先週は世界貿易戦争懸念から米国株式市場に大きく振り回される展開が続いたが、短期的には株安もドル安も底打ちの兆候が見えてきた。佐川元国税庁長官の国会喚問も新たな疑惑へと拡大するまでには至らなかった。

先週(3/26〜)のNYダウは週間で569ドル(2.4%)高と3週ぶりに上昇した。23日の安値2万3509ドルを下回らず、2月9日の2万3360ドルというVIXショック後の安値を下回ることもなく、チャート的には底打ちを示す2番底が入った格好となった。

ドル円も104円64銭と16年11月以来のトランプラリー後の安値を付けたが、その後28日には1円50銭を超える反発となり一時107円台まで大きく戻す展開となった。1日で1円50銭を超える円安は17年9月11日以来。朝鮮半島の地政学リスクによるリスクオンで北朝鮮の建国記念日を前にミサイル移動の動きがあったとき以来だ。当時も9月8日の107円33銭でドル円は一旦底を打ち、17年11月の114円73銭まで円安トレンドにかわるきっかけとなった。

こうしてみると3月末とイースターの連休を控え、CTAなどのヘッジファンドが米国株や日本株のショートを手仕舞い、円ショートのポジションを104円台でロスカットをした兆候が出たようだ。29日の米国市場では特に大きな材料もなくNYダウが254ドル高となり、日経平均は夜間の米国時間で270円高と大きく上げた。ヘッジファンドが米株の買い戻しとともにCMEで日経平均先物を買い戻した可能性が高いとみている。

新年度は年金資金の新規アロケーションや3月配当の再投資などで日本の機関投資家には買いが発生しやすい月だと言われている。外国人投資家も4月は日本株を17年連続で買い越しており、外国人買いのアノマリーが強い月だ。所得税が確定し、納税のために保有していたキャッシュが株に再投資されることがその理由だと言われている。現物・先物で11週連続で8.4兆円を売り越した外国人の売りが止まるだけでも日本株市場は安定化する可能性が高いだろう。

国内政局に関しては、安倍内閣の支持率急低下は問題だが、自民党の政党支持率がさほど下がっていない。世論は自民党以外に政権を任せられる政党がないことも感じている。そのあたりが政局に敏感な外国人投資家を安心させている要因だろう。

週間株式展望 

株式展望,外国人投資家
(画像=Tonkinphotography/ Shutterstock.com)

今週(4/2〜6)の日経平均は2万1100円から2万1900円のレンジを想定している。 先週(3/26〜30)の日経平均は反転、前週末比836円(4.1%)高の2万1454円で引けた。前の週の1058円安の約8割を戻している。

週間安値は26日の2万0347円。ドル円が東京市場でも104円台に入った事を嫌気して朝方は一時270円安まで下げていたが、ドル円が105円台に戻し、後場からは日銀のETF買いが入ったこともあり反発狙いでプラスに転じて引けた。

翌27日は3月の権利付き最終日、NYダウが669ドル高と大きく反発したことで日経平均も権利取りの動きとあわせ551円高となった。

28日は受渡しベースで新年度入り。NYダウが344ドル安と大きく反落しており特にIT系の大型銘柄の下げが厳しく、日本株も286円安と反落した。しかし配当落ち分が約160円。日経平均は配当落ちを考えると実質120円程度の下げであり、米株の下げに対する耐性もでてきた。日銀は週間2度目のETF買い735億円を執行した。

29日、30日は続騰。米国市場に底打ち機運が出ており、連日で引け前に先物主導で上げた。引け間際の買いは通常は欧州系ファンドの買いか国内機関投資家の買い決めであることが多い。日本株は配当落ち分が13兆円と過去最大だった。パッシブファンドはその資金を再投資するのが一般的だ。通常は配当が振り込まれるのは株主総会で承認されて6月くらいになるが、確定見込額を先物で手当てしておくことが多いという。そういった買いが入ったとも考えられる。

外国人が日本株を買うときは米国時間で日経平均の夜間取引が高くなる傾向があるが、先週はほとんど海外時間で先物が買われて東京市場でギャップアップして始まるパターンだった。外国人売りのフローに変化が出て来た可能性が高い。

売買代金も3兆円を上回るようになってきており、安値圏での売買代金の上昇も株式市場の底打ちを示唆している。チャート的にも30日時点で5日移動平均線である2万1145円を上回り、2万1512円の25日移動平均線直前まで来ている。反騰のためにはまずは25日移動平均線の奪回が最初にクリアするハードルだ。ここを明確に上回れば3月12日の戻り高値2万1971円が次のターゲットとなる。

先週は円が104円台に急騰したが、それでも日経平均は2万500円を瞬間で割った程度だった。2万500円どころはかなり強いサポートがはいったと考えて良さそうだ。

外国人投資家は3月23日の週も現物・先物合計で2600億円売り越した。11週連続で現物・先物合計で約8.4兆円売り越しとなる。ただ、先物は1942億円の買い越しと9週ぶりに買い越しに転じた。このあたりもトレンドの変換を感じさせる。

前述のとおり、4月は外国人投資家は17年連続で買い越している。15年は7555億円、16年は8604億円、昨年は1兆9953億円買い越した。09年、14年、16年、17年は1〜3月が売り越し基調でも買いに転じただけに期待が高まる。

週間為替展望

今週(4/2〜6)のドル円相場は106円から107円29銭のレンジを想定。ドル円は3月26日の海外市場で一時104円64銭と16年11月以来の円高をつけた。トランプラリー以降の円安を全て打ち消したことになる。貿易戦争懸念に加え、対外強硬派のボルトン元国連大使を安全保障問題担当の大統領補佐官に起用したことでリスクオフの円高が進んだ。ただ28日の一日1円50銭を超える円安で一旦反転した可能性が高いと見ている。

今週は2日の日銀短観、6日のパウエルFRB議長の経済見通し、米失業率が重要なイベント。日銀短観では円高がどの程度景況感に影響をあたえているかが焦点。大企業製造業のDI予想は25。米3月失業率は失業率4.0%、平均賃金0.3%増、NFP18.9万人増がコンセンサス。平均賃金の上昇次第では、米金利が動き、相場の攪乱要因となる可能性がある。

先週の(3/26〜30)の東京為替市場で円は反落、東京為替市場のインターバンク間の17時のドル円レートは 前週末比1円16銭円安の106円19銭だった。前週の円高1円34銭の大半を戻した。

26日には前週末の海外市場で104円台に入っていたため、104円85銭で始まり一時104円71銭と東京市場の週間の円の高値をつけた。ただ、日本株がプラスに転じたこともあり17時のドル円レートは105円07銭だった。

27日の東京為替市場では一時105円75銭までドルが戻した。米国と中国が貿易摩擦を避けるため水面下の交渉に入ったとの報道に反応した。ただ27、28日の東京市場でのドル円のレンジは30数銭で東京市場では様子見気分が強かった。

29日の東京市場では円安が進行し一時106円93銭を付け、15時のドル円は106円58銭と前日比1円10銭の円安だった。海外市場で中朝首脳会談の実施が伝わりサプライズとなりドル円は海外市場で1時3月13日以来となる107円台をつけた。貿易戦争懸念の低下と朝鮮半島デタントで米長期債利回りが一時2.73%と2月以来の低さとなったことからリスクオンとなった。

30日17時の東京為替市場ではドル円は106円19銭と前日比では39銭の円高反騰で終えた。NY市場がイースターで連休となることもあり、ポジションの手仕舞いもあったのだろうが、ここ数週間米国金利が上昇し、日米金利差が拡大するのに円高という教科書とは違う動きの局面が続いていたが、米金利が下がりドル安・円高になるという市場の反応だったことは市場に落ち着きが出始めたことを感じさせた。

【今週のイベント・経済指標】

1日:米韓合同軍事演習開始     

2日:日銀短観、新車販売台数、米 ISM製造業景況指数

3日:日銀マネタリーベース、3月短観物価見通し、ASEAN財務相・中央銀行総裁会議(シンガポール、〜6日) 、米新車販売

4日:石油製品価格調査、国連経済社会理事会パートナーシップ・フォーラム、露・トルコ・イラン首脳会談、南北首脳会談に関する実務会談、米 ADP雇用統計、ISM非製造業景況指数

5日:輸入車販売、車名別新車販売、米貿易収支、中 清明節休暇(〜7日)

6日:家計調査、勤労統計、景気動向指数、米雇用統計、パウエルFRB議長「経済見通し」

8日:京都府知事選投開票

(ZUU online 編集部)