健康は21世紀人にとって基本的な目標である。国連ミレニアム開発目標の中国主任委員は「健康産業は、永遠に日の沈まない産業である。」と述べた。中国の医療健康産業の発展は、まだ端緒についたばかりだ。産業規模は2017年の6兆元(95兆円)から2020年には8兆元(130兆円)へ拡大すると見込まれている。

この巨大市場に対し、IT巨頭BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)のみならず、不動産大手やスマホメーカーまで参入する大激戦となっている。ネットメディア「中商情報網」が伝えた。中国の健康産業はどこへ向かうのだろうか。

BATの取組み

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(画像=PIXTA)

●アリババ

アリババは2014年、中信二十一世紀という医療関連の上場会社に1億7000万ドルを出資し「阿里健康」と名称を改めた。現在は、アリババ医療健康部門の中心として機能している。主な業務は以下の4つ。

1 国家薬品電子監督管理データに基付く、医薬品のトレーサビリティー。
2 医薬品のネット通販。O2Oサービス(宅配)。
3 ネットによる診療サービス。
4 ネットによる健康診断サービス。

また今年10月には、グループのクラウドコンピューティング会社「阿里雲」と提携したAI「医療大脳」を2.0へ“昇級”すると発表した。

●テンセント

テンセントは6月に「AI医学補助プラットフォーム」を発表した。国内初の開放型医療AIエンジンという。“医療情報化工場”および“補助診療エンジン”と位置付け、診療前、診療中、診療後までカバーしていく。

これまでのように最適な診療科を探すのではなく、初めから最適な医師とのマッチングを目指す。国家AIプロジェクトに指定された医療映像技術は、その中核技術の一つだ。すでに国内100を超える「三甲医院(501床以上の高水準病院)」と提携している。

このプラットフォームは、医学用語50万、治療方法100万など、1億を超える医学データの知識庫でもある。そしてその大部分は開放されている。

●バイドゥ

創業者・李彦宏は「我々の目標は、病状を正確に診断し、最適な医師の元へ送ること。また医学部卒業後3~5年後の若手医師の手引きとなり、時間の節約に貢献することだ。“百度医療大脳”は、その目的のためにビッグデータとAIを駆使したプラットフォームである。」と発言している。

しかし最近、バイドゥの医療関連ニュースはあまりない。AとTに引き離されつつあるIT界の全体状況と、変わらないようだ。

不動産大手も進出

少なくとも有名大企業を含む、14社の不動産企業が医療健康産業に進出している。大手2社の取組みをみてみよう。

●万達集団

万達集団は、公開資料によると、これまでに1440億元を医療健康産業に投じている。2016年1月には英国国際医院集団(International Hospital Group)と提携、150億元を投資して、上海、成都、青島に“総合性国際病院”を建設した。

2017年4月には、成都市と戦略提携を結んだ。700億元を投資し、ワールドクラスの医療産業センターを建設する計画という。同年7月には、昆明市と同じような提携を結び、500億元を投資し、こちらには“大健康産業園”を建設する。

●華潤集団

華潤集団の大健康産業の売上は、すでに1750億香港ドル、全体の28%を占め、総資産でも12%を占めている。地盤とする大湾区(香港・マカオと深セン、広州など中国側9市で構成。珠江デルタとほぼ同義)において、医薬販売、医療サービス、養老サービス、健康食品、健康教育、ベンチャー起業などを結合させた、総合医療機構の確立を目指す。

5つの方向性

その他ではシャオミ(小米)も進出している。スマホメーカーから、ネット通販、ネットバンク、投資と多角化しているが、医療健康産業もその一つだ。身体測定器具の販売、「シャオミ健康クラウド」を通じた健康ビッグデータの収集、提供などを強化していく。

最後に記事は、大健康産業の方向性について5つを挙げている。

1 高技術化:診断技術の応用範囲は広くなる一方である。最新設備への需要は大きい。
2 高精度化・専門化:検査機器はますます精密機械となる。一方、介護機器などは、個性化、専門化が進む。
3 AI化:AI、IOT等の技術が大健康産業に変革をもたらす。AI診断の情報蓄積は、さらなるAI診断のレベルアップをもたらす。
4 融合化:健康産業と旅行産業、文化産業の融合など。
5 国際化:国際提携や医療資源のシェアリングが進む。中国は「一帯一路健康ステーション」の建設のため、世界の医療健康と提携していく。

日本の医療健康産業にも、医療ツーリズムや養老産業などを通じ、中国からの強い波動が伝わっている。そこにはまだ多くのチャンスが眠っているはずだ。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)