株式市場が下落に転じると、「下落相場でもリターンを狙う」ための方法に注目が集まりがちです。しかし、中長期投資を前提とした投資信託の場合、相場の下落局面で強引にリターンを狙いにいくよりも、価格変動リスクを抑えた運用手法や、下げ幅を抑えるための「保険」をかけた銘柄を取り入れたほうが、最終的にリターンを積み上げることができます。

投資信託,トウシル
(画像=トウシル)

ここでは、足元の不安定な相場環境に耐え得る運用スキームを用いていて、なおかつ、中長期にわたって良好な運用実績をあげている投資信託を3タイプ、計4銘柄をご紹介します。

【海外債券型】

安定した利息収入が見込める債券は、一般的に株式と反対方向の値動きを示すとされています。金利がマイナス圏に沈む国内債券と比べ、金利の高い海外債券のほうが投資妙味はありますが、外貨建ての債券には為替リスクがともないます。

そこで、投資信託の運用では、為替ヘッジ取引を行い、円高進行による為替差損の影響を低減させます。為替ヘッジ取引を行うと、各通貨間の金利差相当分のヘッジコストが発生することから、こうしたコストを控除した後の期待収益がより重要になります。単に為替変動によるマイナスの影響を回避するだけでなく、コストを控除後でも十分な収益が期待できる債券を組み合わせて運用できているかがポイントです。

ひとくふう世界国債ファンド(為替ヘッジあり)

【国内株式(ロング・ショート運用)】

株式のロング・ショート運用とは、ヘッジファンドや年金基金など、いわゆるプロの世界で用いられる運用手法の一種です。具体的には、割安に放置されている銘柄を買い、過大評価されている(割高な)銘柄を売るという、2つのポジションを組み合わせて、プラスのリターンを追求します。

相場全体が大きく変動しても、いずれかのポジションが損失を補うため、相場全体の動きに大きく左右されることなく、リターンをあげられるという点がポイントです。ただし、割高・割安の判断を誤ると、両方のポジションで損失が発生する可能性もあることから、一般的なアクティブファンドと同様、銘柄選定力が重要という点に変わりはありません。

スパークス・日本株・ロング・ショート・ファンド

【バランス型(リスクコントロール運用)】

株式、債券、リートなど、複数資産を組み合わせて運用するバランス型ファンドの中でも、投資環境の変化を迅速に察知し、為替リスクも含めたファンド全体のリスク管理を図るタイプは、基準価額の動きが比較的穏やかです。

こうしたタイプは、「リスクコントロール型」とも呼ばれ、あらかじめ目標となるリスク水準を定めて運用を行う点が特徴です。単体で積極的なリターンは追求できませんが、過度なリスクを取っていない分、相場急変時にポートフォリオの「クッション」として機能してくれるのです。少し資産運用をお休みしたいときや、退職金などのまとまった資金を減らすことなく運用したいという場合にもおすすめです。

投資のソムリエ
AMC/ステート・ストリート・リスクバジェット型バランス・オープン(ステイブル)

篠田 尚子(しのだ しょうこ)
楽天証券経済研究所 ファンドアナリスト
慶應義塾大学法学部卒業、早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。国内銀行で資産運用関連業務に従事後、ロイター傘下の投信評価機関リッパーで市場分析担当、ファンドアナリストとして活躍。2013年より現職。

(提供=トウシル

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