2018年7月に「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」が成立し、同年7月13日に公布されました。民法のうち相続法に関する改正が行われたのですが、その中の一つで、「特別の寄与」についての改定が行われます。今回はこの内容がどのようなものなのかをお伝えしていきます。
多くの家庭で起こっている介護の問題
日本は少子高齢化とともに、要介護(要支援)認定者の増加も大きな問題となっています。2016年度の要介護(要支援)認定者は632万人で、前年度比で12万人の増加です。公的介護保険制度がスタートした2000年度の要介護認定者は256万人ですので16年で376万人の増加(約2.46倍)となっています。また、介護サービスの受給者は1ヵ月平均で560万人(2016年度)です。そのうち391万人が居宅型サービス、77万人が地域密着型サービス、92万人が施設サービスを利用しています。
自宅でサービスを受けている人が約7割を占めているということは、それだけその家族が介護に携わっているといえるでしょう。息子や娘が親の介護をしたり兄弟同士が介護したり、最近では妻が夫の、夫が妻の介護をしたりするなど「老老介護」も増えていると言われています。また、長男である夫が亡くなり、その妻が以前から同居している夫の親(義理の親)を介護するというケースも少なくありません。
現行の制度では長男の嫁は報われない?
このように、介護を受けている人が亡くなったとき介護をしていた人が相続人だった場合はどうなるでしょう。その介護などにより亡くなった被相続人の財産の維持または増加について「特別の寄与をした」と認められれば、遺産分割の際にその貢献分を「寄与分」として考慮して、具体的に相続分の上乗せを受けることができます。これが「寄与分制度」です。
ただし、寄与分が考慮されるのはあくまでも「相続人」になります。先のケースの「妻が義理の親を介護していた」場合、妻は相続人ではありませんので相続分はもちろん、寄与分もありません。夫に兄弟がいる場合には、その兄弟が義理の親の財産を相続することになり、現行ではいわゆる「長男の嫁」が報われることはないということです。
改正後のメリット・注意点
このように現行では、他人の介護に尽くしていたとしても相続発生後には金銭的な見返りは一切ないことになります。そこで、改正後はこのようなケースの場合にも介護をしていた人を「特別寄与者」として、その寄与に応じた金銭「特別寄与料」を請求できることとしました。具体的には「被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族」が、特別寄与者として特別寄与料を相続人に請求することができます。
民法では、「親族」の範囲を「6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族」としていますので、先の「長男の嫁」も親族に含まれます。また、親族には「相続放棄をした人」「欠格事由に該当した人」「排除された人」は含まれません。なお、相続人についても本来の寄与分を主張できるため親族には含まれません。このような親族が「無償で療養看護」の提供をしていた場合で、「被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした」と認められた場合に「特別寄与者」となります。
特別寄与者は相続人に対して「特別寄与料」を請求できますが、まずは相続人との協議によって特別寄与料が決められます。ただし、協議がまとまらない場合には家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することが可能です。「相続の開始および相続人を知ったときから6ヵ月を経過したとき、又は相続開始の時から1年を経過したとき」が請求期限となりますので、請求を行う場合には早めの手続きが必要となりそうです。
このように複数の条件を満たす必要がありますが、現行では認められていない「親族」の寄与分が改正後は認められるようになります。改正後は「長男の嫁」も、義理の親への介護がのちに金銭という形で評価されるようになり、報われるケースが増えるかもしれません。(提供:相続MEMO)
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