共働き世代を中心に「職住近接」の傾向はますます強まっており、「住みたい街ランキング」でも利便性の高い地域が上位に選ばれた。こうしたトレンドは首都圏鉄道会社の経営やトランクルームなど、さまざまなビジネスに影響を与えている。
「住みたい街」トップの魅力は利便性
リクルート住まいカンパニーがリリースした「SUUMO住みたい街ランキング2018関東版」で、昨年3位の「横浜」が1位に躍り出た。東京以外の街がトップに立つのは初めてだ。
横浜は昔からロケ地として重用されてきた。オールドファンに根強い人気を誇る「あぶない刑事」では、海龍(ドラゴンボート)乗り場、戦後の雰囲気が残るバーCJなどのコアな名所が、新垣結衣主演の大ヒットドラマ「逃げるは恥だが逃げるは恥だが役に立つ」では、みなとみらい・赤レンガ倉庫・元町商店街といった中心部の名所が登場している。
駅周辺のベイクォーター・そごう・ジョイナスといった充実した商業施設、公園・緑地などの整備が進む横浜港一帯も魅力だが、ランキング1位に選ばれたダントツの理由は「利便性」だ。
横浜駅にはみなとみらい線、JR東海道線・横須賀線・京浜東北線・相鉄線・京浜急行線などが乗り入れる一大ターミナルだ。オフィスが立ち並ぶ丸の内までは30分かからずに通勤できる。
一方、同じ横浜市でも利便性に劣る地域は分が悪い。今でもブランドイメージの強い横浜市北部だが、住みたい自治体ランキングで青葉区は2016年の19位から24位へ、港北区は18位から27位にランクを落とした。
職住近接は鉄道会社の業績を直撃
首都圏を営業拠点とする鉄道会社にとっては、より問題が切実だ。私鉄16社とも過去10年間で利用乗降客が伸びたおかげで定期券収入は増加したが、一人当たりの定期券単価は落ち込み、足を引っ張っている。
都心部に近い駅、例えば代々木上原・船橋などは乗降客を伸ばした一方で、40キロ離れた浦賀駅(京急本線)、高坂駅(東武東上線)などは大きく落ち込んだ。かつての地価高騰で郊外にドーナツ状に膨らんできた居住エリアが、職住近接を求める共働き世帯を中心にドーナツの中心に移り、通勤距離が短くなった影響だ。
姿を変える「港町十三番地」
大師線沿線はもともと京浜工業地帯の一角として発展したエリアであり、道路にも「鋼管通り」「セメント通り」といった地名が残る。
昭和7年の開設時「コロムビア前駅」と命名され、その後現在の名前に改称された京急大師線港町駅(川崎市川崎区)周辺も、港湾・工場エリアとして発展してきた。駅の改札には美空ひばりの特大パネルがやたら目立つ(ヒット曲「港町13番地」は、この街を唄ったといわれる)。
その港町十三番地が、ここ数年で姿を大きく変えた。旧駅名の由来であるコロムビア工場跡には、京急が1400戸のマンションを建設。「品川まで15分」という利便性が着目されたのだ。駅周辺にはベビーカーを押す家族連れがぐんと増えた。駅の乗降客も、10年で8割の増加だ。
家財がマンションに入らない
狭小の都心マンションへの引越しで、自宅に入りきらない節句の人形や大型のアウトドア用品などを預けたい世帯も多い。こうしたニーズをターゲットに、トランクルームの需要は年10%近い勢いで伸びている。人気は1〜2畳タイプで、料金は月1.8万円前後だ。
4月27日、東急不動産と鹿島は竹芝エリアの再開発計画を発表。業務棟(オフィス)と住宅棟(マンション)を一体開発をめざし、通勤時間短縮により一家団欒・育児・趣味を大切にするライフスタイルをサポートする。
共働きである程度経済的余裕がある世帯増える中、こうした職住近接の住まいを求める傾向は今後も強まりそうだ。(ZUU online 編集部)