シンカー:昨年の1月にテクニカルな上昇が強かった反動で、コア消費者物価指数の前年同月比では変わらなかったが、季節調整済前月比+0.2%となっているため、物価上昇圧力は引き続き強くなっていると考えられる。アベノミクスが円安や短期的な需要対策だけではなく、日本経済の内需を含めた本格的な景気拡大に寄与しているのは、非製造業の売上高経常利益率がしっかり上昇し、これまでにない圧倒的な最高水準になっていることで説明できる。その高水準の利益率がとうとう伸び悩み始めたことが確認されている。賃金の上昇などによるコストの増加を、売上高の増加でカバーする余地が減っていることを意味する。高水準の利益率を維持するためには、企業の選択としては、売上数量を更に増加させるか、価格を引き上げる必要が出てくることになる。年度初めの4月以降に、サービス価格の引き上げがより強く進行していく可能性がある。

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

1月のコア消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年同月比+0.9%と、12月と変わらなかった。

2018年は1月にマイナスからプラスに転じて以降、上昇幅が順調に拡大してきた。

昨年の1月にテクニカルな上昇が強かった反動で、前年同月比では変わらなかったが、季節調整済前月比+0.2%となっているため、物価上昇圧力は引き続き強くなっていると考えられる。

アベノミクスが円安や短期的な需要対策だけではなく、日本経済の内需を含めた本格的な景気拡大に寄与しているのは、非製造業の売上高経常利益率がしっかり上昇し、これまでにない圧倒的な最高水準になっていることで説明できる。

その高水準の利益率がとうとう伸び悩み始めたことが確認されている。

賃金の上昇などによるコストの増加を、売上高の増加でカバーする余地が減っていることを意味する。

高水準の利益率を維持するためには、企業の選択としては、売上数量を更に増加させるか、価格を引き上げる必要が出てくることになる。年度初めの4月以降に、サービス価格の引き上げがより強く進行していく可能性がある。

賃金上昇が需要を支える形もあり、売上数量増加と価格上昇の両立が可能とみられることが、経営者の判断を後押しするだろう。

1月のコアコア消費者物価指数(除く生鮮食品およびエネルギー)は前年同月比+0.4%と、12月の同+0.3%から上昇幅が拡大し、物価上昇の広がりが見える。

一方、需要超過が財の価格を押し上げる形は製造業で続くと考えられるが、足元の円高によりその動きが一時的に抑制される可能性もある。

マーケットは、日銀の金融緩和の出口への警戒感により、円高や株安が進行している。

しかし、因果関係は逆で、マーケットが警戒すればするほど、2%の物価目標の達成は困難となるため、日銀の金融緩和の出口は遅れることになる。

黒田総裁の再任を含む新たな日銀の執行部も、粘り強く現在の金融緩和の枠組みを維持し、政府との共同目標である2%を目指していくことになるだろう。

マーケットの警戒感が薄れ、円安の動きが再開し、強い景気の動きとともに、日銀が物価のリスク判断を下方から中立に変更しないかぎり、金融政策の変更はないだろう。

長期金利の誘導目標の引き上げで、副作用が懸念されるフラットするぎるイールドカーブを修正するのは2019年になるだろう。

その必要条件は、明確な賃金上昇などを背景にコアコア消費者物価指数の1%程度の上昇し、展望レポートのでの物価のリスク判断が「下振れリスクの方が大きい」という下方から中立化され、そして円安の動きが再開することであると考える。

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司