コアCPI上昇率は前月から0.1ポイント拡大
総務省が9月21日に公表した消費者物価指数によると、18年8月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.9%(7月:同0.8%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:0.9%、当社予想も0.9%)通りの結果であった。
生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比0.4%(7月:同0.3%)となり、2ヵ月連続で前月から上昇率を0.1ポイント高めた。生鮮食品が前年比8.7%(7月:同4.3%)の高い伸びとなったことから、総合は前年比1.3%(7月:同0.9%)と5ヵ月ぶりの1%台となった。 コアCPIの内訳をみると、電気代(7月:前年比2.5%→8月:同3.1%)の上昇幅が拡大したが、ガス代(7月:前年比2.6%→8月:同2.6%)、灯油(7月:前年比22.2%→8月:同22.3%)の上昇幅は前月とほぼ変わらず、ガソリン(7月:前年比16.8%→8月:同16.2%)は上昇幅が縮小したため、エネルギー価格の上昇率は前年比7.4%(7月:同7.3%)となり、前月とほぼ変わらなかった。
一方、宿泊料の上昇幅拡大(7月:前年比1.9%→8月:同10.2%)、携帯電話通信料の下落幅縮小(7月:前年比▲6.7%→8月:同▲3.7%)がコアCPIを押し上げた。この2品目だけで上昇率は0.2%ポイント程度押し上げられた。ただし、宿泊料は月々の振れが大きいため、前年比二桁の高い伸びが継続することは考えにくいだろう。
また、外食は前年比1.1%と7月の同1.0%から伸びを高めた。外食は原材料費や人件費の上昇を反映し、17年8月の前年比0.1%からじわじわと上昇率を高めている。
なお、17年8月、18年8月と2年連続で高額療養費の自己負担限度引き上げが実施されたが、18年8月の引き上げ幅が前年を下回ったため、診療代の上昇率は前月から鈍化した(7月:前年比4.3%→8月:同2.2%)。
コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.57%(7月:0.57%)、食料(生鮮食品を除く)が0.21%(7月:0.18%)、その他が0.12%(7月:0.04%)であった。
上昇品目数の割合が約4年ぶりに50%割れ
消費者物価指数の調査対象523品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、8月の上昇品目数258品目(7月は269品目)、下落品目数は199品目(7月は187品目)となり、上昇品目数が前月から減少した。上昇品目数の割合は49.3%(7月は51.4%)、下落品目数の割合は38.0%(7月は35.8%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は11.3%(7月は15.7%)であった。
上昇品目数の割合は18年に入ってから低下傾向が続いており、8月は14年6月以来、約4年ぶりに50%を下回った(14年6月の数値は消費税率引き上げの影響を除いた筆者による試算値)。18年8月はワイン(国産)、公営家賃、ワイシャツ(半袖)、家庭用ゲーム機など幅広い品目で上昇率がプラスからマイナスに転じた。コアCPI上昇率はゼロ%台後半の推移が続いているが、物価の基調は徐々に弱まる方向にある。
コアCPI上昇率は9月に1%の公算も、その後の加速は見込めず
既往の原油高の影響を反映し、電気代、ガス代の上昇ペースが加速していることに加え、足もとの原油価格上昇を受けて、ガソリン、灯油価格も再び上昇し始めている。9月のコアCPI上昇率はエネルギー価格の上昇ペース加速を主因として18年2月以来、7月ぶりの1%となることが見込まれる。
ただし、上昇品目数の減少傾向が続いていることからも分かるとおり、物価の基調が強まる兆しが見られないことから、上昇率はその後頭打ちとなり、当面1%前後の推移が続くことが予想される。
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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任
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