マイホームを買ったほうがいいのか、賃貸のほうがいいのか――。多くの人が迷う、一種の“永遠のテーマ”といえる命題だ。買った家は資産にはなるものの、負債を抱えることにもなる。メリットもデメリットもあり、果たしてどちらがいいか分からない。長年、不動産業界でこの命題に触れてきた住宅ジャーナリストの考えとは?

日本人の4人に3人は持ち家志向

賃貸,持ち家
(画像=Sunny studio/Shutterstock.com)

日本人は諸外国に比べて、土地やマイホームへの所有志向が強いといわれている。自分が住むための住宅の所有に関する意識をみると、「土地・建物を両方とも所有したい」とする人が75.7%に達している(国土交通省『土地問題に関する国民の意識調査』)。日本人の4人に3人は持家派であり、賃貸志向は少数派に過ぎない。

マイホームは30歳代や40歳代で取得する人が多い

持ち家率について見てみると、20歳代後半では11.6%に過ぎないが、30歳代で約30~45%、40歳代で5割を超え、65歳以上では8割を超える(総務省統計局『平成25年住宅・土地統計調査』)。高齢期に入ると親からの相続で持家を取得する人も多いだろうが、30歳代や40歳代の時期に、自力でマイホームを取得している人が多いことが分かる。

実際にマイホームを取得する年齢は、注文住宅が43.6歳、分譲戸建が39.6歳、分譲マンションが44.1歳となっている(国土交通省『平成29年度住宅市場動向調査報告書』)。もちろんこの年代であれば、マイホームを現金で購入するのは難しいだろうから、多くの人が住宅ローンを組んで持ち家を手に入れているのだろう。

生涯の住宅費負担には大きな差が出る

今は低金利時代のため、ほとんどのエリアで賃貸住宅の家賃並みか、それ以下の負担でマイホームを取得できる。

賃貸住宅の家賃は払いっぱなしで何も残らないが、住宅ローンなら返済が進むに応じて残高が減り、完済すれば立派な資産になる。賃貸だとその後も家賃負担が続くが、持ち家なら税金や管理費・修繕費などの維持費だけですむ。家賃負担とローン負担に大差はなくても、生涯の住宅費負担や資産形成という点では大きな差がつく。

年月が経てばマイホームの資産価値が下がるといっても、首都圏の築30年以上のマンションの成約価格の平均は1,825万円、中古一戸建てで2,032万円(東日本不動産流通機構「首都圏中古マンション・中古戸建住宅地域別・築年帯別成約状況2018年4~6月」による)。万一のときには、現金化できるのではないだろうか。

マイホームを買ってしまうと買い換えは簡単ではない

資産面以外でも、持ち家のメリットは大きい。

まず賃貸住宅と分譲住宅では、住宅の仕様レベルが大きく異なる。賃貸住宅はオーナーの利回り重視なので建築費が削られるが、分譲住宅は耐震性や耐久性、断熱性など安全性や居住性に優れている。

入居後も、分譲住宅は建築基準法やマンションの管理規約などの範囲内でリフォームできるが、賃貸は釘一本打つのもままならず自由度が大きく劣る。

さらに社会的な評価という点でも、持ち家と賃貸では大きく異なる。資産があれば金融機関に対する信用力が高まり、独立時などに資金調達が容易になるメリットもあるのだ。

しかし、持ち家にもデメリットはある。持ち家を売却するときには、「中古住宅」扱いとなり購入時より価値が下がるため、簡単には買い換えできない。

それに対して、賃貸ならライフスタイルやライフステージに合わせて引っ越しが可能だ。万が一リストラや病気・ケガなどで収入が減った場合でも、賃貸なら家賃の安い住宅にダウンサイジングできるが、持ち家だとそうはいかない。

親の家がもらえるのなら気楽な賃貸生活も

こうした点を考慮すると、親が家を持っていてそれを確実に相続できるのであれば、(相続税や争族など別の問題はさておき)リスクのある住宅ローンを抱えてまで取得する必要はないかもしれない。一方で親はあてにできない、あるいはレベルの高い住宅に住みたい、資産を形成しておきたいということであれば、若いうちに住宅ローンを組んで持ち家を取得するのが得策かもしれない。

文・山下和之(住宅ジャーナリスト)/MONEY TIMES

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