バンダイナムコHD <7832> が2019年3月期について、減益の予想決算を開示したにもかかわらず、決算発表を機に株価の上昇が続き、上場来最高値を更新している。

ゲームのヒットの有無に大きく左右される同社の決算だが、2019年3月期は足元の状況から見てかなり保守的な予想の可能性があり、材料視されているようだ。

前期の反動で2019年3月期は減益を予想

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(画像=PIXTA)

国内玩具及びゲーム大手のバンダイナムコHDは2018年3月期について、営業利益で対前年同期比▲10%減の予想をしていたが、最終的には+19%の増益を果たした。欧米での家庭用ゲームの販売の好調及び一部サービスの開発費等が翌期にずれ込んだことが背景だ。

しかしながらその反動で、2019年3月期の営業利益は前期比で▲17%の減益を予想している。

同社の業績は、ヒット商品の有無で業績が大きく左右される。2018年3月期は「ドラゴンボールファイターズ」が会社予想の2倍以上の販売(209万本→508万本)となり、同社の増益を支えた。

ただし2019年3月期計画は予想外のヒットは織り込んでおらず、ゲーム事業が所属する「ネットワークエンターテインメント事業」はセグメント利益で前期比▲150億円(501億円→350億円)の減益を見込んでいる。他事業は概ね前期並みの利益を予想の中、同事業の減益により会社全体の利益が下振れすることになっている。

減益予想の発表後に伸びる株価

前期の反動で減益の予想を発表したバンダイナムコHDであるが、減益の予想の一方で同社の株価は決算発表(5月9日)の翌日から窓を開けて上昇を開始し、上場来高値の更新を続けている。

2018年に入り3300~3800円のゾーンで推移していた株価は、決算発表の翌日には4000円台に突入した。上昇は1日では止まらず、その後も上昇が続き5月末には4600円台にまで上昇した。6月に入り上昇は一服しているが、4600円付近の高値水準を維持している。

既に予想PER約23倍まで買われており、東証1部全銘柄の予想PERが約15倍の中では、買われ過ぎの水準に到達した。

減益の予想決算を発表後に株価が上昇する、珍しい現象がバンダイナムコHD株では出現している。

2019年3月期の計画は保守的過ぎる可能性が

減益予想に対し株価が上昇しているバンダイナムコHDについて、過去の決算を確認してみよう。

2015年3月期 売上高5655億円、営業利益563億円
2016年3月期 売上高5755億円、営業利益496億円
2017年3月期 売上高6200億円、営業利益632億円
2018年3月期 売上高6783億円、営業利益750億円
2019年3月期(予想) 売上高6500億円、営業利益600億円

2015年3月期決算からの推移を見ると、2017年3月期を境に、売上高は6000億円、営業利益は600億円に到達し、売上高・営業利益ともに同社は一段上のステージに入ったことが分かる。

そして2018年3月期は過去数字との比較で、同社自身も予想以上の伸びと感じている可能性は高い。

そして2019年3月期は前期の反動が予想されるとはいえ、営業利益600億円は2017年3月期の632億円に比べても減益であり、計画が保守的過ぎる可能性は否定できない。

VR銘柄としての一面を有するバンダイナムコHD

ゲームと玩具の会社として知られるバンダイナムコHDであるが、VRエンターテインメント施設「VR ZONE SHINJUKU」を運営している。

身近にVR体験ができるとして話題の「VR ZONE SHINJUKU」だが、今秋には大阪に「VR ZONE OSAKA」をオープンの予定である。

「VR ZONE SHINJUKU」自体の損益は開示はなされていないが、訪日外国人客の来店も多く来場者が50万人を突破している。インバウンド消費に湧き、訪日観光客にも観覧車があるビルとして人気スポットである梅田HEP FIVEにオープン予定の「VR ZONE OSAKA」は、新宿店以上の話題店となる可能性がある。

VRは話題の技術ではあるものの、眼に見える形でビジネス展開を行う企業はまだ少ない。バンダイナムコHDは「VR ZONE」の運営により、国内では数少ないVR銘柄としての一面を有しており、株価に対し前向きな影響を与えている可能性がある。

ゲームのヒットの有無に業績は左右される状態が続く

バンダイナムコHDに限らないが、ゲーム事業を手掛ける企業はゲームのヒットの有無に業績が大きく左右される。バンダイナムコHDは手堅く継続的に収益が上がるIP(知的財産権)重視の経営を、当期からスタートした中期事業計画に盛り込んでいる。ただし2018年3月期の業績上振れに見るように、現状ではゲームのヒットに業績が左右される状態だ。

減益の見込みにも関わらず株価が上昇しているバンダイナムコHDに対し、投資家は今後の業績に期待していると言えよう。

株式市場の期待通り、2018年3月期同様予想以上の業績を上げることができるのか、バンダイナムコHDの今後の業績に注目したい。(ZUU online 編集部)