2019年の株式相場は、昨年末にかけて波乱になったことを考えると、今はずいぶん落ち着きを取り戻したように見受けられます。しかし、米中覇権争いは長期化する様相を強めている上、世界的に景気・企業業績はピークアウトする可能性が強まっており、再び株価が波乱となっても不思議ではないと考えられます。

そうした中、投資家が年初から注目を続け、現在も人気が継続しているとみられる投資テーマがあります。それが「5G(第5世代移動通信システム)」です。1/11(金)の「日本株投資戦略」では、「投資家が注目する3大テーマ株」として第1位は「5G」、第2位は「AI(人工知能)」、第3位は「キャッシュレス決済」であることをご紹介しましたが、2/18(金)現在もこの順位は変わっていません。したがって、「5G」は投資家がもっとも注目するテーマであり続けていることになります。

加えて「5G」関連銘柄は業績が好調な銘柄が目立っています。多くの企業が業績悪化に苦しむ中、2018年10~12月決算でも「5G」関連企業の業績好調が目立ちました。それを反映し、関連銘柄の中には株価上昇が加速する銘柄もみられます。そこで今回の「日本株投資戦略」では、改めて「5G」とその関連銘柄について考察してみたいと思います。

投資家にもっとも人気の「5G」とは?

日本株投資戦略
(画像=PIXTA)

1/11(金)の「日本株投資戦略」でご紹介した通り、弊社WEBサイトの中にある「テーマキラー!」は手前味噌ではありますが、投資家の方にとって強い武器になり得るツールであると考えられます。「5G」関連銘柄はそこでアクセス数がもっとも多く、現在投資家がその分強く関心を抱いている投資テーマと考えられます。ここでは「5G」について簡単に復習しておきたいと思います。

「5G」は「5th Generation」の略語で、「第5世代移動通信システム」のことを指しています。 移動体通信はおよそ10年ごとに新しいシステムが誕生していますが、5Gは2010年頃から普及し始めた4G「LTE」の後継として研究開発が始まりました。5Gの通信速度は毎秒10ギガ(ギガは10億)ビット超とLTEの1,000倍の容量を持ち、無線区間の低遅延化や、センサーネットワークなどにおける多数同時接続が可能となります。 このうち、低遅延化や多数同時接続という特徴は自動運転やIoTを実現する上で必須の技術であり、この点から5Gには、単なる「次世代通信規格」という投資テーマの枠を超えた注目が集まっています。

移動通信のシステムは、音声主体の「1G」、パケット通信に対応した「2G」、世界共通の方式となった「3G」を経て、現在ではLTE-Advanced等の「4G」まで実用化されています。これに続く次世代のネットワークとして注目されているのが「5G」、すなわち第5世代移動通信システムです。

「5G」においては、「多数同時接続」「超低遅延」が実現されることになります。「多数同時接続」は、基地局1台から同時に接続できる端末を従来に比べて飛躍的に増やすことです。これまで自宅ではPCやスマホなど数台の接続であったものが、100程度の機器やセンサーと同時に接続できるようになると言われています。「超低遅延」は、通信ネットワークにおける遅延を極めて小さく抑えられることです。自動運転のように高い安全性が求められるものに必要な機能となります。

「4G」までは基本的に人と人とのコミュニケーションを行うためのツールとして発展してきたのに対し、「5G」はあらゆるモノ・人自動車などが繋がる「IoT」、「自動運転」時代のコミュニケーションツールとしての役割を果たすと言えるでしょう。「IoT」や「自動運転」は革新的な技術であり、それ自体重要な投資テーマですが、「5G」なくして、それらを実現することはできないと考えられます。従来、この「5G」は中国の通信事業者や通信機器メーカーが主導して展開されるはずでした。しかし、ご存知の通り、米国と中国の覇権争いの中で、米国は主導権を取り戻すべく、中国を排除しようとしています。その結果、この投資テーマに関連する銘柄についても、収益変動等、影響が拡大してくるケースがありそうです。

表1はこうした「5G」の関連銘柄を取り上げたものです。「テーマキラー!」に関連銘柄として掲載された銘柄、および弊社WEBサイトの銘柄検索ウィンドウに「5G」と入力した時に出力される銘柄を「母集団」としました。そこから四半期累計営業増益率(12月決算銘柄は前期営業増益率)が10%超の東証1部銘柄に絞り込み、増益率の高い順に並べました。ただ、設備投資を実行する側の携帯キャリア等は除きました。

「5G」関連銘柄
(画像=SBI証券)

表1:投資家にもっとも人気の「5G」関連銘柄
コード / 銘柄 / 株価(2/15) / Q・前期営業増益率 / 今期予想営業増益率 / 投資ポイント
<6857> / アドバンテスト / 2,689 / 411.7 / 157.3 / 5G関連技術で電送化を支える
<6754> / アンリツ / 2,238 / 189.4 / 123.9 / 5G計測器に世界中から引き合い
<6981> / 村田製作所 / 17,265 / 54.6 / 68.4 / 多くの5G関連部品でトップ
<6976> / 太陽誘電 / 2,402 / 68.1 / 48.4 / EMI除去フィルターで上位
<7518> / ネットワンシステムズ / 2,581 / 101.0 / 45.6 / ネットワーク・インテグレーター大手。クラウド向けが好調。
<1721> / コムシスホールディングス / 2,782 / 17.4 / 12.0 / 通信工事トップ。インフラに加えICTソリューションも提供
<1417> / ミライト・ホールディングス / 1,647 / 13.9 / 10.7 / 通信工事大手。経営統合で競争力を強化
<9702> / アイ・エス・ビー / 2,026 / 45.6 / 9.4 / 携帯電話基地局向けのソフト開発
<9474> / ゼンリン / 3,025 / 116.4 / 6.6 / KDDI、富士通と「5G」活用も視野に入れたダイナミックマップ
<4719> / アルファシステムズ / 2,627 / 16.1 / 2.2 / 5G向け基地局用ソフト等の開発が始まる見込み
<6701> / 日本電気 / 3,740 / 16.9 / -21.7 / サムスンと5G無線基地局を共同開発。米中問題が追い風に?
<6702> / 富士通 / 7,731 / 72.7 / -23.3 / エリクソンと5G無線基地局を共同開発。米中問題が追い風に?

※会社公表データ、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。「Q・前期営業増益率」は、原則として直近四半期(累計)営業増益率を示していますが、12月決算銘柄に限り、前期(通期)の営業増益率(%)です。また、「今期予想営業増益率」は会社予想の営業増益率(%)です。

「5G」関連銘柄の投資ポイント

「5G」市場拡大の鍵を握るのは、電波を中継する基地局であるとみられます。日本ではNEC(6701)や富士通(6702)などが大手で、ここにきてこれらの会社にビジネスチャンスが拡大しています。

図1:日本電気(6701)・日足

日本電気(6701)・日足

近年、この基地局市場で勢力を伸ばし、「5G」市場でも主役とみられていたのが華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)などの中国企業でしたが、ここにきて、先進主要国では中国企業を排除しようとする動きが広がっています。このため、上記の伝統的な日本企業には追い風が強まっているとみられます。ただ、独力では対応力に限界があり、サムスン電子やエリクソンなど海外企業と協調する傾向が強まっています。

なお、各種電子機器と基地局の間でやり取りする電波は、これまでの「4G」と比べ、周波数が高くなるとみられます。このため、それに対応した「高周波」の「電子部品」市場が伸長すると考えられます。これらの市場の多くでトップシェアを握る村田製作所(6981)や、同様に大手の太陽誘電(6976)の活躍も期待されます。

このうち、村田製作所は2020年のサービス開始に向けた基地局向用の注文を取り込むべく、モジュール(複合部品)を開発し展開する方針です。さらに、自動車向けもいまだ「品不足」のようです。

また、「5G」の基地局向けにソフトウェアの開発需要も高まりそうです。アルファシステムズ(4719)やアイ・エス・ビー(9702)のビジネスチャンスも拡大しそうです。さらに、「5G」に対応したネットワーク構築需要も伸びると予想され、ネットワンシステムズ(7518)などのネットワークインテグレーターにもビジネスチャンスが訪れると予想されます。

アドバンテスト(6857)は半導体メモリのテスターで強い競争力を有している会社です。スマホやデータセンター向け半導体市場の減速を背景に、製造装置市場の業績も懸念され、当社株も昨年12/4(火)以降下落してきました。しかし、1/30(水)の決算発表で、通期見通しの上方修正を発表し、株価は上昇基調に転じました。2019年には5G対応機器で使われる半導体向けに需要が立ち上がるとみられています。

図2:アドバンテスト(6857)・日足

アドバンテスト(6857)・日足

さらにアンリツ(6754)は「5G」市場に関連する製品を開発するメーカーに各種計測器を提供しており、世界で引き合いが増加しているようです。当面は業績拡大基調が期待されています。

図3:アンリツ(6857)・日足

アンリツ(6857)・日足
(画像=図1~図3は弊社チャートツールを用いてSBI証券が作成)

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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