近年、世界経済において存在感を増している中国企業。テクノロジーの発展がさまざまなイノベーションを呼び、世界規模の大企業となる中国スタートアップも増えてきている。今回は、中国のスタートアップ企業の中でも「ユニコーン」と呼ばれる注目企業を見ていこう。
中国のユニコーン、Eコマース関連が最多
中国の科学技術省にあたる中国科学技術部によると、2017年時点のユニコーン企業は164社。Eコマースが33社で最も多く、フィンテックが21社で2位、その他ヘルスケア、エンターテイメント、物流、交通分野が目立つ。なお、ユニコーン企業の定義は以下の通りだ。
(1)中国内で登録し、法人資格を有する企業
(2)設立から 10 年未満(2006 年以降に設立された企業)
(3)プライベートエクイティファンドからの投資を受けており、上場していない
(4)(1)(2)(3)の条件を満たし、かつ企業評価額が 10 億米ドル以上
※(1)(2)(3)の条件を満たし、かつ企業評価額が 100 億米ドル以上の企業は「スーパーユニコーン企業」と呼ばれる
アリババ系企業が14社、40%を占める
世界的大企業に発展した中国発のスタートアップの代表格は、ジャック・マー(馬雲)氏率いる阿里巴巴集団(アリババグループ)だ。ユニコーン企業の中でも、このアリババ系列の企業は14 社、評価額で計 1,988 億 5,000万米ドルと全体の40%を占める。
アリババ系列のユニコーン企業には、総合金融サービスの螞蟻金服(Ant Financial、アント・ファイナンシャル)やオンライン映画チケット販売の淘票票(Taopiaopiao)、アリババグループの電子商取引網を支える物流の菜鳥網絡(Cainiao)、クラウドアプリケーションの阿里雲(Aliyun)などがある。中でも、オンライン決済プラットフォーム「Alipay(アリペイ)」を擁するアント・ファイナンシャルは別格だ。
スマホの急速な普及と消費モデルの変化を受けて、すでにアリペイは中国経済になくてはならない存在だ。日本でも、中国人観光客の増加でアリペイに対応する小売店舗が拡大している。こうした背景から、同社の企業評価額は750億米ドルと突出しているのだ。また、企業系列ベースでの第2位は、IT大手の騰訊(テンセント)系の企業で、16 社(合計評価額 1,320 億米ドル)となっている。
低価格スマホで世界を席巻するシャオミ、ウーバーを買収したディディ
企業ごとの評価額ベースで見ると、アント・ファイナンシャルに次ぐスーパーユニコーン企業は、電子機器製造の「小米科技(Shaomi、シャオミ)」。日本ではあまりなじみがないかもしれないが、スマートフォン製造会社として創業された同社が手掛けるスマホは、低価格ながら高スペックなのが特徴で、新興国を中心に世界市場を席巻している。
近年では、スマートテレビや炊飯器などの家電や、電動バイクなども手掛け、総合電機メーカーに発展している。なお、シャオミの炊飯器はかつて三洋電機で大ヒット商品を生み出した日本人技術者が関与している。4位の滴滴快的(Didi kuaidi、現在は滴滴出行)は、ライドシェアサービスを提供する企業だ。タクシーの配車サービスのほか、米「ウーバー」と同様の自家用車を使った配車サービス、自転車シェアサービスなども提供している。そのディディは、後にウーバーの中国事業を買収している。
北京市、上海市、杭州市、深圳市で全体の88%
地域別にユニコーン企業を見ると、北京市、上海市、杭州市、深圳市の 4 都市だけで 115 社(88%)を占める。最多は北京市で 65 社ある。中国の最高学府、北京大学と清華大学の地元だけに大学や研究機関が多く、新たなビジネスモデルやテクノロジーが生み出しやすい環境がプラスとなっているようだ。次いで、経済の中心地・上海市の企業数は 26 社、「世界の工場」として製造業サプライチェーンが形成されてきた深圳市と、アリババグループの本拠である杭州市がそれぞれ12 社となっている。
このような背景には、中国政府による産業の高度化や新規分野の創出に向けた、スタートアップに対する支援がある。ユニコーン企業によるイノベーションが今後の中国経済をどう牽引していくのか、ますます注目が集まるだろう。(提供:百計ONLINE)
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