・米中貿易協議進展にも関わらず市場は悲観的な見方である。
・公益事業の記録的高値はリスク回避のサインを出している。
・利回り、ドルの下落
12月の第二週目は、米国のすべての主要株価指数が下落し、終値は9ヵ月ぶりの安値水準となった。金曜日のダウ平均株価は10月のピーク時より10%以上下落した。
株式は先週末、売りが先行した。 S&P 500、 NASDAQ総合、 ラッセル 2000はダウ平均と共に下落した。金曜日のダウの下落に伴い、全ての主要株価指数は現在調整局面に入っている。
貿易協議の進展や堅調なホリデーシーズンの消費が報告されているにもかかわらず、世界経済の減速の中で企業が軟調な見通しを立てていることをうけて、悲観的な投資家たちは来年の課題に着目している。
ファンダメンタルズの好調、悲観的な投資家
米中貿易協議の進展によって次のような結果となった:中国による外資の参入の拡大、大豆を含む米農産物の輸入の再開、そして米国製自動車と自動車部品への報復関税の一時停止し7月の水準まで引き下げるという発表であった。テスラ(NASDAQ: TSLA)とBMW(OTC: BMWYY)は、追加関税一時停止をうけて、世界最大の自動車市場である中国において販売の低迷の回復をめざし、ただちに値下げに踏み切った。
しかし、先週末に発表された11月の 中国鉱工業生産に基づくと、中国経済は11月に市場予想以上に減速し、小売売上高も伸び悩み、自動車販売は1990年以来初めて年間売上高が減少した。
一方、米国経済指標は好調であった。 消費者信頼感と賃金上昇の堅調さ、そして失業率の低さに支えられて、 小売売上高は市場予想を上回る伸びとなった。
ヘルスケアセクター(-3.37%)とテクノロジーセクター(-2.45%)の下押し圧力によって、S&P500は金曜日に1.91%下落し、終値は3月29日ぶりの低水準であった。週次では、1.26%の下落で、2週間の合計では5.83%の下落であった。
テクニカル的には、同指数は逆ヘッド&ショルダーを形成している可能性がある。週末の不調な終値は弱気な姿勢を示しているが、下方ブレイクが2%未満だったことからベアトラップに注意すべきである。くわえて、価格は100週間移動平均線あたりを動いている。9月に最高値を記録して以来、S&P500はこれまでのところ11.25%下落している。
ダウは金曜日に約500ポイント下落し、2.2%安となった。同指数を押し下げているジョンソン・エンド・ジョンソン(NYSE: JNJ)の株価は10.04%下落して時価総額を380億ドル失った。これは2002年以来もっとも急激な下落であった。同社は1971年以来アスベストがベビーパウダー製品に含まれていることを把握していたとのロイターの報道を受けて、株価の下落が起こった。
しかし、テクニカル的には、株価はダブルボトムを形成しつつあり、株価が118ドルを下回る場合に完成するだろう。
先週、ダウは1.18%下落した。同株の下落は同指数の4月の最高記録から10.17%の急落もたらした。
NASDAQ総合は金曜日に2.26%下落した。しかし、週次では、同指数は他の主要株価指数を上回っていて、0.84%の下落であった。これは、投資家心理の急変を反映している。同指数は二月の最高値以来14.8%下落した。
ラッセル2000は米指数の中ではまだ良い方で、金曜日に1.72%だけ下落した。貿易問題の進展の報道を考えると、ラッセルのような小型株が好調なのは理にかなわないことである。輸出は国内企業を犠牲にして多国籍企業が利益を上げるので、小型株は輸出が好調になると下落する傾向があるためである。
週次では同指数は2.57%下落しており最大の下落であった。同指数は最高値を記録した8月以来19%下落しており、弱気相場入りと言われる水準からまだ1%離れている。
金曜日の下落の直前にも、投資家の悲観的な姿勢は表面化していた。それは公益事業セクターは木曜日に最高値を記録していたことだ。これは、市場がリスク資産を辟易し、株価上昇に自信を失っていることを示す。
テクニカル的には、公益事業セレクトセクターSPDRファンドは上昇チャネルラインの上で取引されている。価格はチャネルの底に押し戻される可能性もあるが、未だ上昇トレンドにある。
投資家が株式をから国債へ資本を移し、金曜日の米国10年債の利回りは下落している。しかし、週次では上昇しており、2016年中旬以来の上昇トレンドラインと2015年中旬以来のサポートラインを裏付けた。
サポートラインを突破すれば市場への悲観的な姿勢を示すことになるだろう。利回りが2.8を下回る場合、弱気姿勢が強まるだろう。
金曜日にドルは下落したが、週次では上昇した。テクニカル的には、上昇ウェッジを形成しており、これは弱気である証拠である。RSI(相対力指数)はダブルトップを形成しており、ネックラインは51の水準である。
ドルの値動きを反映して、金価格は200日移動平均線を上回っており、今後の金価格を引き上げる上昇チャネルの範囲内で取引されている。
金曜日の{{8849|原油}}価格は下落した。原油は三角持ち合いの中で取引されており、下抜けは、下降トレンドの再開を示すだろう。
テリーザ・メイ英首相は先週の信任投票で勝利を収めた。しかし、メイ首相はEU首脳会議を欠席した。また、エマニュエル・マクロン仏大統領はにとって先週は最悪の週だった。彼は燃料税の増税や年金給付への課税を撤回し、4週間にも及ぶデモを終息させるために最低賃金を100ユーロ引き上げることを発表した。
最低賃金の引き上げによって100億ユーロがフランスの財政赤字へ増加加わるだろう。それによってEUの定めるGDP比3%の財政規律を上回るだろう。この動きはEUにとって最悪のタイミングではなかった。なぜなら、イタリアの財政赤字を2%以下にへらすために懲戒措置を執行した後だからだ。
欧州中央銀行(ECB)は経済成長や地政学リスクへの懸念を表した。先週の記者会見でECBは、成長見通しを引き下げた。(提供:Investing.comより)
著者:ピンカス コーエン