本記事は、下間 都代子氏の著書『今すぐ! 思わず! もう一度! 人前で話したくなる声と話し方』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。
常日頃から心がけたい「ネタメモ5選」
「人前で話すときの悩み」についてアンケートをとったところ、「気の利いたことが言えない」という人が多かった。
「あの人はいつもアドリブが上手いな」と思っている人でも、実は常日頃からあらゆることに関心を寄せ、自分にインプットしている。それなりの準備や努力なくして、アドリブの達人にはなれない。
気の利いたことを言うためには準備が必要である。
ではどのように準備すればいいのか?
これは言い尽くされた王道だが、先に紹介した「ネタメモ」が一番良い。手帳でもスマホでもいいので、メモするしかない。頭の中だけで覚えておこうと思っても限界があるので「書かなくても覚えておける」などと自分を過信するのはやめよう。
実のところ、私は自分を過信してしまい、多くの素晴らしい経験や気づきを無駄にしてしまった経験がある。特に、お酒を飲んでいるときなどは覿面で、翌朝、「昨日、確かすごくいい話を聞いたけど、なんだっけ?」ということがしょっちゅうある。もったいないことをした。
次に紹介するのは私が実践している「ネタメモ5選」。参考にして欲しい。
① 今日の「印象日記」をつける
私は毎日、ブログに、その日、一番印象に残ったことをピックアップして書く。これを、私は「印象日記」と呼んでいる。
それをいきなりやれといっても難しいと思うので、まずはその日、印象に残ったことをひと言でまとめる習慣を付けよう。その際、印象に残ったことにタイトルを付けるようなイメージで書いておくと後日、思い出しやすくなる。
例えば「やさしさに救われた日」とだけ書いておくと、自分が接客でピンチに陥ったとき、先輩がすかさず助けてくれて上手く対応できた、など、具体的なことを思い出すことができる。
このとき、話のネタになりやすいのが、ピンチを救ってくれた側の人の心の動きや行動だ。例えば「あのとき先輩はきっと助けないといけないと思っていたのではないか、と私は思った」など、先輩の思いを話に盛り込むことで、ほかの人にも役に立つ内容となる。慣れてきたら日記にすると良い。
また、「あれ? なんでこんなこと感じたのだろう?」という「違和感」の瞬間を書き留めるのも良い。
レジでの接客のひと言にイラッとしたときや、電車でふと涙ぐんだ出来事など、何かしら自分の中で生まれた違和感は、心が動いた証拠。いつもならイラッとしなかったのにそう感じたのには、きっと何か自分自身の中でいつもと違う心情があったから。例えば、タイトル「昨夜のケンカを引きずる私の巻」なんていうこともあるかもしれない。
ふと涙ぐんだのは、実は昨日見た恋愛ドラマの感情が残っているからかもしれない。タイトルは「私はキョンキョン…… の巻」でどうだろう。どんなドラマでどんな感情を抱いたのか? これを掘り下げることで話すネタになる確率が高くなる。
② 他人の話を「自分事化」する癖を付ける
ニュース、友人の体験談、読んだ本などを「もし自分だったら?」と置き換えてみる癖を付けよう。
私は平日の毎朝、音声アプリのClubhouseを使ってライブ配信をしている。ビジネス書の著者をゲストに、インタビューをしているのだが、この番組のリスナーさんは、「自分事」にするのが非常に上手い。著者の話す経験談を聞いて、「私の場合はこうでした」と、すかさずチャットにコメントしてくる。
私もリスナーさんに呼びかける。「自分だったらどうするだろう? と考えてみてね」。
想像力を発揮して考えてもらうだけで、ただなんとなく聞いているのとは違う視点が生まれる。それをメモしておくことで、自分ならではのネタになるだろう。
他人の話や小説の話だったとしても、自分事に変換し、自分の視点を加えるだけで、「もらいもの」の話ではなく「あなたならではの話」に早変わりする。
③ 「コミュニケーションインタビュー」を日常に取り入れる
毎朝ビジネス書のインタビュー番組をやっていると、どんどんネタがインプットされていく。ゲストの人生と、ゲストのスキル、両方を目の当たりにして、それに触発されて先ほどの「自分事化」ができるようになっていく。
例えば自己啓発書の場合、私自身の生い立ち、経験と照らし合わせながら著者に話を聞いていくことで、まずは自分が腑に落ちる。それを聴いているリスナーさんは、私の心情に寄り添って、自分事に置き換えてくれる。
インタビューは自分の体験と相手の体験を融合させられる素晴らしいネタ集めの方法だ。私のようにSNSでライブ配信する人でなくても、インタビューはいくらでもできる。
「インタビュー」というと、ちょっと大袈裟に感じるなら「体験談を参考にしたいので話を聞かせて欲しい」と頼めばいいし、わざわざ時間を作って欲しいとお願いせずとも、一緒に食事をしているとき、仕事の帰り道など、隙間の時間を使い、自分から相手に何かと質問を投げかけるだけで、いい話が聞けることもある。これも一種のインタビューだ。
ところで、インタビューはネタ集めをしたいあなたのためにやることと思いがちだが、そんなことはない。
実は、聞かれる相手にとっても、自分の経験や考えていることを言語化することで、頭の中を整理する良い機会となる。例えば、上司にスキルについてインタビューすると、案外喜んで話してくれるものだ。
ネタの情報収集ができ、相手も喜んでくれるコミュニケーションインタビューは、本当に面白く、お互いにとって有益で便利なネタメモとなる。
④ 「ネタ探し目線」で歩く
いつもの散歩道も、「話のネタ」を探しながら歩くと景色が変わる。ポストに差し込まれたチラシ、すれ違った親子の会話、古い看板のひと言など、なんでも構わない。
昨今は電車に乗った瞬間、スマホでゲーム、の人も多いと思うが、せっかくなので、中吊り広告や車窓の風景を眺めてみよう。例えば、その日のテーマを色で決めるのも良い。
どれか一つ色を決めて、街の中でその色を探していくだけ。あとで詳しく説明するが、「連想する力」は咄嗟のアドリブに有効なので、同じ色でもどんな物があるのかを発見する練習にもなる。「赤」=「りんご」しか思い浮かばない人にはこの手法はうってつけだ。
私の場合、その日に着ている服の色をテーマにすることが多い。
青の服なら、「今日は青色探し」と決めて周りを見ながら歩く。不思議と青い服の人ばかりが目に映る。「青色の服が流行っているのか?」と思うほどである。
これは、カラーバス効果という心理現象によるもの。テーマ色を決めるだけで意外な「青色」を発見でき、そこから、着る人の年代によって「青」の色が少しずつ異なると気づいたり、目を引く青とそうでない青の違いなどを見つけたりできる。話のネタはこんな日常から見つけられる。
⑤ 感情が動いた瞬間を逃さずストック
最近感動したことはあるだろうか。人間関係の中で、または映画や音楽を鑑賞してなど、あらゆる場面で「泣いた・笑った・怒った・感動した」など、感情が揺れた瞬間をメモや音声で記録しよう。
年齢と共に感動する瞬間が少なくなっていくという声を耳にすることがあるが、そんなことはない。新しいことに挑戦する気持ちがあれば、そこに心の動きが伴うはず。自称28歳の私は、今でもなるべく新しいことにチャレンジしているし、新しい出会いを自ら求めている。
そんな毎日を過ごしているせいか、まだまだ感動ポイントはあるし、怒りの沸点ポイントもある。後者はあまり嬉しくない感情ではあるが、それでも人間なので、そんな日もある。
あなたの感情が宿る話は、聞き手の心も震わせる。具体的な話を盛り込み、想像力を掻き立てることで、聞き手はイメージを膨らますことができる。
もし似たような経験をしたことがある人がいれば、共感して、一緒に泣いたり笑ったり、ときには怒ってくれるはずだ。
あなたの感情が動いた瞬間、それが「熱の源」となる。その熱が冷めないうちに、そっとすくい上げておこう。
もちろん過去の話で、今でも思い出す度に何かしらの「熱」を生み出すエピソードでも構わない。昔の写真や日記、手帳などを久しぶりに開いてみるのも感情を呼び起こすきっかけとなる。
ときには思い出すだけで苦しさや、痛みが伴う話もあると思うが、それらもすべて、ネタにして成仏させよう。きっと同じような経験をした人が、あなたの話で救われるはずだ。
ほかにもテレビ、ネット、本など、色々な媒体から得た情報をネタメモに集めておこう。
手帳でもスマホでも構わないので、メモしたり音声で残したりする習慣を身に付けたい。
こうして日頃からこつこつと集めた「ネタ」がもととなって、そこから「エピソード」へと成長し、さらに「人前で話す」際には、そのエピソードが「テーマ」へと発展する。
ネタメモはあなたの大切な財産の元手のような存在となるわけだ。
そして、これらネタの財産が溜まっていくうちに、「せっかくメモした情報をどこかで伝えたい」という意識に変わってくる。
そうなれば、あとは発信する準備をして、自ら人前で話す機会を作るだけだ。あなたらしい角度で、あなたらしく伝えよう。
せっかくの財産、宝の持ち腐れはもったいない。
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