ビジネス書評家・土井英司氏が選んだ14冊

本,土井英司
(画像=THE21オンライン)

年間約8万冊発刊される書籍。あまりにも膨大な本の中から、ビジネスパーソンが今読んでおくべき本を、経営コンサルタントの神田昌典氏とビジネス書評家の土井英司氏に選んでいただいた。

土井氏お勧め「教養を身につける」本

知らないと恥ずかしい世界の常識を学べる本から、固定観念として植えつけられている「世間の常識」を疑う本まで、知識を身につけ、教養を磨ける本を紹介する。

『呪われた部分 有用性の限界』

ジョルジュ・バタイユ著 中山 元訳
ちくま学芸文庫/1,728円(税込み)

世の中の「有用性」を疑え!

20世紀を代表する思想家・バタイユが「我々の社会がいかに有用性に支配されているか」を解き明かす。

「自民党・杉田議員の『LGBTは生産性がない』という発言は、まさに有用性に囚われたもの。浪費や無駄を排除して有用性だけを追求し、資本主義による豊かさを得ても、人間は幸せになれない。なぜなら、その先にある死の恐怖を克服できないからです。一方、古代アステカ文明では、神の生贄となって命を捧げれば幸せになれると考えられていた。つまり有用性から解放されれば、死の恐怖さえも克服できるわけです。有用性には限界があり、人間性とは浪費や無駄の中にこそ宿るものである。この本はそのことを教えてくれます」(土井氏)

『突破するデザイン』

ロベルト・ベルガンティ著 八重樫文監訳 安西洋之監訳・解説
日経BP社/2,160円(税込み)

「意味のイノベーション」とは?

これからの時代にヒット商品やサービスを生み出すための新たな開発手法「意味のイノベーション」を、AppleやIKEAなど世界の事例とともに解説する。

「世の中が安定しているときの人々の課題は『どうすれば結婚できるか』『どうすればいい学校に入れるか』といった定型的なものですが、今のように不安定な時代は、『そもそもなぜ結婚するのか』『そもそもなぜ学校へ行くのか』という根源的な意味づけが求められる。ビジネスでも、『そもそもなぜこれを使うのか』の意味を顧客に示さないと、自社の商品やサービスを採用してもらえない。この本を読めば、“意味のイノベーション=新たな意味を作り出すこと”の重要性と手法が理解できます」(土井氏)

『大人の語彙力ノート』

齋藤 孝著
SBクリエイティブ/1,404円(税込み)

語彙力こそが教養である

「わかりません」は「不勉強で申し訳ありません」、「忘れました」は「失念しました」と言い換えるだけで、会話やメールの相手が受ける印象はガラリと変わる。デキる大人だと思わせる語彙を実践的に解説した1冊。

「著者の齋藤孝さんは『語彙力こそが教養である』と言っていますが、私も同感です。私は仕事柄、世界のエリートと接する機会がありますが、優秀な人と一緒に仕事をしたいなら語彙力と教養を身につけるしかない。言葉には人を近づける機能と遠ざける機能があり、人間は自分と同じ言葉を話す人を仲間と見なします。よって国内外のトップ層と仲良くなりたいなら、その場にふさわしい教養を感じさせる語彙を使いこなすことが必要です」(土井氏)

『1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365』

デイヴィッド・S・キダー ノア・D・オッペンハイム共著 小林朋則訳
文響社/2,570円(税込み)

西洋人の基本教養を学べる

「歴史・文学・芸術・科学・音楽・哲学・宗教」の7分野から、知っておくべき世界の教養を1ページにつき1項目ずつコンパクトにまとめた解説書。

「例えば、欧米人にとっては『ユリシーズ』を読むことが教養ある人間の必須科目ですが、これを読破した日本人がどれだけいるか。宗教についても日本人は不勉強ですが、世界において宗教に無知であることは『自分は無教養だ』と言っているのと同じ。世界(特に西洋人)の教養についてこれほど幅広く網羅した本は珍しい。日本人の弱点を克服するのにとても役立ちます」(土井氏)