中小企業オーナーの皆さんの中には、年金暮らしのご両親がいらっしゃる方も多いのではないでしょうか。所得控除のうちの一つである「扶養控除」は、扶養している子どもに対して適用される制度と思われがちです。しかし、条件によっては、年金暮らしの両親に対しても適用できる可能性があります。本稿では、扶養控除の適用条件について解説します。

「扶養控除」は、扶養親族のうち16歳以上のものが該当する

couple
(写真=interstid/Shutterstock.com)

収入が多くても、所得が低ければ課税額は下がります。そして、扶養控除は親族の中に所得税法上の対象となる人物がいる場合、所得から控除を受けることができます。この控除対象となる親族とは、一部例外を除き、その年の12月31日の時点で年齢が16歳以上であり、かつ、下記の4点すべてに該当する人を指します。

・扶養親族の条件

①配偶者を除いた親族
扶養控除の対象者が配偶者を除いた親族である必要があります。本稿の場合、年金暮らしの両親を対象にしているため、一般的にはこちらが該当するでしょう。なお、諸般の事情によって都道府県知事から養育を委託された、いわゆる里子や、市町村長から擁護を委託された老人も扶養親族の範疇に含まれます。

②生計を一にしている
扶養親族は納税者と生計を一にしている必要があります。「生計を一にする」というのは、漠然と一緒に生活しているイメージが湧きやすいものですが、必ずしもそうである必要はありません。両親のために仕送りをしていても、生計を一にするともいえるためです。

③所得金額が38万円以下
後述にて詳しく解説しますが、1年間における所得金額の合計が38万円以下である必要があります。所得金額とは、入ってきたお金から経費を引いた金額のことです。そして、基礎控除の金額が38万円ですので、所得金額が38万円以下であれば、課税所得が0円になるという道理です。なお、給与のみの場合の合計所得金額は103万円以下となります。こちらも基礎控除38万円+給与所得控除65万円で控除額の合計が103万円となるためです。

④「専従者」であるか否か
「専従者」である場合、扶養控除を受けることができなくなります。白色申告であれば事業専従者は扶養控除を受けられなくなります。また青色申告であれば、専従者としてその年の間に給与を受けていると扶養控除の対象から外れてしまいます。

逆に青色申告の専従者であっても、その年の間に給与を受けていなければ扶養控除の範疇に含まれます。これは青色申告の場合、専従者への給与が経費として認められるためです。

・扶養親族の条件は細かい

「扶養親族」とは、「配偶者以外の親族」で、「同一生計のもののうち、合計所得金額が38万円以下」の人のことをいいます。年金は「雑所得」の区分に該当するため、実際の収入金額が「合計所得金額が38万以下」に該当するための収入額は、給与収入の103万円以下ではありません。

年間の合計所得金額が38万円以下になる年金額とは?

扶養対象となる親族が年金を受けていた場合、受給額についても考える必要が出てきます。公的年金は雑所得に含まれます。この雑所得は年金の収入額から公的年金等控除額を引いて計算します。公的年金等控除額は、年齢や公的年金の収入額によって控除額が異なります。以下に、控除が受けられる年金収入額を記載します。

・65歳未満の場合
公的年金等の収入金額が130万円未満の場合、公的年金等控除額は一律70万円です。したがって、年金収入が38万円+70万円=108万円以下であれば、扶養控除が適用できます。

・65歳以上の場合
公的年金等の収入金額が330万円未満の場合、公的年金等控除額は一律120万円です。したがって、年金収入が38万円+120万円=158万円以下であれば、扶養控除が適用できます。

以上をまとめると、年金収入が「65歳未満であれば108万円以下」、「65歳以上であれば、158万円以下」であれば、扶養控除の適用を検討できます。

控除額は、年齢によって異なる。年金暮らしの両親は?

では、具体的な控除額を見てみましょう。控除額は、ご両親の年齢や同居をしているかどうかによって異なります。

・38万円の場合(一般の控除対象扶養親族)
 一般的な扶養控除の控除額は、「控除対象扶養親族」1人につき、38万円です。

・48万円の場合(老人扶養親族)
 控除親族のうち、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人は、1人につき48万円が適用されます。

・58万円の場合(同居老人等)
 前述の老人扶養親族のうち、①本人または配偶者の直系尊属(自分もしくは配偶者の父母)で、②本人または配偶者のいずれかとの同居をしている人は58万円が適用されます。

「同一生計」は、同居である必要はない

扶養控除の要件は「同一生計のもののうち、合計所得金額が38万円以下」ですので、両親と別居をしていても適用になります。しかし、「同一生計」の条件はどのように満たせばよいのでしょうか?

「同一生計かどうか」は、両親に常に生活費、療養費等の送金が行われていることが基準の一つとなります。遠方の大学に通うお子さんへの仕送りの例が分かりやすいかもしれません。お子さんは別居していますが、生活費の仕送りを受けているので「同一生計」に該当します。

また、扶養親族であることを証明するため、仕送りをしていることを記録に残す必要があります。銀行振込や現金書留により送金している事実を、振込票や書留の写しなどで保管しておきましょう。

別居していて年金暮らしの両親も、扶養控除を適用できる場合があることについて、ご理解を頂けましたでしょうか。制度をうまく活用し、節税に役立てましょう。(提供:みらい経営者 ONLINE

【オススメ記事 みらい経営者 ONLINE】
事業承継、どのアドバイザーを選べばいい?
事例でわかる!事業承継で生じる問題とその対応策
出向社員の給与や社会保険はどちらが負担?
「ネット炎上」に対する、人事労務の対策方法
どうする?海外事業で失敗しないために