自転車保険の認知度が上がりつつあるが、未加入の人も少なくないだろう。妻や子供が自転車を利用しているなら、事故を起こしてしまうと高額な賠償金を請求されるかもしれない。そう考えると加入を検討してもよさそうだが、どうやって選べばいいのだろうか。
自転車保険の補償内容は2種類に分けられる
自転車保険の補償内容は、大きく2種類に分けられる。自転車事故により人にケガをさせたり人の物を壊したりした場合に負う「相手への賠償責任」についての補償と、自分が死亡したりケガをしたりした場合に治療費などが支払われる「自分への補償」だ。
自転車保険によって補償される「相手への賠償」
自転車事故によって相手にケガをさせたり、死亡させたり、物を壊したりした場合に、被保険者が負う損害賠償責任についての補償を受けられる。また自転車保険の中には個人賠償責任補償保険や日常生活賠償保険によって相手への賠償を補償する商品もあり、この種の商品に加入した場合、自転車事故だけでなく以下のような場合にも補償を受けられる。
・水漏れにより階下の家の家財に損害を与えてしまった
・デパートで展示している商品を壊してしまった
・散歩中の飼い犬が人に噛みつき、ケガをさせてしまった
「自分(や家族)への補償」もある
負傷するのは事故の相手だけとは限らない。運転している自分自身や同乗者もケガをする可能性があるのだ。自転車保険では、自転車事故により被保険者が死亡したりケガをしたりした場合についても保険金を受け取ることができる。
具体的な補償内容は商品によって異なるため、現在加入している傷害保険や生命保険の補償内容も加味しつつ、死亡時・入院時・手術時・通院時の補償がどのくらい必要かシミュレーションしてみるといいだろう。
自転車保険選びで注意すべき3つのポイント
自転車保険の補償内容は、商品によってそれぞれ異なる。そのため自転車保険選びをする際は、以下のポイントに注意したい。
ポイント1 補償額は保険会社によって異なる
補償される「相手への賠償」だが、その限度額は保険会社によって以下のような違いがある。
・東京海上日動火災保険株式会社の『サイクル保険』……1億円まで
・三井住友海上火災保険株式会社『ネットde保険@さいくる』……3億円まで
・ジャパン少額短期保険株式会社『ちゃりぽ』……1,000万円まで(スタンダードプラン)
過去には、11歳の男児が起こした自転車事故に関して、その母親に9,521万円の損害賠償命令が下されたケースもある。事故の相手が複数人になると、賠償額がさらに増える可能性もあるだろう。
ポイント2 補償を受けられる範囲は慎重に選択
自転車保険の補償内容のうち相手への賠償については、本人・配偶者・親族(同居の親族および未婚の子)が補償を受けられる。しかし自分のケガの補償については、ニーズに合わせてその範囲を選ぶことができる。具体的な補償範囲については保険会社によって異なるが、おおむね以下のようになっている。
・本人型……本人のケガを補償
・夫婦型……本人と配偶者のケガを補償
・家族型……本人と配偶者、その親族のケガを補償
子供を乗せて自転車を運転しているときに事故を起こして子供がケガをした場合、本人型・夫婦型の自転車保険では子供のケガについての補償を受けることはできない。保育園や幼稚園の送り迎えなど、子供を乗せて自転車を運転する人は、家族型の自転車保険への加入をおすすめする。
ポイント3 示談交渉サービスの有無についても確認
自転車保険に示談交渉サービスが付いている場合、相手方とのやり取りや示談交渉などは基本的に保険会社が代行してくれる。一方、示談交渉サービスが付いていない自転車保険に加入した場合、これらを全て自分で行わなければならない。
事故の相手方とのやり取りは大きなストレスになるし、示談交渉においては専門的な知識やスキルが必要になることもある。万一の場合に余計なストレスを感じないためにも、自転車保険選びでは示談交渉サービスの有無をきちんと確認しておくことが大切だ。
補償は重複していない?加入済の保険内容をチェック
自転車事故への備えは、必ずしも自転車保険である必要はない。自動車保険や火災保険、傷害保険などの損害保険に「個人賠償責任補償特約」を付帯している場合、相手方への賠償責任をカバーできる。
傷害保険+生命保険+個人賠償責任補償特約という選択肢も
傷害保険では、ケガによる入院や手術、通院をした場合に約定の保険金が支払われる。そのため既に加入している保険契約に個人賠償責任補償特約が付帯されている場合は、自分と家族のケガの補償を傷害保険でカバーする、というのもひとつの選択肢であろう。医療保険や死亡保険に加入している場合、万一のことがあった場合にはこれによる保障も受けられる。
個人賠償責任補償特約は、本人、配偶者、それらの親族(同居の親族および別居の未婚の子)に適用される。そのため自転車保険に加入する際は、配偶者や同居の親族が加入している保険にこの特約が付帯されているかどうかについても、確認したほうがいいだろう。
文・曽我部三代(保険業界に強いファイナンシャル・プランナー)/MONEY TIMES
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