12月には、優待を得る権利が確定する「優待銘柄」が170あります。今日は、読者から質問の多い、株主優待銘柄の買いタイミングについて解説します。

株主優待制度とは

日本には、世界でも珍しい「株主優待」という制度があります。上場企業が株主に感謝して贈り物をする制度です。上場企業が株主にお中元やお歳暮を贈るようなものです。

株主には本来、配当金を支払うことで利益還元するのが筋です。ところが、日本の個人株主の一部に、お金(配当金)をもらう以上に「贈り物(株主優待)」を喜ぶ傾向があることから、個人株主を増やしたい上場企業は、積極的に優待を実施しています。

小口の個人投資家を優遇し、大口の機関投資家に不利な内容となっていることが多いので、機関投資家には、株主優待制度に反対しているところがあります。ただし、小口で投資する個人投資家にはありがたい制度ですので、積極的に活用したら良いと思います。配当金をもらった上にさらに優待がもらえると、お得感があります。

12月は優待銘柄が170と比較的多い

12月は、3月・9月に次いで優待の権利が確定する銘柄が多く、優待取りが話題になります。

「権利確定月」別の優待銘柄数:2018年11月27日現在

表1
(画像=楽天証券「株主優待検索」)

12月末に権利が確定する株主優待銘柄の、権利付き最終売買日は12月25日

12月25日(火)は「権利付き最終売買日」、26日(水)は「権利落ち日」となります。

2018年12月末(大納会=年内の最終売買日:28日)が権利確定日の場合

表2
(注:楽天証券が作成)

2018年12月25日(火)は、2018年12月末基準の配当金や株主優待を受け取るための「権利付き最終売買日」です。12月25日に株を買うと、3営業日後の12月28日(金)に株主名簿に掲載されます。そうすると、12月末の株主に与えられる配当金や株主優待を得る権利が確定します。

気をつけなければならないのは、12月26日(水)に買っても、12月末基準の配当金や株主優待を受け取る権利は得られないことです。12月26日を「権利落ち日」といいます。12月26日に株を買った場合、株主名簿に登載されるのは2019年1月4日(金)となります。12月末にはまだ株主名簿に登載されていませんので、12月末基準の配当や株主優待は得られません。

12月の優待銘柄170のうち、168銘柄は12月25日(火)が権利付き最終売買日です。ただし、気をつけなければならないことは、12月の優待銘柄のうち、2銘柄だけ、12月17日(月)が権利付き最終売買日となることです。その2銘柄は、Genky DrugStoresと東邦レマックです。

株主優待が魅力的な12月優待銘柄を、権利付き最終売買日に買うのは、有利か?

買ってすぐに12月の株主優待や配当金を受け取る権利が確定するので「お得」に感じる人が多いようです。そのため、人気の優待銘柄では、権利付き最終売買日に向けて、権利取りの買いが増えます。

ただし現実には、権利付き最終売買日の直前に買って「お得」とは限りません。かえって損なこともあります。権利付き最終売買日の買いが「お得」か「損」かは、直前の株価の動きによって決まります。

人気の優待銘柄は、権利付き最終売買日に向けて、権利取りの買いで大きく上昇することがあります。その場合、権利落ち日に株価が大きく下がる可能性が高くなります。配当金や株主優待を受ける権利が得られても、その価値以上に株価が大きく下がっては意味がありません。権利取り直前に株価が大きく上がっている銘柄の買いは見送るべきです。

人気の優待銘柄では、権利落ちの1カ月以上前に買う方が良いこともある

人気の優待銘柄や有名な好配当利回り株には、権利落ち日の1~2カ月前から、権利取りの買いが入ることもあります。人気の高い銘柄ほど、早めに権利取りの買いで株価が上昇し、権利落ち日には、株価が大きく下がります。

人気の優待銘柄や好配当利回り株は、権利取りの買いが入って株価が上がる前に投資した方が良いといえます。どれくらい前に買ったら良いでしょうか?銘柄ごとに、もっとも良い買いタイミングは異なるので、一概には言えませんが、12月末基準の人気の優待株は、11月後半~12月初旬までに買った方が良いことが多いといえます。

ただし、タイミングの判断はその年によって異なります。年末にかけて日経平均が上昇する年は、結果的に早く買った方が良かったということになります。年末にかけて日経平均が下がるならば、急いで買う必要がなかったということになります。

今年はどうなるでしょうか?私は、年内、日経平均は大きくは動かないと見ていますが、突発事項があれば急に大きく動くこともあり得ます。不透明材料が多いので、今年はあえて急いで買う必要はないかもしれません。米通商交渉の進展、米利上げの有無など見極めてから、12月後半に入ってから投資するのでも良いかもしれません。

株主優待ねらいの買いで、権利取り直前に株価が大きく上がりやすい銘柄、5つの特色

一般的に、以下5つの特色を備えた銘柄は、優待取りの買いで、権利取り直前に株価が大きく上がることがあります。

1) 株主優待や配当金を、年1回(12月)しか出さない。
2) 小型株。流動性が低い。
3) 優待獲得の効率が良い(小額投資で、多額の優待が得られる。10万円以下、あるいは5万円以下で投資できる銘柄が人気となりやすい)
4) 使いやすい(誰もが必要とする日用品中心に幅広い選択肢がある。食事券や食品の贈呈は人気が高い)
5) マネー誌などで、人気の優待注目銘柄として紹介されている

上記の複数項目に該当する銘柄に投資する場合は、権利つき最終売買日ではなく、その1~2カ月前に投資した方が良いと思います。

窪田 真之(くぼた まさゆき)
楽天証券経済研究所 チーフ・ストラテジスト
1984年、慶應義塾大学経済学部卒業。住友銀行、住銀バンカース投資顧問、大和住銀投信投資顧問を経て2014年より現職。日本株ファンドマネージャー歴25年、1000億円以上の大規模運用で好実績をあげたスペシャリスト。

(提供=トウシル

【7年連続なるか?】「年末高」を攻略せよ!注目株、アノマリー攻略法
【優待名人・桐谷広人】超カンタン![桐谷式]株主優待のはじめ方と銘柄セレクト術
【ムダな損を減らそう】投資で失敗しないために破ってはいけないルール
【じぶん年金】iDeCo(イデコ)って何?節税メリットと注意点を総ざらい
【なぜあなたは失敗するのか】投資で失敗しないためのルール。塩漬け株、行動心理学、お金が増えない人の共通点