中国の女性はパワフルだ。これはけっして抽象的な表現ではない。具体的なデータの裏付けはいくらでもある。国際女性デーの週、中国のネットメディアは、中国女性の実力を紹介する記事をこぞって掲載した。「今日頭条」の記事を中心に見てみよう。中国女性の掛け値なしの実力とは、どんなものなのだろうか。(1元=16.85日本円)
女性と三線級都市の消費は“爆発”
ネット通販首位のアリババ、2位の京東(JD)は、それぞれ「女性消費趨勢報告」を発表している。女性の購買は、ネット通販の半分を占め、その消費ぶりを“爆発的”と表現している。さらに、ハイエンド商品の消費者が若年化していること、また外国ブランド奢侈品の購入頻度も、急速に高まっていると指摘する。
もう一つのポイントは、地方都市の青年層が、新しい消費ステージの幕を開けたことである。三線級以下都市の消費も“爆発的”としている。三線級都市とは、市区の非農業人口100万人以上、一定の消費能力と、優勢な産業を持つ都市である。対象は61都市もある。これら都市の若い女性たちが、消費爆発の中心となっていく。
こうしたデータから、直近の中国内地の女性経済規模は、2兆5000億元に達し、2019年には4兆5000億元になると予想されている。これからも高い伸びが続くという見通しだ。
高級ブランド買いも“爆発”
京東の報告によれば、過去3年間で京東の女性顧客は4倍に、売上は5倍になった。毎年倍増する“女性軍”の中心は80后(1980年代生まれ)で、全体の50%に近い。
2017年、グッチ、エスティー・ローダー、イヴ・サンローラン、ランコムなどの高級ブランドの口紅セットは、190%も売上を伸ばした。
また天猫(アリババのB2Cサイト)のデータによると、35万の女性消費者が年間少なくとも12の口紅セットを買っている。また5本以上の口紅を購入した女性は300万人を超えている。
2018年1月上旬、天猫にアルマーニ旗艦店がオープンしたとき、初日の売上は1700万元に達した。3月上旬ジバンシーの旗艦店がオープンしたとき、初日の売上はアルマーニを大幅に上回る2880万元だった。
こうした高級ブランドが販路を開拓した後には、若者たちの“大軍”が新たな購買層として控えている。高級ブランド顧客のうち90后(1990年代生まれ)のシェアはまだ11%だが、商品単価は32%伸びている。
女性起業家の63%は中国人
一方、中国女性たちは消費だけでなく、付加価値の創造でも爆発的だ。上海の民間研究機構、胡潤研究院の発表した「2018胡潤全球白手起家女富豪榜」は、徒手空拳で起業し、10億ドル以上の資産を築いた女性たちを、取り上げている。それによると2017年、全世界15ヵ国で102人の女性富豪が誕生していた。そのうち64人は中国人だった。昨年より8人増え、世界全体の63%を占めている。2位は米国人の18人だった。
中国人女性富豪の平均資産は155億元、平均年齢は58歳、世界平均より5歳若い。ランキングトップは、周群飛48歳、2003年深センでIT部品の「藍思科技」を創業した。総資産は615億元である。彼女を筆頭に1~4位まで中国人で独占している。
このように中国人女性は、消費でも、起業でも圧倒的なパワーを見せ付けている。大学卒業生でも男女比はまったく互角だ。そしてたいていの場合、女性は家庭でも最高権力者である。実業界では妻が社長、夫はその運転手というケースはざらにある。それでも家族、一族のきずなは強く、そのことで家庭がおかしくなることはない。しかし“西太后”と化す恐れは無いわけではない。ここは細心の注意が必要だ。
3月8日の国際女性デーは、女性への差別撤廃と地位向上を目指す日とされている。中国企業では、女性従業員を半日または全日休みとするところも多い。しかし中国ではこの日の意味合いは少し違う。女性の勝利宣言の日に見えてしまうのである。男性は儒教的秩序の中心価値“家名”を守るため、妥協を強いられる一方のようである。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)