中国家電業界2017年のデータが出揃った。大手6社はいずれも黒字を確保し、ここ数年の低迷を思えばおおむね堅調であった。経済サイト「中商情報網」が詳しい分析を加えている。2018年の中国の家電業界は、どこへ向かうのだろうか(1元=17.22日本円)。
売上と利益の動向
家電業界の2017年売上は18.7%増の1兆5100億元、利益は6.1%増の1169億元だった。過去4年間の売上は、
2013年……1兆2800億元
2014年……1兆4100億元
2015年……1兆4100億元
2016年……1兆2700億元
とほとんど横ばいだった。16年には10%ものマイナスを経験している。個人消費の伸びを大きく下回る低水準だ。17年は復活のきっかけになったのかも知れない。続いて大手6社の売上と利益の推移を見てみよう。
1位・美的/2位・海爾(ハイアール)/3位・格力/4位・TCL集団/5位・長虹/6位・海信 の順(単位は億元)
(売上)
年 /美的/海爾/格力/TCL/長虹/海信
2013年 1210/866/1186/853/589/285
2014年 1417/969/1378/1010/596/290
2015年 1384/898/ 977/1046/648/302
2016年 1590/1191/1083/1065/672/318
2017年 2401/1593/1483/1116/766/330
(利益)
年 /美的/海爾/格力/TCL/長虹/海信
2013年 53/42/109/21/5/16
2014年 105/53/142/32/0.6/14
2015年 127/43/126/26/-20/15
2016年 147/50/154/16/6/18
2017年 173/69/224/27/4/9
美的はここ2~3年で業界トップの地位を固めた。海爾(ハイアール)との2位争いを続ける格力は、利益額ではトップ。下位の2社はギリギリの経営を続けている。
美的、海爾、格力の“三強”に集中
トップ3に売上、利益とも集中する傾向は明らかである。以下その“三強”を見ていこう。
●美的 Midea 東芝買収分が押し上げ
美的は2016年6月に買収した東芝 <6502> の白物家電部門が売上を押し上げた。部門別の売上は、生活消費家電987億5000万元、構成比41%、空調935億5000万元、同39.6%、ロボット及び自動化システム270億4000億元、同11.2%の順だった。白物家電は海爾に次ぎ世界2位である。
また東芝と同じ2016年には、ドイツのロボット大手クーカの買収にも成功した。2018年3月には、クーカと共同で、遠隔操作の医療ロボットを発売した。
●海爾 Haier 過去最高を記録
海爾の2017年は、売上、利益とも史上最高を記録した。それも得意の白物家電のシェアを伸ばしての結果である。冷蔵庫のシェアでは、第2位ブランドとの差が2.9倍から3.1倍に拡大、同様に洗濯機は1.68倍から1.74倍に拡大した。また17万円(1万元)以上のハイエンド家電市場のシェアも9%上げている。
2018年3月、ソフトバンクグループ <9984> とロボット事業での提携を発表した。人型ロボット「Pepper」を中国市場に投入する予定という。
●格力 Gree 売上の8割は空調
格力の得意は空調である。空調の売上構成比は83%に及ぶ。中国の家庭用空調では23年連続トップ、業務用空調でも6年連続トップである。しかし中信証券の「中国中央空調市場格局」によると、格力15.4%、美的13.7%、ダイキン工業 <6367> 13.6%、と上位3社の国内シェアは拮抗している。決して安泰ではない。
これに反して生活家電は1.55%、AI機器は1.43%の構成比しかない。今後の家庭内のAI化に関しては、エネルギー、空気、水の3つを中心に関与していくという。
世界との戦い
最近、3位の格力はメディアを賑わせた。株主に対して、今後は髪の毛一本も渡さない、配当しない、と表明したからである。株価は暴落し、その後も乱高下を繰り返している。張本人は、中国を代表する女性企業家、董明珠董事長である。彼女は“富二代”のお嬢様ではない。1990年代から、格力の発展を支えた正真正銘の“女傑”だ。それだけによけい疑心暗鬼を巻き起こしているようだ。
中国業界は、バランスの取れた「美的」白物に強い「海爾」空調に強い「格力」の“三強”に集約されつつある。最も専門性と利益率の高い格力が、それゆえにこそ最も危機感を持っているのかもしれない。
今後の中国三強は、AI、IoTのステージで世界と戦うことになる。そして、いつまでも“三強”でいられる保証はない。董明珠を始め、当事者たちはよくわかっているのかも知れない。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)