本記事は、下間 都代子氏の著書『今すぐ! 思わず! もう一度! 人前で話したくなる声と話し方』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。
人を惹き付ける「声」と「話し方」とは?
第一声を聞いた瞬間「あれ?」と思って耳をそば立てた経験はないだろうか?
あるイベントに参加したところ、3人のビジネス書著者による20分ずつのプチセミナーがあった。
実はその日、私はお酒を飲んだあとだったので、正直なところとても眠くて、1人目の方のときはこっくりこっくりと船を漕いでいた。ところが、次の人の話が始まったとたん、なぜか急に目が覚めて思わず姿勢を正した。なぜ急に眠気が覚めたのか。
実は、私が反応したのは、その人の「声」だった。
その日はじめて会ったYさんは、見た目はかなり真面目そうで、どちらかというと地味な印象だった。ところが話し始めると、声がよく通って聞こえやすく、居眠り中の私の耳に響いてきて叩き起こされた。
「へえ、良い声してるんだなあ、意外だな」
そして、聞いていくうち、話がとてもわかりやすくて、知らず知らずのうちに引き込まれていった。先ほどまでの眠気が吹き飛ぶ、あっという間の20分だった。
あとで知ったが、Yさんは大学院の先生で、企業研修もかなり経験している方だった。
しかし、経験していれば良いというものでもない。スラスラ話せていたとしても、かえって右から左に聞き流すだけになる、物足りない話し方の人も多い。Yさんの素晴らしかった点は、経験が多くとも、慣れた話し方になりすぎていないところだったと思う。
ナレーターの世界では「調子で喋る」「雰囲気で喋る」のはNGとされる。
どういうことかというと、伝えたい内容を表現することよりも「軽めにしよう」とか「渋くカッコよくしよう」などと表面的なイメージ重視でナレーションしてしまうと、何を読ませても同じになってしまい、奥行きが感じられなくなる。内容をよく理解した上で、聞き手にとってわかりやすく、かつ心に届くような表現力が求められる。
講演会やセミナー、学校の授業なども同じ。例えば先生の話を聞いているだけで眠たくなるのは、毎年生徒が変わるにもかかわらず、同じことを繰り返し教えているうちに先生が丸覚えしてしまい、相手がどんな生徒たちなのか? を考えずにワンパターンな喋り方になってしまうからだ。伝えよう、理解してもらおう、という意識が疎かになっているからだ。
私も講演会やセミナーの講師をよく担当するが、たとえ同じテーマで講演することがあったとしても、台本通りではなく、その日の受講者に合わせて切り口を変えてみたり、事例を変えてみたりする。
たとえ言い損なったり、すぐに言葉が出てこなかったりしても、かえってそのほうが聞きたくなるし、受講者との呼吸が合ってくる。
つまり人前で話すときは、綺麗に噛まずに話せればいいという問題ではないということ。
先ほど例に出したYさんのように、人前で話をするときは、「声」の力に加え、「話し方」が大切になる。「聞きたくなるような内容」を、「より聞きたくなるような話し方」で伝えていって欲しい。
人を惹き付ける「声」と「話し方」の特徴
人を惹き付ける「声」と「話し方」の主な特徴は次の通りだ。
① 声の出し方が安定している
② 聞き取りやすい
③ 声のボリュームに変化がある
④ 声と話し方に熱量が感じられる
⑤ 声に抑揚がある
⑥ 緩急がある
⑦ リズム感がある
⑧ 間のとり方が適切
⑨ 丁寧な文末
⑩ 世界観を感じる
たとえ声が安定していなくても、その人の世界観を醸し出している話し方なら惹き付けられることもたまにはある。ただ、それは例外なので、基本的なポイントを押さえ、あなたが再現しやすい方法のみを紹介していこう。
話す相手にとってどういう声や話し方が良いのか? を考えて、練習した上で、それを自分の基本形にしていって欲しい。
せっかく素晴らしい原稿が出来上がっても、声や話し方が一本調子だと聞き手には伝わらない。私の著書『「この人なら!」と秒で信頼される声と話し方』(日本実業出版社)にも書いたが、人前で話すときには交響曲のように緩急や強弱、高低、間、余韻など様々な変化が欲しい。
スピーチマップに沿って進むイメージにたとえると次のように表現できる。
あなたの話の内容は、上り坂もあれば下り坂もあるはず。階段なのか、エスカレーターなのか、途中は新幹線に乗っても良いかもしれない。トンネルのシーンはどう声で表現しようか。崖っぷちをおそるおそる歩くところはどうするだろう? 話の内容に応じて、ときにゆっくり、ときに早く、さらには静けさ、強さ弱さ、すべてを駆使することで、聞き手はあなたと共に、その地図(スピーチマップ)を歩いている感覚を覚える。
このような様々な話し方の変化が共感を呼んだり、新しい気づきを与えたり、世界を広げるきっかけとなる。
私たちは「声」という楽器を駆使し、見えないエネルギーを聞き手に伝えている。「声と話し方」で心を揺さぶっている。これができるようになると、人前でもっと話したい、もっと聞いてもらいたい、と思うようになるはずだ。
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