MMD研究所は、情報流通支援サービスの株式会社オークネット(東京都港区、代表取締役社長:藤崎清孝)が運営するオークネット総合研究所と共同で、2017年12月15日~12月21日に「日本とアメリカにおけるスマートフォン中古端末市場調査」を実施いたしました。対象者は日本在住の15歳~69歳の男女1,007人とアメリカ在住15歳~69歳の男女1,241人です。第1弾では、日米モバイル端末の利用状況を、第2弾では日米のモバイル端末に対する意識の違いにフォーカスを当てた内容になっています。第1弾の調査も併せてご覧ください。
【調査結果サマリー】
■ 日本、携帯電話端末の「下取りサービス」利用意向61.1%、2016年4月から3.5ポイント減 米国の下取りサービス利用意向は69.4%
■ 次回購入端末、「修理・整備された中古端末」を検討できる、日本は13.2%、米国は24.8% 米国は男女問わず若年層が中古端末に対して寛容、日本とは異なる結果に
■ 中古端末に期待することはない、日本は25.7%で米国12.0%の倍以上
■ 中古端末へのマイナスイメージない、日本は5.8%、米国は15.3% 日本の中古端末へのマイナスイメージ、最多回答は「バッテリーが持たなさそう」
日本、携帯電話端末の「下取りサービス」利用意向61.1%、2016年4月から3.5ポイント減 米国の下取りサービス利用意向は69.4%
スマートフォン・携帯電話を所有している日本在住の15歳~69歳の男女(n=962)に対して、次回携帯電話購入の際に、「下取りサービス(下取りプログラム)」を利用したいと思うかを聞いたところ、日本では「とても下取りサービスを利用したい(28.9%)」「やや下取りサービスを利用したい(32.2%)」を合算した利用意向は61.1%であった。同様の設問をスマートフォン・携帯電話を所有しているアメリカ在住の15歳~69歳の男女(n=1,195)に対して聞いたところ、「とても下取りサービスを利用したい(28.2%)」「やや下取りサービスを利用したい(41.2%)」を合算した割合は69.4%となった。
オークネット総合研究所が2016年4月に実施した同様の調査では日本の下取りサービスの利用意向は64.6%となっており、今回の結果と比較すると3.5ポイント減っていることがわかった。また、2012年の結果と比べると、11.7ポイント減っており、年々下取りサービスの利用意向が減っていることがわかった。
次回購入端末、「修理・整備された中古端末」を検討できる、日本は13.2%、米国は24.8% 米国は男女問わず若年層が中古端末に対して寛容、日本とは異なる結果に
日本在住の15歳~69歳の男女(n=1,007)とアメリカ在住15歳~69歳の男女(n=1,241)に対して、次回スマートフォン・携帯電話を購入するとしたらどの端末を検討できるかを複数回答で聞いたところ、「新品の端末」という回答は、日本が91.4%、アメリカが81.9%となった。「修理・整備された中古端末」は日本が13.2%、アメリカが24.8%、「修理・整備なしの中古端末」は、日本は4.4%、アメリカは8.3%となった。日本、アメリカどちらも「修理・整備された中古端末」を検討できる割合は、「修理・整備なしの中古端末」の2倍以上あることがわかった。
修理・整備された中古端末を検討できる割合を国別・性年代別で見てみると、アメリカで修理・整備された中古端末を検討できると答えた属性で最も多かったのは30代男性で45.0%となった。次点は20代男性で37.6%であったが、ほぼ同じ割合で10代女性と10代男性が続いた。日本では、最も割合が高い属性は20代男性で25.7%となった。しかし、アメリカで割合が高かった10代男性と10代女性はそれぞれ5.9%、5.6%と日本の他の年代と比較しても低い結果となった。
ちなみに修理・整備なしの中古端末を検討できる割合を見ると、日本の10代は男女ともに0%となり、中古端末に寛容なアメリカの若年層とはかなり異なる結果となった。
中古端末に期待することはない、日本は25.7%で米国12.0%の倍以上
日本在住の15歳~69歳の男女(n=1,007)とアメリカ在住15歳~69歳の男女(n=1,241)に、スマートフォン・携帯電話の中古端末に期待することを聞いたところ、日本で最も多い回答は「しっかり動作確認されている(32.3%)」、次いで「きれいにクリーニングされている(26.1%)」、「特に中古端末に期待することはない(25.7%)」となった。
アメリカで最も多かった回答は「購入後すぐ使える(35.6%)」となり、次いで「きれいにクリーニングされている(31.1%)」、「修理・修繕されている(24.9%)」となった。
中古端末へのマイナスイメージない、日本は5.8%、米国は15.3% 日本の中古端末へのマイナスイメージ、最多回答は「バッテリーが持たなさそう」
日本在住の15歳~69歳の男女(n=1,007)とアメリカ在住15歳~69歳の男女(n=1,241)に、スマートフォンや携帯電話の中古端末に対するマイナスイメージを聞いたところ、日本で最も多かった回答は「バッテリーが持たなそう」が44.1%、次いで「傷や汚れがありそう」が39.4%、「すぐ壊れそう」が36.8%であった。アメリカで最も多かった回答は「品質が安定しなさそう」が27.1%、次いで「バッテリーが持たなそう」が26.9%、「傷や汚れがありそう」が25.0%となった。ちなみに、「マイナスのイメージはない」という回答は日本では5.8%、アメリカでは15.3%となり中古端末に対しての意識の差が明らかとなった。
執筆者:セノオ アキコ
※本調査レポートの百分率表示は四捨五入の丸め計算を行っており、合計しても100%とならない場合がございます。
【モバイル研究家 木暮 祐一先生からのコメント】
下取りサービスの利用意向に関するデータでは、米国に比べ日本は下取りサービスに対してネガティブな印象が高い傾向がある。「利用したい」という意向は米国のほうが若干高いが、逆に「あまり下取りサービスを利用したいと思わない」という回答比率が、日本は23.0%と米国より8.4ポイントも高い。また下取りサービスの利用意向が年々減少傾向にある。日本における中古端末市場の形成は世界から比べると後発である。とはいえ、最近になって中古端末に対するユーザーの関心や、端末の処分方法に関する認識が広がりはじめ、ユーザー自身が最適な手段を検討できる土壌が形成されてきた段階にある。
そうした中で、端末買い換え時の「下取りサービス」以外の処分方法とも比較検討し、より有利な手段を選択するユーザーが増えていることが考えられる。なお2月6日に公表した第1弾の報告では端末の処分方法について日米の調査結果を紹介しているが、下取りサービスの利用率、買取店への売却とも日米でほぼ同比率であった。日本では買取店への売却が徐々に増えており、その比率がようやく米国並みに達したというところだろう。しかし現状はまだ圧倒的に下取りサービスの利用率のほうが高い(第1弾を参照)。
続いて、次回端末購入時に検討できる端末では、日米とも圧倒的に新品端末の意向が高いが、とくに日本は91.4%で米国より9.5ポイントも高い。「修理・整備された中古端末」と「修理・整備なしの中古端末」の購入意向では、米国では「修理・整備された中古端末」の検討率は高く24.8%に上る。日本は13.2%にとどまっているが、日本ではこのカテゴリの製品がどういうものなのかがまだ十分に認知されていないと考えられる。
この「修理・整備された中古端末」は新品と変わらない状態にまで修理・整備された端末のことである。家電品の世界では「再生品」とか「リファービッシュ品」として市販されるケースを見かけるが、スマートフォンにおいてはこれまで日本では大々的に流通したり、店頭に並んだりすることがほとんど無かった。そのため回答したユーザーのイメージが浮かばなかったのかもしれない。日本において「修理・整備された中古端末」はMVNOが数量限定で取り扱うケースを見かける程度だが、実際に手に取ってみれば満足できるクオリティである上、新品よりも安価に購入できるとなればそれなりのシェアが期待できる。今後日本においても安定供給の仕組みが整っていくことが期待されている。
中古端末を検討できる割合を性世代別に見ると、アメリカでは若年層ほど中古端末を検討できる割合が高い一方で、日本の場合は全年齢層とも割合が低い。これは日本特有の端末販売の仕組みが中古端末に関心が向かない1つの要因になっていると考えられる。すなわち契約の方法次第で(例えばMNPを利用するなどして)、新品端末をより安価に購入できる(値引率が高い)ケースがあり、このような販売方法に慣れてしまっている日本のユーザーの多くは中古端末という選択肢に目が行かなくなってしまっているのだろう。
また10代男女ともに米国では「修理・整備なしの中古端末」を検討できる割合がかなり高い一方で日本は共に0%である。ここには日米におけるスマートフォン利用文化の違いが出ているようだ。筆者は日本の学生を対象に各所で利用動向をヒアリングしているが、日本では大半の学生が端末購入や毎月の通信料金の支払いを親に委ねている。このため、10代のユーザーにおいて端末購入代金や毎月の通信料金などへの関心が低い。一方で米国では10代のユーザーの多くが自立し、端末代金や通信料金の支払いを自身でしているのであろう。だからこそ、より安価に端末を購入できる手段として中古端末という選択肢に関心を持っていると考えられる。
日本では中古端末に対するネガティブなイメージが多い。特にバッテリー、そして傷や汚れなどを気にしている傾向が見られる。壊れそうというイメージも強い。さらに米国に比べてマイナスイメージが高い項目として「補償が限られていそう」が続く。日本のユーザーは他国に比べ、製品の品質に対する要求がより高いことが考えられるが、安価に購入して利用したい意向は世界とも変わらないはずである。
実は日本においても「修理・整備された中古端末」を見かける機会は増えてきている。修理・整備をめぐる法整備も整い、メーカー以外の登録修理業者が総務省に届出をした修理方法に従ってスマートフォンを修理・整備すると同時に、厳格な品質基準を満たした安心して使用できるパーツやバッテリーによる修理、整備品をMVNOが販売する事例が増えつつある。加えて、販売後の端末保証ならびに独自の補償サービス等を充実させることでユーザーに安心して利用してもらえる環境の整備も重要と考える。すでに一部のMVNOが独自の端末保証も用意し、ユーザーに安心して利用してもらえるよう配慮している。中古端末に対するネガティブなイメージを払拭できる「修理・整備された中古端末」への認知が広がり、またこうしたカテゴリの製品が身近に購入できる環境が整っていけば、日本のユーザーの中古端末に対する認識も大きく変わり、中古端末市場が一層拡大していくものと考える。
モバイル研究家 木暮 祐一
1967年、東京都生まれ。黎明期からの携帯電話業界動向をウォッチし、2000年に(株)アスキーにて携帯電話情報サイト『携帯24』を立ち上げ同Web編集長。コンテンツ業界を経て2004年独立。2007年、「携帯電話の遠隔医療応用に関する研究」に携わり徳島大学大学院工学研究科を修了、博士(工学)。スマートフォンの医療・ヘルスケア分野への応用をはじめ、ICTの地域社会での活用に関わる研究に従事。モバイル学会理事/副会長、ITヘルスケア学会理事。近著に『メディア技術史』(共著、北樹出版)など。1000台を超えるケータイのコレクションも保有している。
■ 調査概要
【第2弾】日本とアメリカにおけるスマートフォン中古端末市場調査
・ 調査期間:2017年12月15日~12月21日
・ 調査方法:インターネット調査
<日本>
・ 有効回答:1,007人
・ 調査対象:15歳から69歳の男女
<アメリカ>
・ 有効回答:1,241人
・ 調査対象:15歳から69歳の男女
■ 設問項目
Q1 あなたがメインで使っている携帯端末をひとつだけ教えてください。
Q2 前問で回答した携帯電話で契約している通信会社を教えて下さい。
Q3 あなたが以前利用していた携帯電話・スマートフォン端末はどうしましたか。
Q4 携帯電話・スマートフォン端末の処分方法を選んだ理由について、5段階で教えて下さい。
Q5 下取りや売却をせず、そのまま持っている理由としてあなたの考えにあてはまるものを全て選んで下さい。
Q6 あなたは次回携帯電話購入の際に、「下取りサービス(下取りプログラム)」を利用したいと思いますか。
Q7 あなたが下取りサービスを利用する際に期待することを、5段階で教えて下さい。
Q8 あなたが現在利用している端末の購入・入手方法を教えて下さい。
Q9 あなたが現在利用しているスマートフォンや携帯電話を購入した理由を最大3つまで教えてください。
Q10 あなたが次回スマートフォンや携帯電話を購入するとしたら、下記のどの端末が検討できますか?
Q11 あなたがスマートフォンや携帯電話の中古端末に期待することを3つまで教えて下さい。
Q12 あなたの抱く中古端末のイメージとしてあてはまるものを3つまで選んでください。
Q13 あなたが利用している携帯電話の平均的な月額費用を教えて下さい。
Q14 あなたが前問で回答した、携帯電話の月額料金は利用頻度に対して見合っていると思いますか。
Q15 あなたはSIMフリー端末を知っていますか?
Q16 あなたの携帯電話で故障や不具合が発生したことはありますか。
Q17 前問で回答した故障・不具合が起こった際、あなたは修理に出しましたか。また、どこに修理に出しましたか?
Q18 前問で回答した修理にはいくらぐらいかかりましたか。最も近い金額をお答えください。
Q19 修理に出さなかった理由を最大3つまで教えて下さい。
Q20 あなたが携帯電話を修理に出した際、不満やトラブルはありましたか。最大3つまで教えて下さい
Q21 現在あなたがメインでお使いの携帯電話・スマートフォンは、補償サービスに加入していますか?
(提供:MMD研究所)