相続税を試算するうえで欠かせないのは、「どのような財産を相続するのか?」「それぞれの財産がどのくらいの価格で評価されるのか?」などを、きちんと把握することです。財産の量や種類を正確に把握したうえで、誰がどのような財産をどのくらい相続することになるのかを見極めなければ、より正確な相続税の額を見積もることはできません。
とくに相続財産には、いろいろな種類があります。そして、一口に相続財産と言っても、現金や土地、建物、株式などは、それぞれ相続税の評価方法が異なります。そうした違いを理解したうえで、正しい相続税評価額を把握するようにしましょう。
種類別にみる相続財産の評価
相続財産の種類ごとにおける評価方法についてみていきましょう。ポイントは、相続財産の種類によって、相続税の評価方法そのものが異なっている点にあります。また、一般的な財産価値としての評価と、相続財産としての評価は違う場合があるということも意識しておいた方がいいでしょう。代表的なものとしては、次のような相続財産が挙げられます。
・土地(宅地、農地)
土地は原則として、宅地、田、畑、山林など、地目ごとに評価されます。具体的な評価方法としては、「①路線価方式」と「②倍率方式」があります。
路線価方式とは、路線価が定められている地域で用いられる評価方法です。路線価とは、道路(路線)に面する標準的な宅地1平方メートルあたりの価額のことで、千円単位で表示されています。実際の計算では、路線価を土地の形状等に応じた「奥行価格補正率」などで補正した後、土地の面積にかけて計算することとなります。
一方で倍率方式とは、路線価が設定されていない地域での評価方法です。倍率方式で土地の評価を行う場合には、その土地の「固定資産税評価額」に地域ごとに定められた倍率をかけて計算します。いずれの場合も、具体的な数値は国税庁の「路線価図・評価倍率表」を参考にしてください。
※「路線価図・評価倍率表」国税庁
※「土地家屋の評価」国税庁
・建物(家屋)
相続税における建物(家屋)の評価は、「固定資産税評価額」によって計算されます。具体的には、固定資産税評価額に1.0をかけて求められるため、固定資産税評価額がそのまま相続税評価となります。ただし、賃貸中の建物については、固定資産税評価額に借家権割合と賃貸割合をかけた価額を、その家屋の固定資産税評価額から控除して評価します。
※「土地家屋の評価」国税庁
・株式(上場株式)
株式(金融商品取引所に上場されている株式)は、相続開始日(被相続人が死亡した日)を基準として、金融商品取引所が公表する最終価格によって評価されるのが基本です。ただし、次の3つの価額で最も低い価額を超える場合には、その価額により評価されます。
課税時期の月(毎日)における最終価格の平均額
課税時期の月の前月(毎日)における毎日の最終価格の平均額
課税時期の月の前々月(毎日)における毎日の最終価格の平均額
※「上場株式の評価」国税庁
・投資信託
投資信託は、相続開始日(被相続人が死亡した日)を基準として、その投資信託を売却した場合の手取り額で評価されます。相続税評価額の概算としては、この基準価格に保有している口数をかけて求められます。詳しい価額は、購入先の証券会社に確認してみましょう。
※「貸付信託・証券投資信託の評価」国税庁
・ゴルフ会員権
ゴルフ会員権は、相続開始日(被相続人が死亡した日)を基準として、取引価格の70%に相当する金額で評価されます。取引価格に含まれない預託金などがある場合には、それらも含めて試算します。
※「ゴルフ会員権の評価」国税庁
・生命保険契約
生命保険は、相続開始日(被相続人が死亡した日)において契約解除した場合に支払われる「解約返戻金」の額によって評価されます。ただし、掛け捨て保険などの場合は解約返戻金がないため、評価の対象となりません。
※「生命保険契約に関する権利の評価」国税庁
・外貨
外貨は、相続開始日(被相続人が死亡した日)を基準として、最終の対顧客直物電信買相場(TTB)またはこれに準ずる相場により評価されます。つまり、通常の外貨取引をする場合に必要となる金額が相続税評価額となります。
※「外貨(現金)の邦貨換算」国税庁
どのような資産があるのか整理しておこう
このように、相続財産の種類によって、相続税評価額の計算方法は異なります。あらかじめどのような資産があるのかを整理し、正しく計算できるようにしておきましょう。事前に財産の状態を一覧できるようにしておけば、いざというときにも慌てることなく対処できます。(提供:相続MEMO)
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