シンカー:日銀は前代未聞の金融緩和政策を遂行しており、長期金利の動きに対してどのように反応してくるのかを予想することは困難である。分かっていることは二つである。一つ目は、長期金利の0%程度の誘導目標に対して20bp程度の変動を許容することである。二つ目は、あくまでグローバルな金利の上昇や日本の物価上昇を含めたファンダメンタルズの好転についていく形のみ許容し、緩和の早期出口の思惑などでのテクニカルな上昇は抑制するということだ。過去のデータがないため、日銀の長期金利に対する反応関数を推測することは困難であるが、この二つ目の点と、現状の水準は許容する上限に近いということを示している可能性があることをヒントに、できるだけ単純な一つの例を考えてみたい。

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

日銀は前代未聞の金融緩和政策を遂行しており、長期金利の動きに対してどのように反応してくるのかを予想することは困難である。

分かっていることは二つである。

一つ目は、長期金利の0%程度の誘導目標に対して20bp程度の変動を許容することである。

二つ目は、あくまでグローバルな金利の上昇や日本の物価上昇を含めたファンダメンタルズの好転についていく形のみ許容し、緩和の早期出口の思惑などでのテクニカルな上昇は抑制するということだ。

過去のデータがないため、日銀の長期金利に対する反応関数を推測することは困難であるが、この二つ目の点と、8月2日に日銀が買い入れオペを行ったことが現状の水準は許容する上限に近いということを示している可能性があることをヒントに、できるだけ単純な一つの例を考えてみたい。

グローバルな金利の代理変数として米国の長期金利(US、自然対数値)、日本のファンダメンタルズを反映する代理変数として10-20年金利スプレッド(Spread)を使う。

日銀のこれらの要因に対する反応係数をAとし、許容する長期金利の上限をXとする。

X=A(LN(US)+Spread)-1

現状の3%程度の米国の長期金利と52.5bp程度の10-20年金利スプレッドを前提とした、長期金利の上限は0.12%とすると、Aは1.12となる。

米国の長期金利と10-20年金利スプレッドを前提に、日銀が許容する長期金利の上限のマトリクスを作ることができる。

3%程度の米国の長期金利を一定として、10-20年金利スプレッドが60bpに拡大すれば、日銀が許容する長期金利の上限は0.2%に達する。

52.5bp程度の10-20年金利スプレッドを一定として、米国の長期金利が3.5%まで上昇すれば、上限は0.2%に達する。

間をとると、3.2%程度の米国の長期金利と57.5bpの10-20年金利スプレッドで、上限は0.2%に達する。

この反応関数は一例であり、今後の実際の日銀の長期金利に対する反応や、その他の要因の変化を織り込みながら、修正を加えなければならないだろう。

図)日銀が許容する長期金利の上限のマトリクスの一例

日銀が許容する長期金利の上限のマトリクスの一例
(画像=ブルームバーグ、SG)

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司