- 決算や業績見通しによって株式の追い風となる可能性。IMFの世界経済低迷見通しの懸念を相殺
- ダウ、ナスダック、ラッセルは5週連続で上昇
- 原油は横ばい、様々な懸念が取り巻く
25日のS&P 500、ダウ、ナスダックなどの米主要株価指数の終値はプラス圏となった。これは、トランプ米大統領が暫定予算案に署名し、政府閉鎖の一時解除に合意したことによって押し上げられている。また、米国企業の好決算によって市場が活気づいている。前四半期の悪い業績見通しの後で、今季の良い業績見通しは上値が重い株価を後押ししている。
好業績見通しが株価を上昇させる
疑いもなく先週金曜日において一番の好材料は、トランプ米大統領が政府閉鎖の解除に合意したことであろう。これは、政府職員が無給を強いられてた5週間にわたる政治的内紛への大きな進展であった。
長期的な市場の要因は企業の業績見通しにあると見ている。その代表例は、P&G(NYSE:PG)である。先週23日に発表された同社の2019年第2四半期の業績の発表は予想を上回り、通年売上高を上方修正した結果、同株価は4.87%上昇した。
中国のGDPや、ユーロ圏のPMIが低下していることや、国際通貨基金(IMF)が、貿易戦争を主な要因として今後2年間の世界経済成長の見通しを下方修正した後で、このP&Gの決算は大きな意味を持つだろう。
リスクオン相場がもどってきた
好決算がリスクオンの流れを生み、先週金曜日の米国株式市場は2日連続の続伸となった。また、ドルも下落していた。
先週のS&P 500は、前日比0.85%高となり、週次では0.57%高となった。今週ワシントンで行われる通商協議への楽観視から 素材セクター (+1.9%)はアウトパフォームしており、資本財・サービス (+1.2%)も上昇していた。
これらの楽観的な観点に加えて、FRBはバランスシート縮小の早期終了を決める調整に入り、金融引き締めの手を休めようとしている。
しかし、金曜日のリスクオンの流れの中で、量的緩和の見通しが強まることは金融株 (+0.81%)の上昇が限定的になり、ディフェンシブセクターの公益事業 (-1.37%)や、 生活必需品 (-0.4 percent)は不調であった。
SPXは週次では0.22%の下落で、2019年に入り初めての週次マイナスとなり、4週連続の続伸で止まった。不動産セクター(+1.44%)もアウトパフォームしてしていた。
FRBのハト派色が鮮明になったことが、不動産投資に対する見通しを変え、クリスマスから続く上昇を後押ししている。
また エネルギー株は、 原油価格が乱高下する中で-1.43%となっている。
S&P 500のテクニカル的には、前週同様に抵抗ライン(上図:緑色の丸で囲った水準)より下で終値を迎えている。この水準は、9月の最高値からの下降トレンドラインと、10月以降の安値を結んだラインによって形成される。さらに、12月の下落によって50日線、100日線、200日線ですべてにおいてデットクロスを形成し、上昇の抵抗となっている。
先週金曜日にダウは0.75%上昇し、週次では0.09%高とかろうじて5週続伸となった。テクニカル的には、金曜日は、前日比1.24%まで上昇したが、その後の下落によって上髭をつける形となった。
先週金曜日の ナスダック総合指数は1.29%上昇し、 週次では0.11%高となり5週続伸である。
米中の通商問題の良い見通しが高まっている中で、ラッセル 2000は1.3%高でアウトパフォームしており奇妙である。このような時ラッセルは下落するのが通常である。貿易協議で進展があれば、小型株のラッセルから、大型株へ資産の流入が考えられるからである。おそらく、市場は米中関係に大きな改善はないとみているのだろう。
金曜日の国債利回りは、リスク選考度の回復によって上昇していた。しかし、週次で見るとマイナスであった。重要なのは、チャート上で週次で国債利回りが下落した場所である。
2016年7月以来の上昇トレンドライン(上図:右肩上がりの黒線)がレジスタンスラインになっているようだ。一方で、2016年後半の高値と2017年前半の高値の水準(上図:平行線)が現在の米国債利回りのサポートラインとなっている。
FRBによる利上げや、バランスシート縮小、米中間の貿易戦争、中国を始めとする世界経済低迷、ブレクジット、トランプ米大統領の動向、ドルや原油価格などの錯綜する世界経済のファンダメンタルズによって国債のこの持ち合いは形成されている。
先週金曜日のドルは下落し、海外投資家はリスク資産に戻ってきている。テクニカル的には、ネックラインを下回り今後の下落が予想される。
原油価格はボラティリティーが高い週であったが、終値はほぼ横ばいであった。原油価格は0.2%安となり、続伸は3週で終わった。
国際通貨基金(IMF)の世界経済低迷の見通しによって、原油は下落が招かれた。また、アメリカ石油協会(API)の週間原油在庫の18日の週の655万バレル増加も原油価格を押し下げた。また一方で原油価格を支えているのは、OPECプラスの減産合意や、リビヤやベネズエラの政治的混乱、米国の石油採掘リグの減少、イランへの制裁などである。
現在の課題は2月以来の長期上昇トレンドラインを11月に下回ったが、その水準まで回復できるかどうかである。もし、原油価格が前回のピークである54.55ドルを超えることに失敗し、42ドル以下になるようであれば、長期的に下降トレンドになると考えられる。(提供:Investing.comより)
著者:ピンカス コーエン