遺族の方が亡くなり、相続が発生した場合には、まず「財産目録」の作成から着手することをおすすめします。被相続人の遺産を「誰が」「何を」「どの割合」で相続するかを決定する遺産分割協議を行う際も遺産の一覧を把握しないことには進みません。そもそも財産目録とは、その時点における被相続人の所有財産を網羅した“一覧表”のことです。財産目録を作成することによって、被相続人の財産状況が明らかになり、かつ、相続人が支払うべき相続税の額をシミュレーションできるのです。

残念ながら、相続案件で遺族がもめてしまうケースの多くは、相続財産に関連しているものです。とくに、被相続人の相続財産があらかじめ明らかになっておらず、遺族の間で遺産相続についての意見が食い違い、結果的にいざこざの元となってしまうケースはあとを絶ちません。だからこそ、相続が発生した段階において、財産目録の作成が求められるのです。

預貯金(現金)、不動産、証券、生命保険、負債などの一覧表を作る

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(写真=Boophuket/Shutterstock.com)

では、財産目録にはどのようなことを記載すればいいのでしょうか。具体的には、被相続人が所有していた「預貯金(現金)」「不動産」「証券」「生命保険」、さらには「負債(借金)」など、財産状況を把握するための必要事項を記入していきます。ここで大切なのは、あくまでも“資産と負債のすべての財産を記載する”ということです。

もし、財産目録を作成する段階において、記載するべき資産が抜け落ちていれば、相続するべき財産および相続税の額を正しく試算することはできません。あとで変更することとなれば、手続きが煩雑になるだけでなく、相続人間での意思の疎通にも支障をきたす可能性があります。できるだけ抜けや漏れがないよう、慎重に作業するようにしてください。

財産一覧を作成することで遺産分割協議の前提資料になる

次に、各記載事項について、それぞれの内容を確認する方法を紹介しましょう。おおむね次の通りとなります。

・預貯金(現金)
タンス預金はともかく、一般的な預貯金に関しては、「預金通帳」でチェックするのが基本となります。あとから確認できるよう、こまめに通帳記入をしておくことが大切です。また、預金通帳が発行されていないネット銀行などの場合には、「被相続人の口座があるかどうか」を確認したうえで、残高がどのくらいあるのかを問い合わせてみてください。

・不動産
被相続人が不動産を所有していた場合には、あらかじめその不動産の種類(土地、建物など)を確認しておきましょう。不動産の種類が明らかになれば、評価額の概算も導き出すことができます。不動産の種類を正確に把握するには、役所から名寄せ帳を取り寄せたり、法務局で登記簿謄本を請求したりして確認するようにしてください。

・証券
株式や債券などの証券(有価証券)については、取引先の証券会社に照会する形で確認できます。近年の証券取引では、現物の株券が発行されないケースがほとんどのため、証券会社に照会を依頼しなければなりません。あらかじめ、有価証券を保有しているかどうかヒアリングしておけば無駄がないでしょう。生命保険などに関しても同様です。

・負債(借金)
最後に、負債(借金)がある場合についても確認しておきましょう。負債に関しては、そう簡単に見つけられるものではありません。負債の種類にもよりますが、預貯金の入出金の動きや借用証の有無などをチェックし、どのような種類の負債がどのくらいあるのかを、できる限り詳細に把握するよう努めるしかないでしょう。郵便物や書類、メモなど、幅広く確認するようにしてください。

相続税の申告の要不要も明確にする

もともと財産目録は、法的に作成しなければならないものではありません。(法的拘束力もありません)そのため、書式(フォーマット)に関しても一定の決まりがあるわけではなく、作成者の都合に応じて自由に記載して構わないものとなります。ただ、網羅性および一覧性が重要となる書類であるため、それらの点を意識して作成するようにしましょう。

また、財産目録を作成し、例として相続財産が預貯金のみで基礎控除額以下の場合など、相続税の申告が必要かどうかも知ることが可能です。たとえ面倒であったとしても、財産目録を作成しておくことをおすすめします。(提供:相続MEMO


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