マネー本の中には、資産運用や株式投資に役立つ貴重な考え方や哲学、ノウハウが書かれたベストセラーが少なからず存在します。世界中の投資家から「これぞ、名著」と喝采された名作のエッセンスを、数回にわたって紹介していくことにしましょう。

株式投資の名著
(画像=PIXTA)

累計4,000万部のヒット作『金持ち父さん貧乏父さん』

金持ち父さん貧乏父さん
(ロバート・キヨサキ著・白根美保子訳、筑摩書房刊 改訂版 2013.11.8)

『改訂版 金持ち父さん貧乏父さん アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』は日本ではシリーズ累計395万部、全世界では4,000万部を突破した空前のベストセラーです。

「パパ、お金持ちになる方法を教えてくれる?」という問いかけで始まる本書は、著者自身といえるロバート少年が、金持ちと中流以下の考え方の差を、親友のマイクの父(=金持ち父さん)と実の父(=貧乏父さん)との比較から学んでいくストーリー形式の展開になっています。

不動産のみならず高配当株や投資信託も立派な資産

本書全体のキーワードといえるのが「キャッシュフローを生む資産」です。貧乏父さんは住宅という負債を返済するために働きます。一方、金持ち父さんは不動産投資を行って、その賃料収入が“勝手”に新しいお金を生み出してくれるような仕組みを作ります。「金持ちは資産を手に入れる。中流以下の人たちは負債を手に入れ、資産だと思いこむ」のです。

会計学の考え方を使って、お金を生み出すものが資産であり、お金を奪い取っていくものが負債であることが解き明かされます。金持ちへの第一歩は、資産から得られるキャッシュフローが支出を上回るようになること。わかりやすい言葉で資産形成の極意を学べるのが、本書が今も絶大な支持を集める理由です。

不動産投資を勧める本書は、日本でも「大家さんブーム」が起きるきっかけになりました。不動産以外にも、高配当株やJ-REIT(不動産投信)、それらに分散投資する投資信託も、お金持ちになるために必要な、立派な資産といえます。

一切の感情を排除し「ゾーン」の境地に到達せよ!

ゾーン 「勝つ」相場心理学入門
(マーク・ダクラス著・世良敬明訳、パンローリング刊、第一版 2002.3.13)

一方、『ゾーン 「勝つ」相場心理学入門』はデイトレードなどに必要なメンタル強化法を論じた名著です。

投資家の心理カウンセリングをしている著者は、なぜ多くの人が株や先物取引、最近ではビットコインといった金融商品に対する投機的売買で失敗しやすいのかを解明していきます。

その答えは、人々が学校で教わったことや社会に出て習得した技術が、投機の世界ではむしろ有害だからです。例えば、「努力したら報われる」とか「知識があればあるほど優秀」といった一般社会の成功原則がデイトレードの世界ではあまり役立ちません。努力しても損をすることはありますし、豊富な知識や学歴からくるプライドが邪魔になって、みすみす勝つチャンスを逃してしまうことも頻繁に起こります。

本書では、「投機的な売買行為」がいかに人間の感情や欲望を狂わせ、トレード結果に悪影響を与えるか、耳の痛い話が繰り返し述べられています。その克服には、感情を排し、自分に都合の悪い情報も正確に認知することが必要です。そして、「今この瞬間の機会の流れ」の中で完璧な集中力を維持すること、その集中を「ゾーン」と呼ばれる領域まで高めることが求められます。

一見、まったく逆のベクトルを向いていながら、2つの名著が教えてくれるのは、自分自身があくせく働いたり、感情や欲望の面で負のスパイラルに陥ることなく、いかに快適で、自律的で、半ば機械的、確率論的な投資スタイルを築くことができるか。ともに「投資とは何か」「投機とは何か」の本質が学べる、不朽の名作といえるでしょう。

(提供:フィデリティ投信