、再投資、再貸付け、リスク投資などである。
中でも国有企業の貸付は終わらせることができない。高利貸しを行っているからである。
国有企業の「無金融資」
8月中旬最高人民法院(最高裁判所)は「金融審判工作の強化に関する若干の意見」を発表した。それによると「無金融資」が実際に存在し、これが国有企業の金融業務を変質させているという。正規金融機関の貸金業務を阻害し、完全に高利貸しとなっている。これは貸出しに関する法律の効力を否定するものだ、実体経済に回帰しろ、と指摘している。
最高裁がこの種の通達を出すとは驚きだが、内容はさらにすさまじい。無金融資の実態は想像するしかないが、名前の通り、実際は金のやりとりはないのに、取引先に金を貸したことにして、高い利息だけを受け取っているとすれば、これは恐喝と変わらない。だからこそ最高裁が警告しているのだろう。
中国人の思考は不変
記事は、この手の輩を止めることは不可能かも知れない。これらの債務は生活物資を同じように作用しているからだ。しかしこの100兆元を止めないと、生活の持続そのものが不可能になる、と強調している。
しかし最高裁が警告を発しているとはいえ、最高裁も国有企業も管理しているのは共産党である。人体に例えれば右手と左手に過ぎない。
最後に1998年の国務院会議で、朱鎔基総理が強調した内容を載せている。そこでは、供給側改革、重複投資の中止、企業債権の適切な管理、などが強調され、現在の議論と重複するものばかりである。
この20年間、中国は驚くべき経済成長を遂げた。しかし国有企業の思考回路は全く変わっていなかった。中国人とは不変の存在である。国有企業のガバナンス改革が議論となっているが、それ以前に恐喝行為をやめることから始めるべきだろう。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)