中国の6月は卒業と入試の季節である。夏休みをはさみ9月から新年度が始まる。受験生以外にも、いろいろと将来の行く末に頭をめぐらせる季節だ。そんな時節柄の5月末「第七回中国MBA/EMBA招生経験文享論壇」が開催され、MBAに関するニュースも相次いだ。「MBA中国網」「捜狐」などのサイトが報じている。経費は上昇、難度はアップし、人気は高どまりしているという。実態はどうなっているのだろうか。
上位教育機関に人気集中
上海交通大学経済管理学院MBAセンターによれば、MBA学位を目指す潮流は、少し緩慢になっているという。MBA取得後の価値、将来のビジョンに資するかどうか、学生による選別が厳しくなっている。つまり教育機関側のブランド価値がますます重要になっている。特色を打ち出す必要があるのだ。
人気上位の教育機関は、それが実践できているようだ。それは学費の高騰が物語っている。2008年、上海復旦大学MBAコースの学費は10万元(170万円)だった。それが2018年には33.98万元(580万円)と3.4倍に跳ね上がっている。復旦大は、高額学費でも学生を集めるブランド力の高い機関といえよう。以下学費トップ10を紹介していこう。
学費ランキングトップ10
10位 北京大学光華管理学院と北京大学匯豊商学院
中文コース(非全日制社会人向け)32万8000元。英文コース(全日制)25万8000元。北京大学100年のよき伝統を引き継ぐ。
9位 復旦大学(上海)
中文コース(非全日制)33万9800元/復旦ーMITコース(全日制)26万9800元。中国最初のMBAコース
8位 北京大学国家発展研究院
北京大学ーロンドンMBAコース(全日制)31万元/北京大学ーVlerick MBAコース(全日制)26万元/北京大学ーVlerick MBAコース(非全日制)体育健康専業 36万8000元。北京で初めての外国機関との提携MBAコース
7位 同済大学(上海)
総合MBAコース(非全日制)27万8000元。/同済-マンチェスターMBA(非全日制)36万8000元。1993年、初の国務院認定MBAコースとなる。
6位 清華大学-香港中文大学
清華大-香港中文FMBAコース 39万8000元。清華大学深セン研究生院と香港中文大学の提携コース。香港中文大商学院の研究水準は、世界最先端。
5位 上海交通大学高級金融学院
FMABコース(全日制)34万8000元/FMBAコース(非全日制)43万8000元。中国初の金融専業MBAコース。マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院を参考にした。
4位 香港大学
MBAコース(全日制)44万9000元。 MBAコース(非全日制)32万2000元。エコノミスト誌の世界MBAランキング中、8年連続アジア1位。
3位 中欧国際工商学院(上海)
金融MBAコース 51万8000元/MBAコース(全日制)40万8000元。中国政府とEUの共同により設立。
2位 長江商学院(北京・上海・深セン)
金融MBAコース 52万8000元/英文MBAコース 40万9000元。香港の李嘉誠基金を元に創立。校友にアリババの馬雲など大物多い。スキャンダルでも有名。
1位 清華大学五道口金融学院
金融MBAコース(非全日制)60万元。元は中国人民銀行(中央銀行)研究生部。米国コーネル大学ジョンソン経営大学院と提携。月平均4日の短期集中方式。授業内容は清華大学とコーネル大学が等分に責任を負う。
中国のMBAは曲がり角?
トップ10の本部は、北京、上海、香港に集中し、一部に深セン分校があるパターンだ。結局、エリートになるには、巨大都市でなければ話にならない。
非全日制コースとは、一般に各企業や機関のエースたちが、さらなる箔付け、人脈作りを行うためのものである。トップ3へ通うには850万円以上かかり、大きな負担をかける。18カ月の短期集中コースが一般的で、試験は申請により免除され、“資質”による入学が可能だ。
全日制コースは、試験に合格しなければならない。英語、数学、国語読解、論文などが課される。難易度は上がっているという。
そして、いずれのコースも若年化しているのが特徴という。出来上がったエリートたちの集うサロン的な意味合いは薄れ、エリート界への登竜門化が進んでいる。その価値は、学費とともに上昇している。現代のハイテク時代、MBAの“金の含有量”は高まる一方、と表現しているメディアもある。
ただし金持ちと大都市のアドバンテージは計り知れないほど大きい。富裕層だけのパスポートと化す危険性をはらんでいる。中国のMBAは、さまざまな意味で曲がり角に来ていると見てよさそうである。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)