「現金派に対してキャッシュレス派の方が約2.7倍の貯蓄を実現できる」という調査結果が発表された。JCBが実施したアンケート「キャッシュレスのデビットカード利用意向に関する実態調査2018」にて、全国の20歳から69歳までの1000人に対し、4月から始まる新年度の目標やキャッシュレス社会に対する考えを聞いたもの。
同調査によれば「自分は現金派」と自認する人が約4割を占めているようだが、なぜキャッシュレスはより多くの貯蓄を実現することができるのだろうか。
「キャッシュレス派の方が貯蓄できる」調査結果が発表
自身がキャッシュレス派か、現金派かを問い、2015年から2017年の3年間で貯蓄できた金額は以下のようになった。なお、キャッシュレス派は現金と比較して、クレジットカードやデビットカードを積極的に使う、と自認している人と定義する。
<2015年から2017年の3年間で貯蓄できた金額>キャッシュレス派/現金派
・2015年:47.0万円/35.5万円
・2016年:51.8万円/30.5万円
・2017年:87.6万円/32.5万円
この調査を見ると、年々キャッシュレス派の貯蓄金額が伸び、現金派との間で差が広がっていることがわかる。2017年にいたっては、2倍以上の差がついている。
調査によれば、キャッシュレス派が貯蓄しやすいメリットとして、全体の56%が500円前後の少額でもキャッシュレスを利用している点、ポイントが貯めやすいという点の2つが挙げられていた。また、キャッシュレス派の55%が、「自分はお金を貯めるのが得意だ」と自覚しているとのこと。
キャッシュレス派は貯め上手?
クレジットカードは無尽蔵にお金を使える錯覚に陥る点に注意が必要だ。一昔前までそれはネガティブ要素が強く、いわゆる「カード破産」として社会問題化した。ただ、使い方を間違えなければ、都度ATMでお金を引き出すことなく支出の管理ができ、かつ支払いが1カ月にまとめられているため、家計における支出の全体像の確認にも役立つ。
最近はKyashやPAYMOといったスマートフォンでやり取りをするサービスも存在感を増しているため、「キャッシュレス」という言葉の範囲が拡がっているように感じられる。キャッシュレスの先行国を指して、アメリカでは、中国ではという議論がされがちな日本だが、確実にキャッシュレスの裾野は広がっているといえるだろう。
その一方、このような議論をするときに貯蓄とキャッシュレス・現金への距離感がそもそも関係あるものなのか、という冷静な眼は常に必要だろう。
キャッシュレス派、現金派を問わずカードの乱用は恐いものであり、特に現役の学生などマネーリテラシーを学習中の人にとっては、時間をかけて管理能力を身につけなければいけないものといえるだろう。
「財布がないからクレジットカードを使おう」や、「いまはお金がないけれど(クレジットカードの支払い日は)給料日の後だから大丈夫」ではカード利用料の支払遅延の恐れがある。支払遅延をするとローンが組めなくなることも多いため、日常生活にも影響が現れる。
そう考えると、キャッシュレスのなかでもリアルタイムの現金残高に「限って」使えるデビットカードはおすすめだ。ただ、日本ではいまだデビットカードの利用率は上がらない。今回の調査では、デビットカードを使っている121名に優位性を訪ねている。「ATM手数料の節約になる、財布がかさばらない」という現金利用と比較したときのメリットから、「使い過ぎる心配がない」といったクレジットカードと比較したときのメリットまで幅広い。
まもなく新年度。周辺環境が変わるということは、財布のなかの身分証明書なども変化するタイミング。それぞれが、自分はキャッシュレス派なのか、現金派なのかを考えながら、貯蓄習慣の構築のために一歩を踏み出す、そんな「きっかけ」としてはいかがだろうか。
工藤 崇
FP-MYS代表取締役社長CEO。1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス開発中。資格学校勤務後不動産会社、建築会社を経て2005年FP事務所を設立。1年後の2016年7月に法人化。多数の執筆のほか、Fintech関連のセミナー講師実績を有する現役の独立型ファイナンシャルプランナー(FP)として活動中。2017年9月および12月に資金調達完了。本社は東京都港区虎ノ門。