経済産業省は6月、「オープンイノベーション白書 第二版」をまとめた。世界中に広がるリソースを活用するオープンイノベーションは、もはや企業にとって必須の戦略となっている。そもそもオープンイノベーションとはどういうものか、ビジネスマンとして知っておきたい。

外部の技術やノウハウを融合しイノベーションを起こす取り組み

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(写真=ESB Professional/Shutterstock.com)

「オープンイノベーション」という言葉を聞くことも多くなってきた。オープンなイノベーション……というとなんとなく雰囲気はわかるが、実際には何を意味しているのかわからない。そんな人もいるかもしれない。政府も進めるオープンイノベーションとは何だろうか。

そもそも「イノベーション」とは、新しいものを生産することや、既存のものを新しいやり方で生産することにより、新たな社会的価値を創造することを指す。かつては、イノベーション=技術革新という認識が一般的だったが、実際には新しい技術だけに起因するものではない。異なる分野の融合や、経営の革新からもイノベーションは起こる。

かつて、イノベーションは、大企業が多額の研究開発費を投じて、自社内の研究所で起こすものが一般的だった。その後、米国では、大学とベンチャー企業が中心となってイノベーションを起こす時代にシフトした。

そして現代、ICTの発展や顧客ニーズの多様化、グローバル化の進展、製品ライフサイクルの短期化といった環境の変化により、企業間競争は激化し、経営環境はますます厳しくなっている。そのような中、企業が自社の資源だけに頼り、自前でイノベーションを起こすやり方には限界が出てきた。

そこで、社内だけでなく社外の技術やノウハウ、アイディアを活用してイノベーションを実現しようという考え方が台頭してきた。それが「オープンイノベーション」である。

オープンイノベーションの具体的な例

たとえば、ユニクロと東レは戦略的パートナーシップを結び、両社の技術やノウハウを生かし、素材から商品(衣服)に至るまでの企画・開発・生産・物流を一体化した共同開発・生産体制を構築した。これにより効率・スピード・付加価値を向上させるだけでなく、「ヒートテック」をはじめとする画期的な製品を生み出した。

上記は大企業の例だが、オープンイノベーションは大企業だけのものではない。たとえば、町場の中小企業であっても、世界のトップシェアを占めるような高度な技術を有する企業は多い。そういった中小企業と大企業が手を組むことで、イノベーションが生まれる可能性がある。

大企業、中小・ベンチャー企業、大学・研究機関、あるいは個人など、それぞれが高度な専門性や提案力を持ち寄って自らのリソースを活用することが、オープンイノベーションの時代には求められているのである。今後、国内外を問わず、オープンイノベーションに取り組む企業はますます増えていくだろう。

オープンイノベーションへの政府の取り組みは?

日本政府もこのようなオープンイノベーションの推進に力を入れている。具体的には、オープンイノベーション推進にかかる課題と具体的取り組みを、「アイディア創出・事業構想」「技術開発」「社会実装・市場獲得」の3ジャンルと、各累計における「組織のあり方の見直し」「人材・技術の流動化促進」「環境整備」といった3層の施策スコープに分け、さまざまな施策を打ち出している。

たとえば、「技術開発面」の「人材・技術の流動化促進」の取り組みとして、大学と産総研等の橋渡し研究機関が連携することで、技術シーズを実用化につなげることを狙った新たな拠点「オープンイノベーションアリーナ(OIA)」の整備に取り組み、2020年度までに10拠点の設置を目指している。

こうした動きに追随し、企業がオープンイノベーションを後押しする取り組みも盛んになってきた。たとえば、三井不動産は2017年にコワーキングスペース「31VENTURES Clipニホンバシ」をオープン。オープンイノベーションに必要なコミュニティづくりの場を提供している。

これに限らず、街中にはコワーキングスペースやシェアオフィス、インキュベーション施設など、オープンイノベーションの推進を目的とした場所が増えてきた。今後のビジネスにおけるキーワードとしてますます重要になるオープンイノベーション。自社のビジネス活動にどのように採り入れていくか、考えてみてはいかがだろうか。(提供:百計ONLINE


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