資産運用の3方法として知られている、「長期投資」「リスク分散投資」「時間分散投資」。しかし、前の二つに比べて、「時間分散投資」の重要度やその認知度は今一つの傾向にあるといえるかもしれません。そこで今回は、投資のリスクを押さえつつ、効果をあげる賢い資産形成法の一つである「時間分散投資」について、基礎からじっくりと解説します。

時間分散投資は「時間」と「決まった金額」がポイント

時間分散
(画像=Shutterstock)

冒頭でも紹介したように、これから投資をはじめる人はもちろん、ある程度のベテラン投資家でもぜひ押さえておきたい投資法が、「長期投資」「リスク分散投資」「時間分散投資」です。まず、「長期投資」とは、文字どおり株や投資信託などの商品を長期間保有し続ける投資法を指します。値動きの上下があっても、長い間ずっと保有していれば、結果として利益となる可能性が高いというスタンスに基づいた投資法です。

一方、「リスク分散投資」は、預金、株、FXなど、リスクに高低があるさまざまな商品にそれぞれ投資し、結果としてトータルのリスクを分散して、収益をあげる投資方法です。

これに対して「時間分散」とは、ある商品をある程度の時間をあけて、決まった金額で少しずつ買い増していくという投資方法です。一定の量(株数・口数など)ではなく一定の金額というのがポイントで、まさに積立感覚の投資法といえます。

この「時間分散投資」は、専門用語で「ドル・コスト平均法」とも呼ばれています。名前から外国為替に関係する投資法と思われがちですが、単に英語で「Dollar Cost Averaging」という言葉を和訳したことが名称の理由のようです。

ここが違う!時間分散の大きなメリット

それでは、なぜ「時間分散投資」が有効なのでしょうか。そもそも投資は、「安いときに買い」「高いときに売る」という一言に尽きます。しかし、そう簡単にはいかないのが投資の世界です。安くなったと思い購入したら、さらに安くなってしまうというようなことは珍しくありません。逆に、高止まりだと思って売りに出したら、さらに上がったということも多々あります。つまり、タイミングを見て売買するのは難しいのです。

そこで有効なのが「時間分散投資」です。「時間分散投資」は、決まった金額で特定の商品を買い続けることにより効果が実感できます。たとえば、ある商品に時間分散で毎月1万円投資したとしましょう。そのときの単価が1,000円だとすると、10口購入することができます。翌月2,000円に単価が上がれば5口しか買えませんが、その翌月に500円に下がれば20口買えるという具合です。

このように「毎月」「同じタイミング」「同じ金額」で投資を続ければ、購入金額は平準化され、リスクを低くすることができるのです。一般的に投資商品は、短期であれば大きな損得が生じますが、長期的には多くの場合、上昇しています。このため、「時間分散投資」で口数を着実に増やしていけば、投資利益を得る可能性が広がるといえるでしょう。

「時間分散投資」で投資信託を購入した例

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(画像=クラブ・フィデリティ)

毎月決まった金額で投資信託を購入する積立投資を実践すれば、基準価額が高いときには少なく買付 け、基準価額が安いときには多く買付けることが可能です。これにより平均購入単価を平準化する(ならす)ことができます。

時間分散投資は若い人におすすめの投資方法

「時間分散投資」は、特に若い人におすすめの投資法です。その理由は大きく2つあります。まず、投資経験が浅い傾向にある初心者でも、安心して挑戦できる投資法といえるからです。投資には想定外の損失やリスクが避けられません。その点、定額投資の「時間分散投資」なら、資金も少額からはじめられますし、値動きにも一喜一憂せずにすみます。

また、「時間分散投資」は売却したい局面でも有効といえます。ようやく育った商品を一度にまとめて現金化してしまうと、その後、さらに値上がりしたときに利益を失うこともあり得ます。売りのベスト・タイミングは買うときと同様にプロでもなかなかわからないものなので、売却する場面でも「時間分散投資」の手法を使い、一度ではなくタイミングをずらして少額ずつ解約・現金化していけば、リスクを低くすることができるのでしょう。

加えて、その最大の理由としてあげられるのが「時間」です。20年、30年という長期的視野で見ると、よほどリスクの高い商品でなければ、その多くは利益が出ている傾向といえます。つまり、長期であればあるほど、投資のリターンを受け取れる可能性が広がるのです。

20代で時間分散投資をはじめれば、20〜30代の転職や結婚、30〜40代の住宅購入、40〜50代のまとまった教育資金、さらには60代以降の老後資金など、ライフステージのさまざまな局面で、力強い味方となってくれるでしょう。

まずは時間分散投資からスタートして、投資を着実に学ぼう

少しでも投資を早くはじめることが資産形成にはとても大切ですから、投資の第一歩を気楽に抵抗なくはじめることのできる「時間分散投資」は有効な方法といえるでしょう。そして、「時間分散投資」で少しでも投資に関する考えや知識を深めることができれば、他のさまざまな投資方法を検討してもいいかもしれません。経済的および精神的に余裕を持った今後にするためにも、今から資産づくりを、時間をかけてコツコツとはじめてみてはいかがでしょうか。

(提供:フィデリティ投信