〔株〕Mellow代表取締役 森口拓也
中で調理ができるように改装したクルマ「フードトラック」でランチの移動販売をするシェフたちが増えている。彼らにとって、オフィスビル街は営業場所として魅力的だが、「スペースを貸してほしい」という交渉をオフィスビルのオーナーと個人としてするのは難しい。そこで利用が広がっているのが、フードトラックと営業スペースをマッチングする『TLUNCH(トランチ)』というプラットフォームだ。2016年に創業した〔株〕Mellowが運営している。同社創業者である柏谷泰行氏から、今年11月20日に代表取締役を引き継いだ森口拓也氏に、TLUNCHの現状と今後について聞いた。
フードトラック事業者の最初の壁は「営業スペース」
――まず、TLUNCHとはどういうものか、お教えください。
森口 フードトラックというと昔の屋台のイメージがあるかもしれませんが、今はこだわりと誇りを持って美味しい料理を提供しているシェフがたくさんいます。我々は、そうした方たちと営業スペースをマッチングし、さらに集客にもコミットしています。そのためのプラットフォームがTLUNCHです。
フードトラック事業者は個人事業主なので、一人ではどうしても信用力が低く、大きなオフィスビルのオーナー(不動産会社)のところに行って「営業するスペースを貸してください」と言っても、なかなかオーナー側の社内稟議が通りません。ですから、我々が彼らを束ね、実績も積み上げて信用力を高めることには、大きな意義があると感じています。
また、営業のためには、消防署の許可が必要だったり、保健所の許可が必要だったりと、細かいレギュレーションがあるので、ただその場所に行けば営業できるというわけではありません。そこで、我々が管理運営者となって、法的に守らなければならないことをきちんと管理しています。これも、フードトラック事業者の信用力を高める要素の一つになっています。
我々はチェーン店を展開したいわけではなく、個々のシェフがこだわって作っている料理を世の中に広く提供したいと考えているので、メニューについてレギュレーションを設けることはしていません。
――収益はどのように得ているのですか?
森口 フードトラックの売上げの15%を我々がいただいて、5%を我々から営業スペースのオーナーにお支払いしています。ですから、我々の手元に最終的に残るのは、差し引き10%です。
――TLUNCHを利用しているフードトラックによるランチ販売額は、今年3月時点では月5,700万円でした。現在はどうでしょうか?
森口 7月には6,100万円になり、今は7,000万円強にまで伸びています。
また、ランチ販売に加えて、土日祝日などに行なわれるイベントへの出店もしています。例えば豊洲市場が開いたときには、市場の仲卸の方々とフードトラックのシェフの方々、それに我々がコラボレーションをして、オリジナルのメニューを提供しました。
他にも、音楽フェスのランチブースの支援など、幅広く手がけています。
――TLUNCHを利用しているフードトラックの数は?
森口 10月時点で449店(台)です。来年3月には500店を見込んでいます。
10数年前までは路上でフードトラックの営業をされている方が多かったのですが、道路交通法の取り締まりが厳しくなって、私有地を借りて営業しなくてはならなくなりました。フードトラックの事業者が最初にぶつかる壁は営業スペースの問題になっていますから、毎月10~15件のお問い合わせをいただけています。
お問い合わせはウェブ経由ですが、必ずリアルな場での説明会を開いて、一人ひとりとコミュニケーションをしっかりととり、信頼関係を築ける方なのかを確認しています。
――営業スペース数は、今年3月時点では、1都2県(神奈川県・埼玉県)で68カ所でした。現在はどうでしょうか?
森口 11月6日時点で118カ所になりました。エリアは同じく1都2県です。オフィスビルの下の空きスペースが多く、その他、大学の敷地内などにもあります。
――創業からしばらくは営業スペースを貸してくれる不動産オーナーを見つけるのに苦労したということですが、今はどうですか?
森口 最初の1年間は門前払いのような状態が続いていたのですが、信用力を高める努力を続け、理解を示してくれる担当者に巡り合ったりして、徐々に実績を積み上げてきた結果、大手不動産会社のほとんどと契約関係がある状態になりました。今では、不動産会社のほうから問い合わせをいただくケースも増えています。
――今後、エリアの拡大は検討されている?
森口 1都2県でもまだまだ伸びると考えていますから、引き続き注力しつつ、大阪や福岡などの地方都市にも拡大していきたいと考えています。
大阪や福岡では、人口密度の高さやオフィスビル街があることから、ある程度、東京と同じ仕組みで展開できると考えて、調査を進めているところです。
ただ、ランチを販売しているフードトラックの数が、大阪でも福岡でも少ないので、自社でフードトラックを作るか、現地の飲食店と提携して作るか、検討しています。