2016年の熊本地震、2018年は6月の大阪府北部地震、9月の北海道胆振東部地震と、毎年のように大きな地震が発生している。被災地の映像をみると、住宅の耐震性が気にかかる。旧耐震のマンションを買っていいものかどうか不安になってしまうが、実際はどうなのだろうか。

阪神・淡路大震災では旧耐震の建物の7割が小破以上

旧耐震マンション,耐震性
(画像=masajla/Shutterstock.com)

現在の耐震基準は1981(昭和56)年6月に施行されたもので、一般的に新耐震基準と呼ばれている。この基準では、「中規模の地震動でほとんど損傷しない」ことに加えて、「大規模の地震動で倒壊・崩壊しない」ように設計することが前提になっている。

具体的には「震度6強、7クラスの地震が発生しても建物が壊れない」ことが新耐震基準といっていいだろう。

1995年に発生した阪神・淡路大震災では、新耐震基準施行前の1981年以前の建物に関して、軽微な被害や無被害だったのは3割強。残りの7割近くは小破、中破、大破のいずれかだった。

それに対して新耐震基準の建物では、7割以上が軽微な被害や無被害。小破、中破、大破は3割以下に留まっている(平成7年度版『警察白書』より)。

耐震性不足の住まいが1割を超えている現実

阪神・淡路大震災を契機に、国は自治体と協力して建築物の耐震化に力を注いでいる。住宅の耐震化率及び多くの人が利用する建築物(官公庁や公共施設など)の耐震化率を2020年までに95%に、2025年までには耐震性が不十分な住宅をおおむね解消することを目標としている。

多くの人が利用する建築物については、1981年以前に施工された耐震性不足の建築物約9万棟(2003年時点)を、2020年までに約2万棟まで減らすことを目標としている。2025年までには、この約2万棟の旧耐震の建築物も新耐震基準を満たすよう耐震補強を行う計画だ。

現実はというと、耐震化率、つまり新耐震基準を満たす建物の割合は、2013年時点で住宅が約82%、多くの人が利用する建築物が約85%。各都道府県が2015年までに耐震化率80~97%を掲げたが、達成した自治体はなかった(朝日新聞の調査より)。

中古マンションの中にも、この耐震性不足の物件が少なからずあるということになる。

1981年以前の物件でも新耐震基準を満たしているものもある

マンションの耐震性を判断する第一義的な指標は建築年次。1981年6月以降の施工であれば、原則的に新耐震基準を満たしているはずだから、まずは安心だ。問題は新耐震基準以前に施工されたマンションだ。

1981年以前のマンションがすべてダメということではない。1981年以前のマンションであっても、当時の建築基準法で定められた基準以上の設計・施工をしているケースもある。

そういった物件なら、建築後の耐震診断などによって新耐震基準を満たし、耐震性に問題なしといった調査結果が出ているはずだ。物件検討時には必ず耐震性に関する資料の提示を依頼するようにしよう。

築37年以上のマンションは耐震性を必ず確認

1981年以前の施工であっても、その後耐震診断を行い、耐震補強が必要という診断結果になったために補強工事を行っているケースもある。柱や梁の補強や、制震装置を組み込むなどの工事を行っていれば心配はない。

ただし、高齢化や費用の問題などから、耐震補強がなされていない物件も少なくない。これは、政府や都道府県が掲げる住宅耐震化が進んでいない状況からも見て取れる。

中古物件選びに当たっては、必ず耐震性をチェックするようにしたい。

文・山下和之(住宅ジャーナリスト)/MONEY TIMES

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