「起業する上で若さが重要だ」このように言われることがある。だが、筆者は若さなどより、圧倒的に重要な起業成功の条件があると考えている。それは「継続できる環境」だ。

起業,継続
(画像=Sergey Nivens/Shutterstock.com)

若いから成功するわけではない

起業は若いほうが有利だとか、40代前後くらいの成功事例が多いというのは事実かもしれない。しかし、筆者は「若いから成功している」とは思わない。そうではなく「成功する人は若い頃に起業している」というのが正しい理解だと思っている。

起業して成功する人というのは、その有り余るバイタリティを持てましている。そうした人は行動力に優れているので「起業したいけどもう少し後にしよう」などとは考えない。起業家とはやりたくなったら即行動するタイプの人間なのだ。そうした行動力があるからこそ、起業した後も果敢にリスクを取っていくのでビジネスもうまくいくと筆者は考えている。

起業で成功する人はやめない人

「いつか起業したい」という人は大抵起業しない。なぜかというと、そういうことを言っている時点で、起業を先送りにしているからだ。本当の起業家とは、口でいった瞬間に行動をしているような人たちなので「起業したい」ではなく「起業したい、だからもうした」という事後報告になることが多いのだ。

起業して成功する人とは、挑戦を辞めない人たちのことである。一部の天才や、ものすごい幸運に恵まれない限りは、起業してビジネスが軌道に乗るまでに年単位で時間がかかる。その理由は「プロダクトの認知」「顧客の信用醸成」という2つで語ることができる。

起業して売っているその商品は誰も知らない

まずはそもそも認知されるにはとても時間がかかるということだ。iPhoneが発売されたのは2007年だが、日本で大きな騒ぎになり、今のようにみんながスマホをいじるようになったのはそれから何年も何年も先のことである。iPhoneほどイノベーティブで優れたプロダクトで、広告宣伝費をかけても認知されるにはかなりの年数を要するのだ。起業したばかりで広告宣伝費をかけられない人間のビジネスなど、誰も知らないのである。

顧客の信用醸成には時間がかかる

それから顧客の信用を得ようとすると、更に時間がかかる。リピート率が高いビジネスは売上が安定する。逆に常に新規顧客獲得し続けないと成り立たないビジネスはかなり不安定である。しかし、このリピートというのはいい商品だから自然発生するものなどではない。

なぜかというと顧客は忘れてしまうからだ。特にネットショップなどでは、店員の顔を見ながらやり取りをしたわけではないので、一年もすれば買った商品をどこのお店で購入したかなんて簡単に忘れてしまう。メルマガに登録してもらい、キャンペーンを告知するなど、何度も繰り返しコミュニケーションを取り続けなければ、お客さんはリピート買いしない。

これはどんなビジネスでも同じことが言える。そして消耗品など購入頻度の高い商品を取り扱っている場合でない限り、すぐにはリピート買いの必要性がない。顧客がリピート買いをするサイクルを作り出し、その数を増やすことでようやく経営は安定するのだから、やはりここにもかなりの年数を要するのである。

うまくいくまでやめなければ100%成功できる

ほとんどは起業してうまくいかないとすぐに諦めてしまう。上述した通り認知と信用には時間がかかるという理由もあるし、そもそも資金が枯渇してしまうと挑戦したくでも出来なくなってしまうからだ。どれだけ貯金があっても、お金が減る一方という状況は人の判断を狂わせてしまう。どれだけ気丈な人でも、精神的に揺さぶられ続けて冷静な判断をすることは難しくなるのだ。

筆者は起業前につけていたコンサルタントから「起業して即成果は出ない。年単位で取り組むつもりで、軌道に乗るまで会社を辞めず、週末起業で挑戦やりましょう」と教わった。最初の頃はなかなか思った成果が出ず、かなり苦しい思いをした。だが会社勤務を続けていたので、お金がなくなっていく恐怖を一切味わうことはなく、経済的理由で挑戦をしたくても諦めざるを得ないということはなかった。粘り強く挑戦したことで、3年目に大きな成果が出て、務めていた会社を退職した。

うまくいった理由を挙げるとすれば、挑戦を継続できる環境だったからである。若いほど吸収率も高く、体力もあって有利に思える。確かにそれは間違いないだろう。だが、それは起業成功の決定的な条件ではない。それよりも諦めずに、年単位で挑戦し続けられる環境づくりこそが起業成功の最大のポイントだと考えている。(黒坂岳央、高級フルーツギフトショップ「水菓子肥後庵」代表)